中国のAIバブルが生む“建設特需”⋯データセンターで荒稼ぐ人々

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中国でAIの産業化が拡大する中、AI学習・訓練と推論に特化したデータセンターが中国全土で建設されている。この“建設ラッシュ”に目をつけた投機家たちが集まり、補助金をめぐる争奪戦が繰り広げられていると、中国のテック系シンクタンクメディア「甲子光年」は報じている。

2023年以降、大規模言語モデル(LLM)が次々と登場し、特に3月のGPT-4の登場でAI処理のニーズが急激に高まった。その矢先の同年4月に米国がNVIDIA製ハードウェアの中国への販売禁止を発表する。発表後の販売禁止まで1カ月だけ猶予があり、その間に中国から大量のNVIDIA製ビデオカードや搭載ハードウェアの注文があった。買えるうちに買ってAIデータセンターを建設しようという動きが加速した。

補助金、融資、そして“荒稼ぎ”

各地方政府はAIデータセンター建設の目標指標を公開し、投機家はSI(システムインテグレーション)業者と提携し、補助金獲得を狙った予算案を提出。地方政府はトレンドのAIデータセンターを早く建設しようと承認を進めるが、技術に詳しくない地方政府の担当者が、内容を精査せずに建物や土地まで提供してしまうケースもある。また、10億元(約200億円)を超える建設費用のうち、補助金だけでは足りず銀行融資に頼る例も増えた。こうした銀行もまた、投機家のターゲットになっている。

さて、ここからが投機家とSI業者の稼ぎどころだ。建設予算を準備したら、実際には安価なパーツなどを活用し、費用を浮かせて利益を懐に入れるという手法が横行した。

2024年、GPT-4oやOpenAI o1などのモデルのリリースとAIアプリケーションの本格的な普及により、AIモデルの主なテーマは学習・訓練から推論へと移行し始め、推論に使用されるコスト効率の高いNVIDIAのGeForce RTX 4090搭載製品が人気となった。あるサーバーメーカーのテクニカル責任者によれば、 そこで稼ごうとするSI業者は、新品ではなく中古パーツや、改造業者によってオーバースペックとなったNVIDIA製の安価なパーツを集め、また専門の業者による保証込みの完成品を購入せず、自前で組み立てる手法で、余った金を懐にいれるという手法をとっている、という。実際2024年の後半には、テック系の企業や個人やゲーマーからNVIDIA製GeForce 4090を低価格で買い取り、高速化の改造を施した後、AIデータセンターのSI企業や国営企業に高価格で転売する動きがあった。

また中国政府は国産チップを振興していることから、これを導入すると返済猶予を伸ばしたり返済不要になっていたりするケースがある。そこで地方政府は、NVIDIA製ハイエンドGPUは高いからと、ファーウェイなどの中国製ハードウェアとNVIDIA製ハードウェアを混ぜた構成を提案し承認を取得。投機家は国の支援が得られそうな中国製パーツを多く含む構成案を提示し地方政府から承認を受けて、実際はNVIDIA製の安価なパーツで揃えた上で、中国製はちょっとだけ導入、あるいは外側の箱だけを用意して納品する。もはや中国製品をダミーとした捏造だが、地方政府に詳しい人がいないためお咎めはない。

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“過剰設備”の転用

投機家のAIデータセンターでの荒稼ぎは建設プロセスだけでは終わらない。中国全土でAIデータセンターが過剰に建設された結果、地方政府は処理能力が使い切れずそれをまた投機家に安価で貸し出す。そこで一部の投機家は有り余るコンピューティングパワーをAleoなどの仮想通貨のマイニングに向けた。2024年4月当時、Aleoが密かに人気を博し、2024年9月に上場すればこのとき大儲けできると言われていた。そこでAIデータセンターができていたら、顧客がいれば顧客に貸し出し、顧客がいなければマイニングでひと稼ぎしようとする投機家が受け入れるケースがあったわけだ。

改造を行い、本来以上のパフォーマンスを出す中古パーツを、マイニングによる過負荷の状態で24時間稼働し続けるのでそう遠くないうちにガタがくる。それでも投資家は金が懐に入ればよく、地方政府内部にも詳しい人がいないので異常が発生しても気付かない。

その先にこんな話もある。一部の投機家はさらに、中国でトレンドの再生可能エネルギー関連である太陽光発電や風力発電の建設承認をとりつける。本来承認が厳しい太陽光発電や風力発電設備の建設も、「AI施設への電力供給」を名目に認可される。こうして太陽光発電所なり風力発電所なりを建設すれば、発電した電気は国の電力網に売電し、新たな収入源として確保できる。

このように、生成AIブームはグラフィックカードや中国製チップだけでなく、仮想通貨、再生可能エネルギーまでも巻き込み、投機家が政府や銀行を巻き込んだ“投機ゴールドラッシュ”と化していた。ただその“ボーナスタイム”は既に終わりつつある。市場は飽和し、AIデータセンター建設の熱は冷めているのだ。

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(文:山谷剛史)

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