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高性能の熱電変換技術を手がける中国のスタートアップ「中科玻声」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億元超)を調達した。中科創星(CASSTAR)が出資を主導し、江陰市人材科創天使基金、蘇控創投などが参加した。調達した資金は生産能力の拡大や研究開発、チームビルディングの強化に充てられる。
熱から電気を、電気から熱を発生させる物質を熱電変換材料という。中科玻声はその熱交換効率を示す指標である「ZT値」の向上に注力している。
中科玻声は熱電変換材料のP型半導体とN型半導体の性能向上を図り、P型半導体のZT値を1.3に、N型半導体のZT値を1にまで高めることに成功、世界トップレベルに迫る性能を実現した。これら高性能の熱電変換材料を使用すれば、デバイスの小型化や効率化が可能になる。同社はこの技術力を武器に、ハイエンド市場の世界大手とも渡り合えるようになった。
さらに、フレキシブル熱電変換材料の分野でも大きな成果を上げた。従来の熱電変換材料は硬い素材がほとんどだったため、柔らかく曲げに強い材料が求められるウエアラブルデバイスなどへの活用は難しかった。
中科玻声は常温でZT値0.6のフレキシブル熱電変換材料の開発に成功した。展延性に優れ、曲げにも強いため幅広い用途での活用が見込まれる。これをベースに、厚みわずか0.3ミリの超薄型フレキシブル熱電変換デバイスも開発、健康モニタリング機器やスマートバンドなどのウエアラブルデバイスに適した柔軟性を実現した。
中科玻声が事業の軸足を置いているのは、温度調節機能付きシートや車載冷蔵庫などの車載分野だ。電気自動車(EV)の普及で車載規格の温度制御システムの需要が拡大するなか、同社は確かな技術力と精密な温度制御を強みに、温度調節機能付きシートの開発スキルを持つ唯一の中国企業となっている。
現時点で、吉利汽車(Geely Automobile)や零跑汽車(Leapmotor)、奇瑞汽車(Chery Automobile)、紅旗(Hongqi)、広州汽車(GAC)など大手自動車メーカーのサプライヤーになっているほか、温度制御への需要が大きい光通信や医療機器の分野の開拓も積極的に進め、さらなる成長の手応えをつかんでいる。
世界の高性能熱電変換市場は長らく日米企業に占有されてきた。熱電半導体の製造に欠かせないコア技術には、半導体材料、デバイスプロセス、モジュール統合があるが、ハイエンド市場ではコマツ、フェローテック、Laird Technologies、Phononicなどの日米企業が技術的にリードしており、中国企業はミドル~ローエンド市場にとどまっているのが現状だ。
こうしたなか、中科玻声は中国科学院傘下の上海硅酸塩研究所と協力しながら、学術論文600本余りを発表し、130件以上の特許を保有するなど、技術面で大きな成果を上げている。目下、自動車産業や工業、医療などハイエンド分野における高性能熱電半導体の活用に力を入れて取り組んでいるという。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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