深圳発の電動短距離航空機(eSTOL)、低コストを武器に海外農業市場を開拓

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スマート電動航空機を開発する「深圳市空天探索科技」(以下、空天探索)がこのほど、シードラウンドで中国の著名アクセラレータ・奇績創壇(MiraclePlus)から数百万元(数千万円)を調達した。資金は初号機「L400」の開発に用いられる。

空天探索は2024年8月に設立され、中型航空機の電動化・スマート化に注力。まずは農業分野からスタートし、段階的にほかの分野へと拡大する戦略を掲げている。大規模農場向けの電動短距離離着陸機(eSTOL)「L400」はすでに設計を完了しており、7月末には組み立てを完了してラインオフを予定している。

初号機のeSTOL「L400」

大規模農場のニーズに照準

農業用小型無人機(ドローン)は、農業機械や人手に頼った従来の散布方法に比べ、人件費や水・農薬の使用量を大幅に削減し、防除作業のコストを抑えることができる。

現在売れ筋のマルチローター型ドローンは中小規模の農地に最適だが、大規模農場では移動距離が長くなるため、効率面では従来の農業用航空機に及ばない。その農業用航空機も、運用コストや使用ハードルが高く、農薬のロスが多いほか、夜間作業が難しいなどの欠点を抱えている。大規模農場では、農業用航空機並みの作業効率と、ドローン並みのコストや手軽さを併せ持つ新たなソリューションが求められている。

空天探索は、1万ムー(約667ヘクタール)を超える大規模農場のニーズに応えるべく、固定翼を備えた無人機L400をリリースした。最大離陸重量は850kg、離着陸に必要な距離はわずか150mで、農村の未舗装道路や草地、簡易舗装道路でも運用できる。同社のテストデータによると、L400は競合製品に比べて離陸距離が60%短縮し、積載能力は20%高まった。また、部品コストは30%、運営コストも全体で40%低減し、作業効率は15%向上した。

短距離で効率的な離着陸を実現するのは、独自開発した分散型電動推進システムの力による。高電圧を利用したこの推進システムは、冗長設計とAIアルゴリズムの最適化により、安全性を向上させながら、システムの部材コストやメンテナンスコストを大幅に削減できる。

また、同社が開発したeSTOL用飛行制御システムには、車載規格のチップやモジュール型アルゴリズム、自動運転向けのソフトウエアアーキテクチャなど、自動車分野の技術が数多く導入されている。これは将来的な有人機の開発に向けた布石ともなっている。

海外市場を主軸に展開

空天探索は事業化を進めるにあたり、海外市場を主軸とするビジネス戦略を採用している。海外には1万ムー超の大規模農場が中国国内よりも圧倒的に多く、農業の機械化も進んでいることがその理由だ。。

海外市場では大きなニーズが見込まれる一方で、空天探索の競合となる企業は限られているという。米航空機メーカーのエア・トラクターの製品は1970年代に設計された大型機で、スマート機能は搭載されておらず、L400とは技術的に大きな隔たりがあると空天探索は指摘する。また、米スタートアップのPykaはスマート機能を搭載した固定翼の電動無人機を開発しているが、L400は中国のサプライチェーンを活用しており、コスト面で優位性を持つ。

すでに、ロシアやオーストラリア、中央アジア、米国など複数の海外顧客が、L400購入の意向を示しているという。

同社は、9月にL400の初飛行を予定しており、年内には製品の最終調整を終えて、2026年の量産と本格的な運用に向けて準備を進める方針を明らかにしている。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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