疾病リスクを可視化する”医療AI”、保険業界で活用広がる 中国「每因智能」、シードで約2億円を調達

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人工知能(AI)技術を疾病リスクの予測に活用する中国スタートアップ「杭州每因智能科技(以下、每因智能)」がこのほど、シードラウンドで約1000万元(約2億円)を調達した。卓源亜洲(G&O Capital)などが出資を主導し、杭州西湖区科創股権投資も参加した。資金は、疾病リスクの予測に特化した医療用AIモデルおよびコアプロダクトの研究開発、商用化に充てられる。

每因智能は北京大学サイエンスパークから生まれた企業で、重大疾病予測プラットフォームと疾病リスク管理用AIエージェントをコアプロダクトとし、重い疾患や慢性疾患のリスクを抱える人々向けに、AIを活用した保険と疾病リスク管理ソリューションを提供する。独自開発した大規模言語モデル「DP-LLM」はさまざまな形式の医療データをサポートし、個人の疾病リスクを定量的に評価できる。現段階で対応可能な疾病は数百種類、リスク因子は1万以上に上る。

創業者で最高経営責任者(CEO)の郭瀟宇氏によると、DP-LLMは個人の健康に関する時系列データをベースとし、将来の健康状態や疾患の進行を予測する能力を備えているという。郭CEOは「中国の中長期国家計画『健康中国2030』の綱要では早期診断・早期治療・早期回復が戦略的テーマに掲げられており、医療業界では個人に合わせた治療と的確な健康管理がトレンドになっている」と語る。

これまでは高品質なデータや正確な疾病リスク評価モデルがなかったため、大多数の保険商品には厳格な告知義務と免責条項が設けられ、既往症のある多くの人々が補償の範囲から漏れていた。郭CEOは「当社の医療用AIモデルは、被保険者と補償項目をより細かく分類できる。疾病リスクの高い人も補償を受けられるようになる可能性があり、健康な人はより良い補償を期待できるようになる」と説明した。

每因智能は、優れた着想で独自のAIモデルを微調整していった。まず、個人の疾病リスクを正確に分析できるよう、大量の医学文献をもとに対照研究を進め、リスク因子の増加によって疾病のリスク値がどれだけ上昇するかなど、特定のリスク因子と疾病との関連性を数値化した。また、疫学的調査のデータをもとに、特定の指標と一定期間内の疾病発症率との関連を経過観察した。

さらに、リスク因子と疾病との関連性についてのナレッジグラフを構築し、微調整したモデルと連携させることで、医療用AIのハルシネーション(幻覚)の発生率を低減させたという。同社は政府の関連部門や医療機関と連携し、実際の臨床データをAIモデルの検証や正確性向上に役立てている。郭CEOは「医療機関や医師向けだけでは医療用AI市場を広げるのは難しい」とした上で、医療用AIでより大きな価値を生み出すには、個人と直接的なつながりを持たせる必要があるとの考えを示した。

現在のところ、每因智能は商業保険の支払い制度を切り口に政府関連部門や大手保険会社と連携し、医療用AIモデルで医療保険商品に付加価値を与えている。法人向けの技術サービス料、消費者向けサブスクリプションおよびリスク分担モデルを通じて収益化を促進すると同時に、消費者へのアプローチを強化している。郭CEOは「医療用AIの未来は消費者向けサービスにある」との考えから、今後はより多くの健康管理関連プロダクトを開発していく方針だという。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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