心腔内エコー用カテーテルの中国スタートアップ、臨床でリアルタイム3D画像の取得に成功

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心腔内エコー(ICE)用カテーテルの開発を手がける「霆升科技(Tingsn Technology)」がこのほど、追加のシリーズBで約1億元(約20億円)を調達した。出資は倚鋒資本(Efung Capital)が主導し、既存株主の啓明創投(Qiming Venture Partners)や黄埔医薬基金も参加。同社は調達した資金で心腔内リアルタイム3次元エコー(4D ICE)用カテーテルの研究開発と臨床試験を進め、量産化のベースを築く予定だ。

同社は2019年に設立され、ICEの画像取得(イメージング)技術を手がけている。ICEは、血管から心腔内へカテーテルを挿入して超音波信号を送受信することで、皮膚や胸郭などによる干渉を避けながら、リアルタイムでイメージングする技術だ。ICEはすでに、不整脈や構造的心疾患のインターベンション治療などに導入されている。

ICE用カテーテル市場は長らく、米ジョンソン・エンド・ジョンソンや独シーメンスなどの海外ブランドが独占してきた。中国ではここ数年、国内企業が研究開発を加速させており、2次元のイメージングが可能な2D ICE用カテーテルでは、メーカー4社の計7製品が国家薬品監督管理局(NMPA)に承認されている。うち4製品は霆升科技が開発したものだ。

霆升科技は、向こう1〜2年で2D ICE用カテーテル市場に参入する中国メーカーが増えると予測する。ただ、国内の事業環境や政策、臨床での使用頻度などを踏まえると、早期に参入したメーカーだけで市場シェアの85%以上を占める可能性があるという。

一方、技術的なハードルが高い4D ICE用カテーテルは、医師がリアルタイムの3Dエコー画像を見ながら迅速に位置決めをしやすくなるうえ、合併症リスクの低減や手術の安全性向上につながる。また、2D ICE用カテーテルが対応していない複数の手術で、正確なイメージングが可能になる。海外ではここ数年、電気生理学的検査や構造的心疾患治療の補助装置として相次いで承認されている。

同社は4D ICE用カテーテルについて、特定用途向け半導体(ASIC)の開発や超音波トランスデューサーの設計、専用チップのテープアウトなどが技術的なハードルになると説明した。また、規格を満たすASICを完成させるには、最低でも3回以上のテープアウトが必要になるが、ASICの設計からテープアウトまでにかかるコストは1回当たり1000万元近く(約2億円)に上るという。

しかし、ASICのテープアウトはスタート地点に過ぎず、製品化を実現するには、ASICを採用したアレイトランスデューサーの精密な組み立てなどを可能にする生産システムを構築する必要がある。

同社によると、ハイエンドなトランスデューサーの生産システムを構築するには、少なくとも5000万元(約10億円)かかるうえ、製品や材料に通じた専門人材の確保も必要だ。4D ICEで解像度の高いイメージングを実現するためには、カテーテルヘッドだけでなく、超音波診断装置と連動した製品開発を進めなければならない。中国では今のところ、ASICに対応可能な4D超音波診断装置は極めて少なく、技術的に対応できるのは1〜2社にとどまるという。

こうした中、同社は今年4月末に4D ICE用カテーテルの臨床試験に成功した。

今回の資金調達でアドバイザーを務めた星橋資本(Poseidon Hill Capital)の責任者・郭恺氏は、霆升科技がICE用カテーテルの中国トップメーカーとして、2Dから4Dへと製品をアップグレードしているほか、中国初の国産トランスデューサーを独自に開発・生産し、ASICのテープアウトを実現したと評価。創業7年間で中国初となる成果を何度もあげて、中国製品への切り替えに大きく貢献しており、非常に大きな成長の可能性を秘めているとの見方を示した。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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