「メタノール水素EV」の実用化を加速。吉利汽車系スタートアップ、200億円超調達

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メタノールで走る次世代型自動車を開発する「醇氫科技(Chunqing technology)」が2024年12月、追加のプレシリーズAで資金を調達したと発表した。同社は中国自動車大手・浙江吉利控股集団(Zhejiang Geely Holding Group)傘下で商用車を手がける「遠程新能源商用車(Farizon new energy commercial vehicle)」が設立した。出資には多くの戦略的投資家が参加し、調達額は1億3500万ドル(約210億円)、評価額は15億ドル(約2300億円)以上になった。 調達した資金は主に市場開拓とメタノール水素のエコシステム開発に活用する。

醇氫科技は2022年11月に設立され、メタノール水素電気システムを中心に、次世代のメタノール水素電気自動車の開発、製造、販売を手がけるほか、新しいグリーンメタノール製造技術の開発、実用化を進めている。

メタノール水素電気自動車はレンジエクステンダー付きの電気自動車(EV)で、メタノールを燃料とするエンジンとバッテリー技術を組み合わせたものだ。メタノールを液体水素として使い、従来の水素燃料電池システムに代わって直接発電と電力供給ができるため、ピュアEVに比べ経済的で充電時間も短い。

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醇氫科技は、内モンゴル自治区の阿拉善(アルシャー)で年産50万トンのグリーンメタノール製造拠点の建設に参加し、2024年10月に年産10万トンの第1期モデルプロジェクトが正式にスタートした。 水電気分解による50万トン級の水素製造プロジェクトと、産業排ガスから回収した二酸化炭素をグリーンメタノールに合成するプロジェクトを合わせた中国初の取り組みだ。大規模なグリーン電力消費と二酸化炭素の排出削減が期待でき、プロジェクトが50万トンの生産目標に達すれば、年間75万トンの温室効果ガスの排出削減が見込まれる。

中国は世界最大のメタノール生産国で、世界のメタノール生産能力の60%を占めている。 中国石油・化学工業連合会(CPCIF)のアルコール・エーテル燃料・クリーン自動車専門委員会の統計によると、中国におけるメタノール燃料自動車の販売台数は2022年に13万7000台に達し、保有台数は合計50万5000台に上っている。

メタノール車の技術は一定の進歩を遂げたとはいえ、技術的なボトルネックはまだ残っている。 また、市場におけるメタノール車の認知度はまだ低く、受け入れは進んでいない。 インフラ建設の面では、国や地方政府が積極的に推進しているものの、ガソリンスタンドやEV充電スタンドに比べるとメタノールステーションの数やカバー範囲はまだ限定的だ。 このため、メタノール車の普及や利用はなかなか進んでいない。

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しかし、メタノール車には大きな発展の見込みがあると考えられている。 特にタクシーやバスなどの運行車両では、低コストで環境性能に優れているメタノール車がさらに市場を拡大するポテンシャルを秘めている。メタノール水素電気自動車は中国北部の極寒地域に特に適しており、通常のEVのように冬季にバッテリー性能が大幅に低下することがない点は特筆に値する。 昨年5月、中国東北地方の遼寧省瀋陽市政府は遠程新能源商用車と戦略協力協定に署名し、メタノール水素エコシステムを中核として、新エネ車とメタノール水素電気自動車の推進における長期的な戦略的パートナーシップを締結した。

現在、遠程新能源商用車はメタノール水素電気大型トラック、小型トラック、バスなどの製品を発売しており、1月5日には第9回アジア冬季競技大会の公式パートナーとして、大会中にメタノール水素電気自動車を使った移動サービスを提供すると発表した。 これに先立ち、吉利汽車は2025年中に世界初の次世代型メタノール・電気ハイブリッド技術を搭載した新製品として、セダンタイプとスポーツタイプ多目的車(SUV)を1台ずつ発表すると明らかにしていた。

*1ドル=約156円で計算しています。

(36Kr Japan編集部)

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