アリババ「DingTalk」、「中国版Notion」のベンチャー企業を買収 ビジネスコラボツール事業強化へ  

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ビジネス向けコラボレーションツールを提供するアリババ傘下の「釘釘(DingTalk)」が、「中国版Notion」とも言われるビジネスコラボレーションアプリを手掛ける「我来(Wolai)」の買収を完了した。買収後は、アリババがWolaiの100%株式を保有し、開発チームも正式にDingTalkに加わることになる。

36KrがDingTalkに確認したところ、Wolaiのメンバーは既にDingTalkに加わっており、ドキュメント共有ツールの開発や個人向けドキュメントのプロダクト設計を担当するとのことだった。

アリババは今年、スマート化にも重点的に力を入れていくようだ。メディアの報道によると、同社の先端技術研究機関「阿里達摩院(Alibaba DAMO Academy)」は「ChatGPT」に似た対話型AIの開発に取り組んでおり、現在は内部テストの段階にあるという。大規模言語モデルの技術をDingTalkに取り入れていくものと見られる。

また、Wolaiがスマート化プロダクトの研究開発を担当するようになることから、DingTalkが今後のプロダクト開発の重点としてスマート化を据えていく可能性が見て取れる。DingTalkは2022年12月の製品発表会でも、今後は個人版をリリースし、よりライトに使えるプロダクトを提供すると明らかにしており、WolaiのプロダクトがDingTalkの個人ユーザーや中小企業向けユーザーに対し、その役割を担っていくと見られる。

Wolaiは2020年6月にリリースされた。ブロック(ページに追加するコンテンツの一つ一つ)を基礎としたメモツールのかたちをとり、ユーザーは空白の画面上にテキスト、図表、画像、音声、動画など、載せたいコンテンツを自由に組み合わせてレイアウトできる。共同作業、情報やタスクの共有、データの保存を集約し、企業や個人がオリジナルのデータベースやワークフローを構築できるようになっている。

「Wolai」のインターフェース

ここ数年、こうしたオールインワンのメモツールがビジネスコラボレーションツールでは大きなトレンドとなっている。そのベンチマークとされるのが2012年に設立された「Notion」で、現在同社の評価額は103億ドル(約1兆3700億円)に達するという。中国国内でも20年ごろからNotionに追随する企業がいくつも登場した。Wolaiはそうした企業のひとつで、20年に策源創投(Ceyuan Ventures)から数千万元(数億円)を調達している。

コロナ禍がもたらしたユーザー増加は一段落したが、テンセントの「騰訊文檔(テンセントドキュメント)」や「企業微信(WeChat Work)」、バイトダンス(字節跳動)の「飛書(Feishu、海外版「Lark」)」などビジネスコラボレーションツールをめぐる大手企業によるし烈な争いは続き、競争の重心は獲得ユーザー数から売り上げの中身へと次第にシフトしつつある。DingTalkはWolaiを買収したことで厳しさを増す戦いを勝ち抜くことができるかもしれない。

アリババは2020年にDingTalkをクラウド事業の一部として統合する戦略を打ち出し、DingTalkをアリババクラウド(阿里雲)に編入した。以降、DingTalkは戦略を転換、典型的な例として、それまで主なビジネス指標としてきたDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)に代わり、有料の企業ユーザーを新たな指標として、これを増やすことを目指している。

売り上げを増やすにはプロダクトの機能や体験を重視しないわけにいかない。ビジネスコラボレーションツールはインスタント・メッセンジャー(IM)、ドキュメント、メール、会議などの機能を持つが、アリババ・クラウドと統合後、DingTalkはクラウド上の「Microsoft Office」を作り上げることを目指すようになり、Wolai買収で機能やユーザー体験を補強することになる。22年3月にはビデオ会議のPaaS「拍楽雲(pano)」を買収しており、音声・動画コミュニケーションにおける技術力も強化していく。

Notionの類似プロダクトのうち、中国ではWolaiが製品力と体験いずれの面でも群を抜いている。DingTalkは完成された企業やプロダクトをそのまま手に入れられることになり、時間を大幅に節約できる効率的な方法だと多くの関係者は捉えている。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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