原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
8月22日、三越伊勢丹ホールディングスは、同社が上海市中心部の上海大悦城(JOY CITY)で展開していた化粧品小売店「ISETAN BEAUTY」の中国1号店を、ブランド戦略の調整などを理由に9月22日で閉店すると発表した。
中国ではここ数年、外資系小売りブランドが次々と現れては消えている。実店舗での消費低迷や業界の競争激化、ECサイトの台頭などが原因だ。これに加え、ユニクロを代表とする低価格・高品質ブランドが百貨店の顧客層を分散させ、伝統ある百貨店業界も経営が苦しくなっている。
伊勢丹の閉店は今回が初めてではない。三越伊勢丹は11年前にも中国進出第1号となる「上海華亭伊勢丹」を閉店させた。当時の閉店理由は、5年連続の減収や客足の減少、有名ブランドの撤退など。現地化が不十分だったことも原因の1つに挙げられた。
一方、ISETAN BEAUTYが上海大悦城で試験営業を始めたのは15年12月。中国では百貨店業界の衰退やショッピングセンターの台頭、小売業の変革といった波が起きていたが、「ショールーム」をコンセプトにした伊勢丹は当時、強みである化粧品部門を取り出し、化粧品や関連商品を集めた小型店をオープンさせた。伊勢丹にとって、この新業態の化粧品小型店は中国で新たな成長分野を模索する試みだった。当時、日本では15店舗のISETAN BEAUTY が営業していた。
上海のISETAN BEAUTYは売り場面積約800平方メートル。エスティローダーやランコム、資生堂などの有名ブランドからクラブツリー&イヴリンなどの新興ブランドまで、約100の化粧品ブランドを取り扱っていた。「自分らしさ」を大切にする若い消費者向けに日本式のネイルやまつ毛エクステンションのサービスも提供。「Beauty」をテーマにしたカフェや美顔器の体験スペースも設けた。同業のフランス発の化粧品小売り「セフォラ(Sephora)」と比べると、ISETAN BEAUTYは顧客の滞在時間やリピート来店を増やすため知恵を絞っていたといえる。
だが、O2Oサービス大手の「美団点評(Meituan Dianping)」でISETAN BEAUTYの口コミを見てみると、消費者の評価は両極端であった。取り扱いブランドの多さが高評価を得ていた半面、商品価格は決して割安ではなく、販売員に当たり外れがあり、サプライチェーン管理も不十分といった批判も多かった。開店から3年となる昨年の時点でも「オンラインで予約してから店舗まで取りに行ったが、商品が届いていなかったことが何度もあった」という口コミが寄せられていた。
ISETAN BEAUTYの周辺2キロ圏内はセフォラの3軒に加え、資生堂やエスティローダー、ランコムなどのブランドも計9カ所で独自の化粧品カウンターを展開するという激戦区だ。ECサイトの台頭に伴い、三越伊勢丹は18年9月に中国EC大手の京東集団(JD.com)に出店したものの、巻き返すことはできなかった。
日本国内でも、三越百貨店と伊勢丹百貨店の経営統合によって生まれた三越伊勢丹の構造転換はうまくいっていないようだ。会社の運営や人事管理の面で不協和音が高まっていると言われている。18年3月に発表された決算報告によると、17年度の最終損益が9億6000万円の赤字だった。同月には千葉県松戸市の伊勢丹松戸店も閉店している。
(翻訳・鈴木雪絵)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録