中国の大型EVトラックメーカー、プレIPOで300億円近く調達へ ベルギー政府系ファンドが主導

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ編集部お勧め記事注目記事

中国の大型EVトラックメーカー、プレIPOで300億円近く調達へ ベルギー政府系ファンドが主導

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

電気で走る大型EVトラックを手がける中国の「葦渡科技(Windrose Technology)」(以下、ウインドローズ・テクノロジー)が、プレIPOラウンドでベルギーの政府系ファンド・SFPIMなどから2億ドル(約290億円)を調達するという。

ウインドローズ・テクノロジーはこれまで、滙豊銀行(HSBC)や米HITE Hedge Asset Management、豪Goodman Groupなどから10億元(約200億円)以上を調達し、今年に入ってから米国でIPOに向けた手続きを開始した。

電気を動力源とする大型スマートトラックのトータルソリューションを手掛ける企業として、2022年3月に設立されたウインドローズ・テクノロジー。主要チームは安徽省合肥市、江蘇省蘇州市、香港にあり、欧州本部をベルギーのアントワープに置く。主に中国で研究開発を行い、ベルギーやフランス、米国でサプライチェーンを構築していく計画もある。

今回、ウインドローズ・テクノロジーは中国企業としては初めて欧州の政府系ファンドから出資を受けた新エネルギー車メーカーとなった。自動車産業で長い歴史を持つベルギーでは、新エネルギーへのシフトが進みつつあり、関連する産業チェーンの発展を推進しているところだ。また、同国のアントワープには欧州で2番目に大きな港があり、海運を手掛ける企業顧客へのサービスにも適している。

一般に積載量15トン以上とされる大型トラックは、主に長距離貨物輸送を担う重要な車種だ。大型トラックも新エネルギーへのシフトが進んでいる。動力源は主に電気と水素に分けられ、現在は電気が優勢だ。専門調査会社の高工産業研究院(GGII)のデータによると、24年1~5月の中国の新エネルギー大型トラックの販売台数は前年同期比139%増の2万776台で、普及率は8.21%だった。うち、純電気大型トラックが同142%増の1万9700台となり、全体の94.8%を占めた。

同社は初となる純電動の大型EVトラックを2024年4月に発表。729キロワット時(kWh)のバッテリーを搭載し、総重量49トンで670kmの長距離走行を実現。800ボルトの高圧プラットフォームと急速充電方式を採用し、36分間の充電で400km走行できる。

その大型EVトラックは、主に高速幹線輸送に重点を置き、長距離・短距離輸送をカバーしている。例えば、同社は7月に香港の物流大手・嘉里物流(Kerry Logistics Network)と提携し、山東省済南市から江蘇省南京市まで677kmの無充電貨物輸送を成功させた。6月には、仏スポーツ用品メーカーのDecathlon(デカトロン)と提携し、広東省東莞市から北京市近郊までの片道2253kmを、2回の充電で走らせた。

ウインドローズ・テクノロジーはアジア、欧米、オセアニアを主な市場としており、中国や欧米諸国、ニュージーランドなどからトラック6000台以上を受注している。今後は南米市場の拡大を計画しており、今年10~12月期には中国での大量生産と納品を開始する見込みだ。すでにデカトロンやGoodman Group、Kerry Logistics、中国の栄慶物流(Rokin Logistics)、独テュフ ラインランドなどと提携している。

同社の大型EVトラックの海外販売価格は25万ドル(約3600万円)で、欧米の自動車大手とも十分に戦えるスペック・価格となっている。中国国内ではハイエンドに位置づけられるが、長期的には運転コストの節約につながる。創業者の韓文CEOによると、同社の大型EVトラックは、従来の燃料式に比べ、エネルギーコストを1kmあたり2割削減できるという。

EVの給電方法にはバッテリー交換と充電という2つの方法がある。ウインドローズ・テクノロジーのトラックは充電方式を採用しており、800ボルト以上の急速充電ステーションを使用できる。韓CEOは、航続距離や充電の問題が解決すべき課題であるとし、既存の充電スタンドを利用できれば、大型EVトラックの普及に弾みが付き、輸送効率も向上すると語る。同社は、中国にある64カ所の公共充電スタンドを含め、世界で100カ所以上の公共充電スタンドで試験運用を重ねてきた。また同社はGoodman Groupおよび米自動車部品メーカー・ボルグワーナーとともに、北京市近郊のデカトロン物流パークに世界初のメガワット級充電ステーションを建設した。

中国の大型電動トラック「Windrose」、シリーズBで累計約170億円を調達 24年中に納車へ

ウインドローズ・テクノロジーには現在約140人が在籍し、うち100人以上が研究開発部門に所属している。韓CEOはかつて大型トラック自動運転企業・智加科技(PlusAI)の最高戦略責任者(CSO)や最高財務責任者(CFO)を務めた。また共同創業者で社長の陳澔利CTOは大運汽車(Dayun Automobile)で大型トラック・乗用車事業部門のゼネラルマネージャーを務めていた。

*1ドル=約148円 1元=約21円で計算しています。

(翻訳・北村一仁)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録