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ペットブームに沸く中国では、ペットを飼う人の数が増えているほか、飼い主の世代も若年化している。これに伴い、ペット関連のサービスも変化しているようだ。
ペットのケア代行サービスを自宅訪問型で展開する「愛沃派iwalkpet」は、間違いなく革新的なサービスの一つだろう。そのサービスを一言で説明するならば、サービスの提供者と依頼者をプラットフォーム上でマッチングするもので、まさに「Uber型」のスキームだといえる。主に猫の餌やりなどの世話を代行するが、犬の散歩代行も行っているという。
2014年に上海で設立された愛沃派は、昨年から北京、広州など7都市へサービスを拡大した。SNSの公式アカウントやミニプログラムを通じてサービスを提供している。
ペット愛好家にとって長期休暇は悩みの種だ。旅行などで自宅を不在にする場合、ペットの世話をどうするかという問題に直面する。ペットホテルなどの施設も、大型連休の直前はどこも予約で一杯という状況だ。
愛沃派を創業した楊志純氏は、この解決策として訪問型サービスを考案した。サービスの提供場所を確保する必要がなく、環境の変化を嫌うペットにとってもストレスが少なくて済む。しかし、ペット関連の訪問型サービスはすでに多く存在し、なぜこのタイミングで起業したのかという疑問も残る。
楊氏はこれまで訪問型サービスがあまり普及しなかった大きな理由について、自宅に保管している貴重品に関する利用者の不安がぬぐえなかったからだと指摘する。しかし、近年になってキャッシュレス社会が実現したことや、これまで高価とされてきた電子製品が大衆化したことで、赤の他人を家に上げることへの抵抗感が下がったと楊氏は考えた。
愛沃派の受注件数は年3~4倍のペースで増えている。2017年のサービス提供回数は約4600回だったが、2018年には1万6000回に増加。今年は旧正月期間だけで2200件を受注した。サービス料は1回ごとに徴収し、平均60~100元(約900~1500円)となっている。顧客1人当たりの利用回数は平均して年3回とリピート率も高まっている。
ペット関係の訪問サービスはこれまでにも存在したが、愛沃派は自社製の運営システムを活用してサービスの発注者と受注者のマッチングを行うほか、ペットシッターの募集や研修も行っている。
ただし、サービスの受注件数は時期により変動が大きいため、効率やコスト面から考慮して、登録するペットシッターは専属人員ではない。サービスの安全性を担保するため、同社は独自の認証制度を設け、登録するシッターにはクレジットスコアや在職証明などの提出を義務付けている。
ペットの世話にも対応する家事代行サービスや、ペットショップによるローカルサービスも競合として存在するが、楊氏はペットのケアに特化した愛沃派のようなサービスは、顧客の信頼感を得やすいと考える。ペットの世話は一見して簡単なようだが、顧客の満足度はプラットフォームの運営力が大きく左右する。愛沃派は設立以来、バックヤード体制の構築に一貫して注力してきた。
プラットフォームにとっての最大の課題は、受注件数が爆発的に増えたときに対応不能とならないよう備えること、またどのようにサービスの質を維持するかということだ。その対策として登録シッターの人数を管理可能な範囲に抑えたとすると、受注内容とのマッチングを考慮しながらスタッフ1人当たりのパフォーマンスを上げる工夫が必要となる。それぞれの顧客の依頼頻度やペットの数、サービスに関するリクエスト、顧客宅への交通アクセスなども念頭に置いた上で業務を振り分けなければならない。各シッターのピーク時の対応可能件数が、直接的にシステム全体のキャパシティに影響するのだ。
自社で確立したシステムと、独自に作成したSOP(標準作業手順書)が愛沃派の最大の強みだと楊氏も自認する。システムの支援によってシッター1人が1日に20件の依頼に対応できるようになれば、登録シッターの人数を最低限に抑えることができ、管理面での負荷も下がる。
ユーザーの利用習慣は市場規模に直結する。犬の散歩代行サービスをアプリで提供する米企業「Wag」は昨年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから3億ドル(約320億円)の出資を受けた。だが同社が犬の散歩代行だけでユニコーンに成長できたのは、米国ではもともと犬の散歩代行サービスが市場としてかなり成熟していたからであり、Wagはそれをプラットフォーム化かつオンライン化したにすぎない。
しかし「中国での訪問型ペットシッターサービスはニッチ市場になる」と楊氏は断言する。ターゲットユーザーで最も典型的なのは大都市在住の地方出身者だという。「一級、新一級都市の若い地方出身者」と「ペット飼育者の比率」、この二つのデータをかけ合わせればおおよその市場規模は割り出せるという。
訪問型ペットシッターは労働集約型の事業であるため、収益の8割はシッターへの報酬と運営費用に充てている。今後は蓄積したユーザーの利用データなどを元に、動物病院と提携して新たな顧客獲得に努めるほか、ペットのオンライン診療、ワクチン接種および寄生虫駆除などの訪問医療サービスへとつなげたい考えだ。現在の集客は短編動画アプリのTikTok(抖音)やSNSのWeChat(微信)で行っているが、これら公式アカウントのフォロワーが実際の利用者になる確率(CVR)は約20%だ。これまでの利用者数は累計約1万人で、今年は倍増することが予想されている。
(翻訳・愛玉)
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