価格競争の泥沼からの脱出策?中国車メーカー、テスラに追随「ロボット開発」に逃げ道

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自動車業界が値下げ競争の泥沼に陥る中、一部の企業は新たな成長を模索し、ロボット開発に活路を見出そうとしている。

米電気自動車(EV)大手のテスラが2021年に自社開発の人型ロボット「Optimus(オプティマス)」を発表した後、新興EVの「小鵬汽車(Xpeng Motors)」、自動車大手の奇瑞汽車(Chery Automobile)(冒頭写真)など多くの中国自動車メーカーが相次いでロボットの研究開発計画を発表し、様々なロボットを製品化してリリースしている。

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投資を通じてロボット産業に参入する自動車メーカーもある。 2024年だけでも、自動車大手・北京汽車集団(BAIC Group)傘下の投資会社「北京汽車集団産業投資(BAIC Capital)」)は、ロボットセンサの「帕西尼感知科技(PaXini Tech)」や人型ロボットの「銀河通用機器人(Galbot)」などの新興企業に投資した。

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ファーウェイ(華為技術)が採用した「天才少年」として知られる彭志輝氏によって設立されたAIロボットメーカー「智元機器人(Agibot)」(上海智元新創技術)は、多くの自動車会社から熱視線を向けられており、投資企業には比亜迪(BYD)、北京汽車、上海汽車(SAIC Moto)などの代表的な大手自動車メーカーが含まれている。

 

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ある自動車メーカー系の投資企業は「今のEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの新エネルギー車は、価格を大幅に下げないと売れないかもしれないが、値下げしすぎると自動車メーカーが赤字になると同時に評判を下げる。 そのため、われわれはロボット企業に投資し、ロボットが会社の第2の成長エンジンを生み出してくれることを期待している」と述べた。

自動車メーカーのロボット参入での強み

人型ロボットは大まかに言って、マルチモーダルのAIモデルを中核とする「大脳」、運動機能を制御する「小脳」、そしてロボットの「胴体」の3つの部分から構成される。 精密な作り込みやインテリジェントドライブ技術を得意とする自動車業界のプレーヤーにとって、「小脳」と「胴体」はロボットの製造工程の中で、最適な参入のための入口になる。

テスラは、人型ロボットの開発に参入した最初の自動車メーカーで、2021年に初の人型ロボット「オプティマス(Optimus)」を発表し、2025年初頭に少量生産された後、テスラの工場で使用される予定となっている。

公開情報によると、テスラはオプティマスに数十人からなる遠隔操作(Teleoperation)チームを配置した。彼らはモーションキャプチャーの機器とVRヘッドセットを装着し、様々な種類の指定された動作を実際に行い、AI訓練用のデータを収集する必要がある。 遠隔操作は、ロボット企業がリアルなデータを収集する方法のひとつであり、収集された大量のデータを活用してロボットを訓練することで、ロボットによる関連作業の成功率が向上するという利点がある。

ある業界関係者によると、自動車工場は生産工程が多様で規定も明確なので、データ収集には最適な場所ではあるという。そのため、自動車工場はほとんどの人型ロボット製品が最初に導入される好都合な場面となっている。工場を持っている自動車会社にとって、ロボットの研究開発において固有のデータ収集ができるという強みがある。

さらに、大規模に量産化されている自動車部品はロボットに応用でき、ロボット本体の開発コストを削減することができる。3つの可動部分を持つオプティマスの手と腕の製造コストを削減し続けるために、テスラはオプティマスにテスラ車のリフトゲートの駆動装置を応用し、これにより数百ドル(数万円超)のコストを削減したと報告されている。

一部の中国自動車部品サプライヤーは、既にロボット分野向けに的を絞っている。例えば、電気製品大手の「匯川技術 (Inovance Technology)」、自動車部品大手の「寧波拓普集団(Ningbo Tuopu Group)」、自動車向け高性能センサーLiDARを手がける「速騰聚創(ロボセンス)」などは、以前に人型ロボット用のコア部品の開発に注力すると表明している。

しかし、自動車部品メーカーがロボット用部品を供給することはあっても、人型ロボットの部品はまだ標準化されていない。 EVと人型ロボットはそもそも違う製品で、両者のサプライチェーンが異なる方向に分岐していくことが考えられるので、そう簡単に参入できるわけではないだろう。

また、製造やサプライチェーンの統合を得意としている自動車メーカーにとっても、ロボットの開発は容易ではない。テスラのイーロン・ マスクCEOは、オプティマスの手の可動部分を11から22に倍増させると述べているが、先日のテスラのイベントでは、展示されていた手の可動部分は明確なアップグレードはされていなかった。 豊富な製造経験を持ち、多額のコストをかけているテスラでさえ、人型ロボット開発は順風満帆ではない。

*1ドル=約152円で計算しています。

(36Kr Japan編集部)

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