精密ガラスで海外依存を打破 中国・鉄錨科技、NEVやeVTOL向けにも供給強化

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精密加工ガラスを手がける中国企業「鉄錨科技(TM Technology)」がこのほど、シリーズCで深圳市創新投資集団(SCGC)新材料基金から数億元(数十億円超)を調達した。調達した資金は、ハイテク製品ラインの展開およびコア技術をめぐる課題解決に充て、国産切り替えの重点とされている航空分野や透明セラミックスなどに注力する方針だという。

鉄錨科技は1984年に創業。中国初の国産ハイエンド機器向け透明安全部品メーカーとして、自動車・軌道交通・航空機・船舶向けの安全ガラスや特殊ガラスを手がけてきた。主な顧客には、上海汽車集団(SAIC)や広州汽車集団(GAC)、中国中車(CRRC)、今創集団(KTK)、康尼機電(Kangni Mechanical&Electrical)など大手企業が並ぶ。2024年の売上高は20億元(約400億円)を超えた。

高速鉄道向け製品(画像提供:鉄錨科技)

航空宇宙や先端医療、軌道交通などに使用される透明部品は、多層複合構造と特殊な材料技術を用いてガラスを精密加工し、過酷な条件下でも性能を維持できるようにする必要があるため、開発難易度が高い。

世界の主な工業先進国では、ガラス生産量に占める精密加工ガラスの割合が8割を超えている。しかし、中国では4割前後と世界平均の6割を下回り、依然として輸出に頼らざるを得ない状況が続いているため、高精度ガラスの国産化推進が喫緊の課題となっている。

鉄錨科技は2006年に次世代高速列車のフロントガラスの開発を受注。さまざまな速度に対応するガラス製品を打ち出し、それまで海外依存だった市場構造を打破した。現在、中国の軌道交通市場でトップシェアを獲得しており、売上高と純利益ともに着実に拡大している。高速鉄道向けのフロントガラスではシェア約7割、側窓のガラスではシェア約5割を誇る。2017年に世界最速の営業速度を達成した高速鉄道車両「CR400」の主要サプライヤーでもある。

軌道交通向け製品はドイツやフランス、米国、オーストラリア、韓国、ブラジルなど20カ国以上に輸出されるなど海外展開も順調で、鉄道車両大手の独シーメンスや仏アルストムの主要サプライヤーとなっている。

民間航空分野でも国内トップで、国有旅客機メーカー・中国商用飛機(COMAC)の中型機「C919」や小型機「ARJ」など、国産航空機向けガラスの開発・製造に参画。現在はCOMACのバードストライク試験基地に指定されている。

旅客機「C919」に窓ガラス提供

このほか、低熱伝導・高透光性を持つ独自の船舶用ガラスの販売も拡大している。また、新エネルギー車(NEV)産業の急成長に伴い、自動車向けガラスの軽量化やスマート化が求められており、音響・光学・電子技術を一体化したガラスが同社の成長分野になるとみられる。

さらに、eVTOL(電動垂直離着陸機)企業とも複数の協業関係を構築。機体軽量化のカギとなる高性能な透明部材の開発・設計技術を提供しており、低空経済の拡大とともに、eVTOL業界の主要サプライヤーとなる可能性が高い。

今後は透明新材料の市場投入や、航空機座席の国内生産・グローバル販売を進めていく。自社開発した透明YAGセラミックスは、2024年に1.2m×0.8mスケールでの生産を実現し、世界の透明セラミックス材料で過去最大を更新した。

生産体制の面では、鉄錨科技は総面積50万平方メートルの標準化工場を保有し、年間1500万平方メートルの安全ガラスおよび関連部材の生産能力を備えている。年間生産額は最大40億元(約800億円)に達する見込みだ。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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