中国新興EV「NIO」、人員10%削減へ 競争激化に備え事業を最適化

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新エネルギー車(NEV)業界が今年も目覚ましい成長を続けているが、中国では自動車市場の競争も激化している。中国新興電気自動車(EV)メーカー「蔚来汽車(NIO)」の李斌会長兼CEO(最高経営責任者)は11月3日午後、やや重いトーンの社内メールを全従業員に送った。その中で「今後2年間は自動車産業の変革に伴い競争が最も激しい局面となり、外部の環境も不確定要素に満ちている。今年は5種類の新モデルを納車し、成約額30万元(約622万円)以上の純電気自動車(BEV)市場で40%以上のシェアを獲得したが、全体的な業績はまだ目標には及ばない。競争に生き残るためにはいっそう効率化を進め、主力業務に充分なリソースを投入する必要がある」と現状を語った。

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李CEOはさらに「2年間の事業計画についての検討会議をこの2カ月で30回以上開き、各事業の今後2年間の目標、成功要因と優先事項、行動計画、必要なリソースを固め、組織の最適化や効率化の機会を見極めた」ことを述べている。

また過去2週間で以下の原則に基づき事業の優先順位を定め、組織や事業最適化のための具体的な計画を制定したことが示された。

1. 基幹技術に長期的に投資し、技術と製品の優位性を維持する

2. 激しい市場競争に対応できる販売・サービス能力を確保する

3. 3つのブランド・9つのコア製品を計画通りに市場に投入する

4. 組織の効率化や重複する部門やポストの統合を進め、非効率な社内ワークフローや分業を変革し、非効率な役職は廃止する

5. リソースを効率化し、3年以内に結果を出せないプロジェクトへの投資を延期または削減する

NIOはこの計画に基づいて職位を約10%削減する予定で、11月中には完了するという。李CEOは「今回の調整が一部の従業員に与える影響を申し訳なく思うと同時に、これは当社が激しい市場競争に直面して下さざるを得なかった難しい決断だということもご理解いただきたい」と記している。

この計画はさまざまな事業に影響を及ぼすが、「バッテリーやスマートフォン部門の調整が最も大きいかもしれない」と、ある関係者は述べた。

NIOは過去2年間で急速に事業を拡大してきた。バッテリー、チップ、スマートフォンなど新しいプロジェクトに資金を投じ、スマート化、エネルギー、ユーザー関連など既存事業も拡充して、従業員数は2倍以上に増加した。

しかし、業績は事業の拡大スピードに追いついていない。NIOは2022年通期に144億元(約2980億円)の損失を計上し、22年下半期(7~12月)からは現金および現金等価物が四半期ごとに60億元(約1240億円)以上目減りして、23年第2四半期(4~6月)末時点ではわずか315億元(約6530億円)だった。

それでも今年発売の新型SUV「ES6」を、市況に合わせて3万元(約62万2000円)値引きしてから事態は好転し始めた。月間販売台数は7月以降1万5000台の水準を回復し、2万台を超える月もあった。第2四半期決算説明会では、粗利率が第3四半期(7~9月)には2桁台に回復するとされた。

NIOは経営維持のため、外部からの資金援助も求めた。6月にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国政府系ファンドから約11億ドル(約1660億円)を調達後、9月には10億ドル(約1510億円)の転換社債を発行し、このうち5億ドル(約755億円)は過去の転換社債の償還に充てられた。つまり当面の資金繰りのため、5億ドルを新たに借り入れたことになる。

しかし今年は資本市場も同様に厳しく、出資する意向のある資金提供者がいても非常に慎重で、資金調達コストも上昇している。NIOの発表によると、償還される5億ドルの転換社債は、もともと26年と27年に償還期限を迎え、利率はそれぞれ0%と0.5%だったが、新たな10億ドルの転換社債は利率がそれぞれ3.875%と4.625%となっている。

事業運営にはまだ多額の資金が必要で、外部からの資金調達も以前ほどスムーズではない今、組織の最適化およびコスト削減・効率化は避けられない。

NIOは先ごろサプライチェーンで価格の大幅な引き下げを行い、7~9月期は月間販売台数が2万台に迫るなどして、粗利率は予定通り2桁に回復した。今回の事業と組織のスリム化で、さらなるコストカットが進むはずだ。

スタートアップ企業が巨額の赤字覚悟で多額の資金を投じる時代は終わり、かつての新興自動車メーカーも成果を出すべき時期を迎えている。修羅場に耐え、競争の場にとどまるためには、コスト削減と効率化で体力を強化するしかないことに、NIOはもう気づいている。

1台あたり200万円の赤字 それでも中国新興EVが資金に困らないわけ

(翻訳:浅田雅美)

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