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水素の貯蔵・輸送技術を手がける中国スタートアップ企業の「理谷新能源(Ligu Renewable Energy)」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。出資は天鷹資本(Ying Capital)が主導し、既存株主の険峰長青(K2VC)も参加。資金は、液体有機水素キャリア(LOHC)のパイロットラインの建設とバイオ由来のフランジカルボン酸(FDCA)生産技術の開発に充てられるという。
理谷新能源は2021年6月に設立され、LOHC技術を用いた水素エネルギーの貯蔵・輸送や再生可能エネルギーの開発、事業化に注力している。すでに、LOHCの小規模なパイロットラインで、連続8000時間にわたる評価実験を終えた。その結果、同社の脱水素触媒は選択性、転化率、寿命が大規模に活用できる水準に達し、プロジェクトは事業化へ向かっているという。
博士号の取得者が率いる同社のチームは、華東理工大学と協力しながら技術開発や事業化を進め、独自の知的財産権も有している。創業者の郭勇氏は、同大学の「国家級青年人材」に選ばれ、長年にわたり水素やバイオマスエネルギーを含む再生可能エネルギー分野に携わってきた。
生産から貯蔵、輸送、加工、利用に至る水素エネルギーの産業チェーンにおいて、貯蔵と輸送は川上と川下を結ぶ重要なプロセスであり、コストなどの面で事業化や大規模な活用のカギを握る。特に大規模貯蔵と長距離輸送は事業化を進めるうえでの大きなボトルネックとなっている。
現時点で水素を輸送・貯蔵する方法には主に高圧水素ガス、低温の液体水素、固体水素キャリア、LOHCがある。目下、主流となっている高圧水素ガスは輸送にトレーラーを使うが、1回当たりの輸送量と輸送距離に限界があるため大規模な活用には適さず、安全性と貯蔵にも課題を抱える。
理谷新能源が注力するトルエンを使ったLOHCの貯蔵・輸送ソリューションは、低コストで技術的なハードルも低く、長距離輸送や大規模な貯蔵を可能にする。特にトルエンを水素化したメチルシクロヘキサン(MCH)をキャリアとする方法は、原料のトルエンが安価で入手しやすいだけでなく、既存の石油・天然ガス産業チェーンをそのまま利用でき、海外でも成功事例があることから事業化の可能性が高いと言える。
同社は、液体のMCHをキャリアとする水素化、貯蔵・輸送、脱水素のサイクルを構築した。MCHは石油類の化学製品でガソリンの成分にもなっているため、貯蔵・輸送チェーンが十分に整備されており、一般的なタンクローリーで輸送できる。MCHは水素の消費現場で脱水素化によってトルエンと水素ガスに分離され、トルエンはリサイクルもしくは販売される。
トルエンは中国で、生産量が年間1000万トン近くに上り、LOHCに使う他の原料に比べ生産・輸送・販売チェーンが確立されているため、低価格で安定した量を入手しやすい。MCHは理論上、水素含有量が重量当たり6.2%、体積当たり47.4グラムに上り、タンクローリーで水素1トン以上の長距離輸送も可能になる。
同社はビジネスモデルとして、生産技術やコア設備を提供するほか、水素エネルギー企業の設立を技術面および資金面でバックアップしようとしている。今年後半には1日当たり200〜500キロの水素化と脱水素が可能なパイロットプラントを建設し、事業化を目指す計画だ。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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