ECで勝ち抜く新たな切り札に、中国ではライブコマース戦国時代

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ライブ配信やEコマースの成長が頭打ちを迎えるなか、中国では2016年に登場した「ライブコマース」が、顧客のリピート率と成約率の高さにより新たな業界の目玉となっている。

5分間で1万4000本の口紅を売った李佳琦(Austin)や、毎年6月18日に実施される「618」大セールで5億元(約75億円)超という成約額を叩きだした薇婭(viya)など、超有名インフルエンサーによるライブコマースでは販売記録が次々と塗り替えられている。

そのため、ライブ配信業務は今やECサイトの標準装備となりつつあり、アリババ傘下の「タオバオ(淘宝網)」、「京東集団(JD.com)」、「蘇寧易購(Suning.com)」、「蘑菇街(MOGU)」など各社がしのぎを削る状況だ。

既存のゲームや音楽などのライブ配信では、ファンからの投げ銭(少額の支援金)が主な収入源であり、ソーシャルコミュニティとしての意味合いが強かった。これに対し、ライブコマースは成約率や販売額を最も重要な評価指標とするコンテンツであり、これが両者を分ける最大のポイントだ。

販売手段のひとつであるライブ配信が、伸び悩むECサイトの起爆剤となっているのは間違いない。MOGUを例に挙げると、「2019年インターネットトレンドレポート」のデータによれば、MOGU利用者のリピート購入回数はライブ配信導入後に4倍となり、ライブコマースのGMV(流通総額)は総GMVの24%を占めているという。

なぜライブコマースなのか

ライブコマースは形を変えたテレビショッピングだとする見方もあるが、事実上ライブコマースの果たす役割はそれよりはるかに大きい。

映像の形式をとるライブ配信では、商品の特徴がよりリアルに視聴者へ伝わる。特に靴、衣料、化粧品など商品の使用体験が重要なジャンルでは、画像や文章に比べて表現力が高い。またライバー(ライブ配信者)がファンのリクエストに応え、実際に商品を試すといったインタラクティビティにより、ファンの個人的なニーズも満たされ、購買意欲もさらに高まるという効果が生まれている。現在では配信技術の向上により、ライブ中の抽選や割引券配布などのミニイベントも実施できるようになった。

ライブコマースを利用するユーザーの多くは18~35歳の女性で、購入前に念入りなリサーチを欠かさず、商品のクオリティに非常に敏感といった特徴がある。このため、KOL(キーオピニオンリーダー)の推薦が消費の際の決定打となる傾向がより強い。

ライブの即時性、コミュニケーション性、未編集のリアルさや臨場感が、より真実に近い消費体験をもたらしているほか、ライバー自身の影響力や信頼度といった魅力により、名もなきブランドの商品が一瞬にして大ヒットする可能性が生まれている。このため、各ECサイトは新たな人気ライバーの獲得を目指して躍起になっているのだ。

最大のプラットフォームを目指して

ECサイトが次々とライブ配信に参入するなか、優れた商品、優秀なMCN(マルチチャンネルネットワーク)やライバー、そして消費者が一度に視聴できるライブの数には限りがあるため、競争の激化は避けられない。

プラットフォームの同質化を回避するため、各ECサイトも工夫を凝らしている。タオバオ傘下のライブ配信プラットフォーム「淘宝直播(タオバオライブ)」では、衣料や化粧品などの一般的な商品以外にも、食品、生花、生鮮食品などのライブ配信もスタートし、コンテンツの充実化を図っている。また網易(NetEase)傘下のECサイト「網易考拉(kaola)」は海外商品に特化しているが、トップライバーが原産国を訪れ、商品にまつわるストーリーを語るといった独自の手法で顧客の心をつかんでいる。さらにMCNに対しても、アクセス量を引き上げるための各種サポートや、コミッションの大幅な優遇などを実施している。

既存のEコマースと比べ、ライブコマースがもつポテンシャルは底知れない。今後、5Gの普及に伴い、ライブコマースがカバーする顧客層はますます増えていくだろう。
(翻訳・神部明果)

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