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オンライン医療の分野では、多くの企業が問診や薬の購入、遠隔再診、決済などに関して何年も模索し続けてきた。いまだ医療現場が根本から覆されるほどの変化は生じていないものの、医療リソースと患者間の物理的距離の短縮や、医療サービス全体の効率化など成果は徐々に現れ始めている。
本社を置く上海でインターネット病院のライセンスを取得したばかりの「商贏互聯網医療(Shangying Internet Medical)」は、少し視点が異なる。同社は患者が自ら治療に関する全プロセスを管理できるシステムの構築を目指している。その責任者を務めるEddy Tau氏は現行のオンライン医療サービスについて、患者の「受診のしやすさ」は実現させたものの、患者が自ら治療プロセスを管理する行為にはあまり介入できていないと指摘。そのため「患者の治療に対する従順性」に関する問題は効果的な解決策が得られていないとの見方を示している。
同社は地域の医療機関と連携して「受診方法」から「診療ルート」、「患者の行動管理」までを一体化した管理システムを展開しようとしている。具体的には(1)患者1人に対し、専門の医師や看護師、コーディネーターなどで構成した専属チームがサービスを提供する(2)医療チームによる診断や治療方針などを基に、患者の居住地とその地域の医療機関の診療水準、患者の治療に対する従順度、家庭環境、病気に対する知識などを考慮して、患者一人ひとりに適した治療管理計画を策定する――の2点になる。
この治療プロセス管理システムには、健康保険や疾病保険、慢性疾患の管理、健康管理、医薬品関連、スクリーニング検査などのサービスも盛り込まれる。例えば、重症患者が地元の医療機関での診断確定後、さらに大きな病院で長期的な治療が必要になったとする。患者はシステムを通じて管理チームに病状に関するデータを提出するだけで、病状に応じた医療チームによる治療計画や入院に関する助言、カウンセリングなど治療に関する全てのサービスを受けられる。
中国国務院弁公庁は昨年4月に「『インターネット+医療・健康』発展促進に関する意見」を公布。診療前から診療中、診療後までをカバーするオンライン・オフライン一体化の医療サービスモデルを構築することを奨励した。Tau氏は、政策が追い風となる中、同社が実現を目指す一体的医療サービスシステムは将来的に業界の共通認識になると見込んでいる。
商贏互聯網医療は、すでに「上海紅房子産婦人科医院(Shanghai Red House Hospital)」と提携契約を結び、同社の治療管理システムを導入することで合意している。同院が得意とする卵巣がんや骨盤内炎症性疾患、不妊治療などを含む少なくとも6つの病種を管理するシステムも共同で構築し、20以上の専門診療科をカバーする。
Tau氏によると、治療管理システムは現段階では、悪性腫瘍などケースミックス指数(CMI)の高い病種を中心に設計されている。命に関わる病気の場合、治療効果が患者の生活の質(QOL)に直接影響してくるからだ。
システムを試験導入した複数の病院から、成果があったとの報告がすでに寄せられている。例えば、ある提携病院では、子宮頸がん患者が入院して化学療法を受ける日数が平均3~4日短縮された。退院後もこれまでは1年半の間に1回当たり2~3日の入院を5~6回繰り返す必要があったが、システム導入後は1回当たり1~2日の入院を3~4回するだけで済むようになった。患者1人当たり約5000元(約7万9000円)の治療コスト(交通費や宿泊費、欠勤による減給を含む)と72~96時間の治療時間を削減したことになる。
Tau氏はこのシステムのビジネスモデルについて、契約者は主に患者だが、病院や保険会社を通じて集客する考えを示した。病状に合わせた料金体系を設定し、年単位で契約するという。同社ではEC大手「京東集団(JD.com)」、オンライン医療サービスの「微医集団(ウィードクター)」「好大夫在線(www.haodf.com)」などの出身者が運営、開発などに携わっている。なお、香港の小売企業「港大零售(Sカルチャーインターナショナル)」が6月3日、同社の全権益を取得すると発表している。
(翻訳・鈴木雪絵)
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