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茶葉などの廃棄物を材料や原料として再利用するスタートアップ企業「甡物科技(Zence Object Technology)」が、シードラウンドでアリババ創業者基金(Alibaba Entrepreneurs Fund)と戈壁創投(Gobi Partners)から数百万ドル(数億~十数億円)を調達した。
2020年に設立された甡物科技は広東省・香港・マカオから成るグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)に拠点を置き、廃棄物系バイオマスを使った持続可能な新材料の製造と、生分解性に関する環境ソリューションを手がけている。茶かすや麦わら、さまざまな農業廃棄物などを環境に優しい材料に変え、東洋文化の特色を持つ製品を開発している。
主要製品は茶葉を使った生分解性のプラスチックと合板だ。生分解性プラスチックは包装材、タンブラー、食器、使い捨てカトラリー、ビニール袋などに活用される。生分解性合板は壁面装飾パネル、家具・インテリア、包装などに使われる。
中国は世界最大の茶葉生産国で、その生産量は年間300万トン近くに上る。毎年発生する茶かすは数十万トンと言われ、量が多いにもかかわらず利用率が低く、ほとんどが廃棄されるため、環境汚染を引き起こす上にバイオマスの浪費につながっている。甡物科技は茶葉から始めて稲わら、トウモロコシの茎、竹など農業廃棄物のほか、酒かす、バガスなどの農業副産物、漢方薬や化粧品の抽出残渣などへと再生材料技術を水平展開している。
製品の製造は、廃棄物系バイオマスのリサイクルシステム、バイオベース材料の改質・混合技術、バイオベース材料の製造・加工システムの3つに分かれている。うちリサイクルシステムは廃棄された農作物、茶葉、茶かす、竹などを回収して選別、洗浄、消毒、乾燥、粉砕などの処理を施すことで、合成可能な材料に変える。それを合成システムで生分解性の素材、合板、紙などに変え、最後にスマート化された生産ラインで完成品が出来上がる。
材料の価格を見ると、例えば従来のプラスチックが1キログラム当たり10〜25元(約200~500円)に対し、生分解性材料のポリ乳酸(PLA)は20〜30元(約400~600円)ほどで、完全生分解性材料のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は50〜80元(約1000~1600円)以上になる。同社は改質技術によって、材料の価格を従来のプラスチックに近い25~35元(約500~700円)に抑え、機械的性質を向上させると同時に生分解性も確保できるという。
共同創業者の陳鵬基氏によると、同社は2018年以降、地元政府や茶畑と協力して原料の回収コストを引き下げ、中国の大手PHAメーカーとも戦略的提携を結んでコスト削減を図っている。一方、日本の住友重機械工業と研究開発設備をめぐる提携を結び、従来の射出成形機では難しかったバイオベース材料の成形や生産効率の低さといった課題を解決したという。
甡物科技は日本のイオングループや長瀬産業、自動車メーカーのBMW、スターバックスコーヒー、中国ティードリンク大手の喜茶(HEYTEA)、奈雪的茶(NAIXUE)、中国茶専門店の天福茗茶(TENFUKU MEICHA)といった有名企業などとプロジェクトを進めている。
同社は2022年に量産を実現し、23年には研究開発・生産拠点の建設を終えた。22年の売上高は100万元(約2000万円)を超え、23年も売り上げ倍増の目標を達成したという。今後はリサイクル拠点のスマート化を進め、茶葉を中心に事業を拡大する方針だ。
*2024年1月22日のレート(1ドル=148円、1元=20円)で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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