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中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)が年間販売台数300万台を目指し、12月に入って全シリーズで値下げを実施した。値下げ幅は最大で2万元(約40万円)になる。
BYDだけでなく、新興EVメーカー零跑汽車(Leap Motor)も車両価格から1万7000元(約34万円)を値引きし、理想汽車(Li Auto)は「L7」と「L8」で最高3万6000元(約72万円)値下げした。吉利汽車(Geely Automobile)傘下の高級EVブランドZEEKR(極氪)は「ZEEKR 001」で1万6000元(約32万円)の値下げを実施し、ネット検索大手の百度(バイドゥ)が吉利汽車と共同開発した「極越(JIYUE)01」は、発売から間もないものの、全シリーズを3万元(約60万円)値下げすると発表した。このほかにも、10以上のブランドが何らかのかたちで価格競争に加わっている。
車両の値下げが進むなか、主要部品である車載電池の価格も下がっている。
業界関係者によると、今年に入ってから炭酸リチウムなどリチウムイオン電池の材料価格が下がり続け、角型バッテリーセルの平均価格は1Whあたり0.8元(約16円)以上から0.5元(約10円)程度にまで落ち込んでいるという。
つまり60kWhのバッテリーパックを搭載した車両なら、コストは少なくとも1万8000元(約36万円)下がることになる。
リチウム価格の下落と過剰な生産能力
広州先物取引所では炭酸リチウムの先物取引価格が12月4、5日と2日連続でストップ安となった。6日には下げ幅がさらに拡大、オファー価格は1トンあたり9万元(約180万円)を割り込み、昨年の最高額に比べ85%下落した。
業界内では悲観的な見通しが広まり、炭酸リチウムの価格が下落し続ける影響から、ほぼすべての原材料価格が不安定になった。負極材料の来年の基準価格に話が及ぶと、ある業界関係者は「今は年単位でなく、ほとんど月単位で価格が変わる」と語った。
原材料価格はほんの一面にすぎない。さらに悪いことに、業界全体で生産能力過剰という困った状況に陥っているのだ。
あるデータによると、中国の2022年の車載電池搭載量は294.6GWhだが、出荷量は465.5GWhに上る。産業全体の在庫量は164.8GWhと過去最高となった。
これは車載電池の主要4材料(正極、負極、セパレーター、電解液)や電池システムに至るまで全ての生産能力が過剰の状態に陥っていることを示している。ある正極材メーカーの関係者は36Krに対し、多くの工場を建設したものの全てが操業停止の休眠状態で、赤字だと語った。
新たな受注が無いだけでなく、すでに契約済みの注文も手つかずのままになっている。
車載電池の川上川下とも過剰な生産能力を解消するために、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーセルのオファー価格が1Whあたり0.5元(約10円)、さらに0.4元(約8円)にまで下がるのも、不思議なことではない。バッテリーから車両まで、来年はさらにし烈な価格競争が繰り広げられるだろう。
2024年はさらに厳しく
この年末も楽観できない状況だ。あるアナリストは「12月の材料生産計画は昨年より減少し、需要は低迷している」と話す。
蓄電分野では、受注が減ればそれだけ競争が激化するという構図が特にはっきりしている。BYDの関係者によると、10月に入ってからBYDでは毎週ライバル企業の価格や製品情報を集め、出荷量や価格を分析して戦略を練るようになったという。
来年はさらに悲惨な状況となるだろう。ある業界関係者によると、一部の材料メーカーは来年10%以上値下げすると通知された。BYDのバッテリーサプライヤーは来年20%のコスト削減を求められ、今年の20%削減と合わせて「2年で4割引き下げることになる」という。
バッテリーのコスト構造はすでに限界にまで圧縮されている。材料のほうでコストを削っても、バッテリー価格引き下げの余地はそれほど大きくない。しかしエンドユーザーの、特に新エネルギー車の価格競争は止むことがない。いったいどこでコストを削減するのか、産業チェーンに関わる企業はみな神経をとがらせている。
*2023年12月20日のレート(1元=約20円)で計算しています
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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