リチウム電池の需要増加で脚光 中国有力新興、単層カーボンナノチューブの量産強化へ

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拡大を続ける電気自動車(EV)市場や消費者用電子機器市場にけん引される形で、リチウムイオン電池の市場ニーズが急増している。特にリチウムイオン電池の主要な補助材料である導電助剤は重要産業となっている。導電助剤には、カーボンブラックやグラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)など、さまざまな構造を持つカーボン材料が使用される。なかでも、CNTは必要な添加量が最も少なく、性能にも優れ、市場で最も広く使用されている。

導電助剤のカーボン材料を手がける中国企業「山東碳尋新材料」は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の量産と関連設備の開発に注力している。主力商品は高純度の単層CNTパウダー、水性導電性ペースト、油性導電性ペーストの3種類だ。製品は帯電防止ラテックスグローブやバッテリーの正負極材料などに活用される。

「碳尋新材料」の高純度単層CNTパウダーの電子顕微鏡写真

CNTはアスペクト比(縦横比)の高い導電性添加剤で、チューブの層数で単層CNT(SWCNT)と多層CNT(MWCNT)の2種類に分けられる。単層CNTは、ハニカム構造の炭素原子が継ぎ目のないチューブ状になったもので、非常に軽く、夢の素材として注目されてきた。業界内では単層グラフェンナノチューブとも呼ばれている。多層CNTは多層グラフェンをチューブ状に巻いたような形状だ。

単層CNTと多層CNTはその構造の違いにより、さまざまな基材のなかでそれぞれ異なる特徴を発揮する。例えば、ある高分子材料に添加した場合、物体の変形しにくさを表すヤング率は単層CNTのほうが1~2桁大きくなり、多層CNTよりも高い強度と剛性を発揮する。

多層CNTの技術はある程度成熟しており、中国でも複数の企業が量産に成功している。しかし、単層CNTを1トン単位で量産できる中国企業はほとんどなく、量産を実現できているのは100トンクラスの生産ラインを有するロシアのOCSiAlだけだ。碳尋新材料の創業者・許蘭蘭氏は「当社が開発した単層CNTは、OCSiAl社のものより高いアスペクト比や強度比(IG/ID)を誇る。しかもこれまで中国企業の量産を阻んでいた技術的問題の解決にも成功した」と語る。

同社は主流となっている化学気相成長(CVD)法を採用しているが、その最大の強みは独自に開発した製造工程にある。昨年には単層CNTのパイロット試験を完了した。

「国内の大手電池メーカーにサンプルを送ってテストしてもらったところ、海外製の単層CNTに比べて極板の抵抗値がいくらか低く、容量維持率は2%高いとの結果が得られた」と許氏は話す。

碳尋新材料は多年にわたり単層CNT技術の研究に注力してきた。同社の前身となったコアチームは2020年に結成され、ナノ材料分野で経験豊富な鐘小華博士を筆頭に、研究者10人余りで構成されている。鐘博士はカーボン材料やそれに関わる研究に20年近く携わり、50件以上の発明特許を取得した。創業者の許氏はカーボン材料の調製や処理、断片化などで十数年の実務経験がある。

今年はプロモーションの強化を目標にしており、すでに多くの新エネルギー関連企業にテストのためのサンプルを送っている。今年末までに20~30トンの高純度単層CNTパウダーを生産し、単層CNT導電性ペースト900トンを生産・販売するという経営目標を掲げる。許氏の話では、高純度単層CNTパウダーはまだコストが高いため、さらなる技術開発や量産能力の向上を通じてコストを削減し、高性能の多層CNTパウダーと同等のコストに抑えることを目指しているという。

(翻訳・畠中裕子)

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