蘇寧、中国「サークルK」60店舗を買収 コンビニ事業の拡大に突き進む

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

ビジネス注目記事

蘇寧、中国「サークルK」60店舗を買収 コンビニ事業の拡大に突き進む

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

家電量販大手「蘇寧易購(Suning.com)」傘下の生鮮食品や惣菜を主力としたコンビニ「蘇寧小店(Suning Xiaodian)」がこのほど、「利亜零售(コンビニエンス・リテール・アジア)」が広東省広州市で展開するコンビニ「サークルK(中国名:OK便利店)」60数店舗を買収した。

今回の買収は蘇寧の日用消費財(FMCG)分野における新たな一手だ。サークルKは広州市でも昔からの商業地域の中心部に点在している。周辺の「社区」(中国独自の地域コミュニティ、行政単位)は成熟しており、来店者数も多いことから、蘇寧小店が華南地域で事業を拡大する上で、重要な戦力になるとみられる。

さらに蘇寧小店は買収発表の3日前、江蘇省南京市の住宅地に「3.0モデル店舗」1号店をオープンさせている。通常店舗よりも広い面積と充実した機能を持つ店舗で、「バージョン2.0店舗」をさらに進化させた新たな業態だ。

蘇寧小店は依然として陣容拡大を加速させているが、市場では懐疑的な見方が根強い。

蘇寧小店が突き進む店舗数と機能の拡大

蘇寧小店は昨年4月にもスペインの小売大手「DIA」の中国事業を買収し、スーパーマーケット「迪亜天天(DIA)」300店舗以上を一気に傘下に収めている。

「2020年までに2万店舗」とするKPI(重要業績評価指標)達成に向け、蘇寧小店のやり方はシンプルで強引だ。買収された店舗はすでに、もしくは現在進行中で蘇寧小店に作り替えられている。今回と前回の買収に対する同社の考え方は、いずれも「新規出店のコストと経営資源の投入を大幅に減らす」、つまり手間を省くというものだった。

中国のコンビニ事業全体をみても、蘇寧小店のようなビジネスモデルは見当たらない。「天猫(Tmall)」「京東(JD.com)」らEC大手が手がける小規模小売店舗「天猫小店」「京東便利店」はフランチャイズ方式を採用することで、零細業者のサプライチェーン問題解消につなげている。直営店方式を貫き、資産を重視するのは蘇寧小店だけであり、商業地域やオフィスビルではなく、「社区」への出店を好むのも独特だ。

蘇寧小店は単なるコンビニではない。前述の3.0モデル店舗には新たな機能――レストランとバーが組み入れられている。

レストランエリアの全貌(36kr撮影)

3.0モデル店舗の面積は300平方メートルで、レストランエリアが150平方メートル以上を占める。レストランエリアには厨房、飲食エリア、カウンター、レジなどが並ぶ。厨房では麺類、チャーハン、中華まんなどの調理が可能で、メニューは60種類近くに及ぶ。

注文カウンター(36kr撮影)

注文カウンターの向かいにはドリンクカウンターがあり、ジュースやアルコール、コーヒーなどが注文を受けてから提供される。夜になると照明が灯され、夜12時まで営業するバーに変わる。

バーカウンター(36kr撮影)

店舗内には、蘇寧易購がオフラインで展開するライフスタイルショップ「蘇寧極物(JIWU)」の商品が壁面陳列されている一角があり、従来型の陳列方法に比べ見た目が良く、スペースの節約にもなっている。

全体的に見て、3.0モデル店舗はコンビニ、レストラン、社区向けサービスプラットフォームなど複数の機能を備えており、バージョン2.0店舗をベースに機能を一気に拡大したものだと言えよう。

「拡大」をどう活かすのか

蘇寧小店には常に赤字のリスクがつきまとう。市場では、新規出店するたびに1店舗あたり33万元(約495万円)の損失が出ているとの見方もある。同社の経営状態は親会社である蘇寧易購の業績の足かせにもなっていた。

今年6月末、蘇寧小店は蘇寧傘下の「Suning Smart Life」に全株式を譲渡。これにより今年下半期以降、親会社の連結対象から外れることになった。蘇寧易購はこれを受けて、今年の純利益が34億2800万元(約500億円)増加すると見込んでいる。

蘇寧小店にとって黒字化はそれほど大きな問題ではないのかもしれない。赤字を出しながらも店舗拡大を進めるのは、必ずしも利益のためではないからだ。

蘇寧小店は単なる小規模店舗ではない。同社総経理の宋鋭氏も以前、小規模店舗は消費者との距離が最も近い業態であり、市場浸透率とリピート率が高く、グループ全事業の協同と連動を担っているとの見方を示していた。つまり「アリババ」と言えば「タオバオ(淘宝)」、「テンセント(騰訊)」と言えば「WeChat(微信)」のように、「蘇寧」と言えば「蘇寧小店」をすぐに連想してもらいたいと考えているのだ。

同社の事情に詳しい関係者によると、蘇寧内部でも同社にはそれほど高い収益指標を設けておらず、赤字をなるべく減らし、収支がつり合う状態を実現できればよいとしている。結果を出せなかったとしても、蘇寧と聞いて最初に「家電販売」という反応が返ってこなくなれば、ブランド転換への投資として十分見合うと考えているようだ。この関係者は「利益を出すには比較的長い時間が必要。少なくともあと3年はかかる」とみている。

同社の問題は店舗拡大、KPI達成をどう進め、売上をどのように増やすかだ。例えば3.0モデル店舗ではトイレを開放し、通行人を取り込んで消費につなげようとしている。なお現行の店舗は最終形ではなく、将来的には新規出店コストを節約するため、120平方メートル程度に縮小された形で展開される予定だ。

蘇寧の小規模店舗事業に対する見方は非常におおらかだ。だが市場も同様かといえば、それは難しい。立地選定の失敗が原因で閉店する店舗が出てくれば、市場が過敏に反応する可能性もあるだろう。
(翻訳・池田晃子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録