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中国IT大手ネットイース(網易)傘下の越境EC「ネットイースコアラ(網易考拉)」について、アリババグループが買収あるいは株式取得に動いていると伝えられた。協議が順調に進めば今月中にも合意に達する見込みだ。ただし、双方はこの件についてノーコメントを貫いている。
先月13日付の中国経済紙「21世紀経済報道」は投資家筋の情報として、ネットイースコアラが資金調達を行うため、アリババをはじめとした複数の企業と接触していると伝えた。また、経済誌「財経」は双方がすでにほぼ合意に達しているとし、買収価格は数十億ドル(数千億円)規模に達すると報じている。
ネットイースコアラの意図
ネットイースの決算報告書を見れば、ネットイースが事業の不振を理由に「身売り」をするわけではないことがわかる。ネットイースコアラの年間売上高は100億元(約1500億円)規模に達しており、越境ECとしては国内2位のシェアを握っている。シェア1位はアリババ傘下の「天猫国際(TMALL GLOBAL)」だ。
ただし、買収・合併にしても、あるいは資金調達にしても、ネットイースコアラが多額のキャッシュをすぐに確保したい意向であることは間違いない。同プラットフォームは品質管理を徹底するため、一貫して自社で運営管理を行ってきた。しかし、自社でサプライチェーン全体を運営するには高いコストがかかる。さらに、ネットイースコアラは実店舗の出店を進めており、これにも多くの資金を必要とする。
ネットイースのEC事業は、収益力および売上高の伸び率で目覚ましい成長は望めない状況だ。今四半期の営業利益率は10%を超えたものの、63%のゲーム事業、55%の広告事業からは大きく水をあけられている。最盛期には200%近くに達していたEC事業の成長率も今四半期は約20%にまで減速した。
その背景にあるのが、新規ユーザー獲得の難しさだ。ネットイースは既存ユーザーを傘下のECプラットフォ―ムに誘導する段階はほぼ終えており、今後は外部からの集客を強化しなければならないが、それには相当なコストがかかるとみられる。同社関係者によると、ネットイースのもう一つのECプラットフォーム「網易厳選(NETEASE YEATION)」では、新規顧客獲得コストが1人当たり200元(約3000円)にも上っているという。
さらには在庫問題も成長の足かせになっている。網易厳選は在庫整理の手段として、プラットフォーム内に「9.9元(約150円)均一」の特売コーナーを設置した。これにより同社のEC事業では、今四半期の在庫金額を40億元(約600億円)にまで抑えたが、事業を拡大させるならやはりより多くの在庫を抱えることになる。
中国政府の政策も越境EC業界にとって厳しいものになっている。今年元旦に「電子商務法」が施行されると、税関業務を管轄する海関総署は、越境EC業界の管理強化に向けた対策を次々と打ち出した。
アリババの意図
資金調達を目指して複数の企業に接触してきたネットイースコアラだが、最終的にはアリババと合意に達する見込みが濃厚だ。
アリババからしてみれば、新しいプラットフォームを取り込むということは、売上増が見込めるということに等しい。ネットイースはこれまで、ネットイースコアラ単独での収益力について公表したことはないが、売上高が100億元規模であることから鑑みれば、アリババの越境EC事業に少なからぬプラスになることは間違いない。越境ECはもともと利益率の低い事業形態だ。売り上げを上げるためには、事業規模の拡大が大前提となる。
また商品のバリエーションに関しても、アリババの越境ECプラットフォーム天猫国際が化粧品類を主力商品としているのに対し、ネットイースはマタニティ・ベビー用品に強い。マタニティ・ベビー関連は越境ECにおいて最もリピート率の高いジャンルだ。これを取り込めば天猫国際は商品ラインアップを補完できる。
今回の買収が成功すれば、アリババが天猫国際とネットイースコアラの統合を主導し、両者はサプライチェーン、集客、ブランド提携などで協力を進めることになるだろう。越境EC分野において、アリババは独走状態に入ることになる。
(翻訳・愛玉)
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