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270社超、帳簿価額の総額は290億元(約4550億円)。
2019年第1四半期(1~3月)の決算報告で、シャオミ(小米科技)は上場後初めて出資関連のデータを明らかにした。同社が出資した企業の数は一年前の目論見書よりも60社以上増加。これらの企業の中で、大手動画配信サービス「愛奇芸(iQIYI)」、動画共有サイトの「ビリビリ動画(bilibili)」など独立性の強い企業を除いた大多数の企業は「シャオミエコシステム(Mi Ecosystem)」に属しているといえるだろう。その中にはすでに上場した「華米科技(huami)」、「雲米(Viomi)」や上場準備中の「石頭科技(roborock)」、「九号機器人(Segway-Ninebot)」などが含まれる。
シャオミ自身の戦略にも大きな変化があった。「IoT(モノのインターネット)」を携帯電話と共に同社の戦略「2大成長エンジン」の一つとし、全力を挙げて大型家電に参入したのだ。これにより同社のエコシステムの研究はさらに重要さを増すだろう。
1.「Mi Ecosystem」の構築
エコシステム内企業への出資は、シャオミが過去9年間で行ったなかで最も成功した戦略的決定だろう。シャオミはエコシステム内企業のおかげで細分化された市場に参入し、IoT市場で主導権を握ることができたからだ。
目下のところ同社のIoT事業売上の半分はエコシステム内企業と共同開発した「シャオミ(Mi)/米家(MIJIA)」という自社ブランド製品が占めている。代表的な製品はスマートウォッチ(華米)、モバイルバッテリー(紫米/ZMI)、空気清浄機(智米/smartmi)、浄水器(雲米)、ロボット掃除機(石頭科技)、バランスバイクやキックスケーター(ともに九号機器人)などだ。
2.爆発的成長の後の「フェードアウト」
■ 爆発的な成長
どの角度から見ても、華米、雲米、石頭科技、九号機器人、これら4社の成長を表すには「爆発的」という言葉がふさわしいだろう。
過去三年、これら4社の売上はほぼ倍増しており、2016年~2018年のCAGR(年平均成長率)を見ると、華米のCAGRが最も低く53%で九号機器人は92%。この2社に比べて設立が新しく、市場に参入したのも遅い石頭科技と雲米の2018年売上は2016年と比べてそれぞれ15倍と7倍も増加しており、CAGRはそれぞれ308%と186%だ。
■ 依存度の高さ
しかし、これら企業の急速な発展は「シャオミ」と切り離すことはできない。公開されている関連データを見ると、2018年末時点ではシャオミブランド製品の売上がこれらの企業の総売上のほぼ半数を占めている。これはシャオミへの依存度が高く、エコシステム内企業が自社で売り上げを作り出す能力が弱いことを意味している。
■ 今後は「フェードアウト」か?
そのため、これらの企業はここ数年ずっとシャオミへの依存を減らし、自社で売り上げを作る努力をしている。「シャオミ系」企業にとって、シャオミ/米家のブランド製品で知名度を上げた後、その積み上げてきた影響力をコントロール可能な自社ブランドへと移すのが企業拡大の最良の選択肢となるだろう。
下の図からは、九号機器人を除く3社が自社ブランド製品の売上比率拡大に注力しており、一定の成果を上げていることが見て取れる。
3.シャオミの「安売り」は避けられないのか
シャオミブランド事業の粗利益率が低いことも、各企業が自社ブランド製品を拡充しようとするモチベーションの一つになっている。
通常、エコシステム企業とシャオミが提携して作る製品にはシャオミの価格設定戦略が適用されるため粗利益率が低くなり、会社の利益率に影響する。それに比べると価格設定権を持つ自社ブランド製品にはある程度の利益率が保証されるのだ。
シャオミブランドは粗利益率こそ低いものの、マーケティング、販売チャネルなどにかかる費用はどれもシャオミが負担している。これもシャオミブランド製品の粗利益率が低い理由の一つである。
4.Mi Ecosystemは「帝国」なのか
どの企業もシャオミ/米家ブランドで知名度を上げているが、デザインが似ていること以外では、企業間や企業とシャオミ間の関連度は高くない。シャオミが「米家アプリ(Mi Home)」に基づいて構築したIoTエコシステムの歩調も完全には統一されておらず、Mi Ecosystemは「シャオミ帝国」のようにも見えるが、その実態はどちらかといえばゆるやかな「連合体」に近い。
各企業とシャオミの関係性から見ると、多くの企業は自社ブランド製品をMi Homeと連携させると同時に、アップルのHomekitとの連携も可能となっている。スマートウォッチでシャオミと深いつながりを持つ華米は、最近テンセントクラウド、QQ音楽とも戦略的提携を締結した。これは、シャオミが傘下のエコシステム内企業に対するコントロールがそれほど強くないことを意味し、これらの企業にとってもシャオミが唯一の選択肢ではないというわけだ。
シャオミ系企業にとっても、エコシステムに属する各企業の事業レベルでは多かれ少なかれ競合する部分があり、これはシャオミIoTエコシステム内部での競争が避けられないことを意味する。
しかし、このような閉塞と開放の共存がシャオミのエコシステムを現在のように成長させた一因かもしれない。エコシステム内部での良好な競争が、爆発的に成長するシャオミ系企業によりよい土壌を提供しているともいえる。
シャオミエコシステム内企業の目論見書や決算報告書には決まって「シャオミとの提携に変化が発生すれば、会社の将来の経営に不利な影響が発生する」との記載があり、企業のリスクを語る上では避けられない点となっている。しかも独立した上場企業としてのシャオミはIoT事業のさらなる拡張を念頭に置いている。Mi Ecosystemに属する企業、特に雲米のような自社ブランド製品の拡大につとめてきた企業にとって、本家シャオミ/米家製品との競争が潜在的な脅威となることは避けられないだろう。どのようにこの関係に対処するのか。これはシャオミと各企業がこれからのIoT時代に共に立ち向かうべき問題かもしれない。(翻訳・山口幸子)
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