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「人型ロボットはダンスと宙返りのほかに何ができるのか?」
人型ロボットメーカー「銀河通用機器人(Galbot)」を創業し、北京大学で准教授も務める王鶴CTOは、ある中国人投資家の問いに最も的確に答えられる人物かもしれない。
Galbotは中国におけるエンボディドAI(身体性を備えた人工知能)分野のユニコーン企業であり、最近車載電池大手の寧徳時代(CATL)などから11億元(約220億円)を調達した。この分野では2025年最大規模の資金調達となる。
GalbotはエンボディドAI分野のトップ企業のなかでも、特にロボットの「頭脳」にあたるAI開発に注力している。2023年5月の設立以来、同社が製造したロボット本体はホイール式の「Galbot G1」のみだが、ロボット用AIモデルは数多くリリースしている。リソースと資金の大部分をAIモデルの研究開発に投じ、ロボットの汎用性と汎化能力の向上に取り組んできた。また、自社開発した合成データ技術によって、モデル訓練のコストを大幅に削減している点も特徴だ。
王CTOは、今後ロボット用AIモデルの性能向上が、人型ロボットの価値を左右すると強調する。すでに市場では価格競争が始まりつつあり、そのなかでAIの進化こそが差別化の鍵だと語る。
とはいえ、現状は想像以上に保守的だ。
王は、「多くの企業が一気にエンボディドAGI(汎用人工知能)を実現させたいと考えているが、それには賛同できない」と王氏が述べる。「AIモデルにはまだ未完成の部分が多く、あらゆることができるようになるには5〜10年ほどの時間がかかる。これまで多くの研究成果は出てきたが、量産可能な製品はまだ実現していない」と冷静に現状を見つめている。
中国でエンボディドAI開発に取り組む多くの企業は、身体能力を見せることに必死になり、「衣類をたたむ」「ひげをそる」「ファスナーを開け閉めする」といった複雑な動きのデモ動画を作って、AIモデルの汎化能力を紹介している。ところがGalbotは、「移動」と「ピックアンドプレース(つかむ・置く)」といった、より基本的かつ実用性の高い動作に集中している。
王CTOは、Galbotはハンガーに衣類を掛ける動きの研究にも取り組んでいるが、こうした複雑な動きは研究成果のひとつにすぎず、製品化にはほど遠いと述べた。
ロボット用AIモデルでは今のところ、移動とピックアンドプレースという比較的簡単な動きが実用化に最も近い。Galbotはこうした能力を、まずドラッグストアや小売店などで実用化することに注力している。
同社はパートナー企業と協力し、世界初の人型ロボットによるスマート販売ソリューションを開発。すでに北京市内で、ロボットによる24時間無人運営の薬局を約10店舗展開している。店頭のロボットは薬を正確に選び、宅配ドライバーに手渡すという作業をこなす。
今年、北京市や上海市、広東省深圳市などで無人販売薬局を100店オープンさせる計画で、売上高は1億元(約20億円)近くを見込んでいる。
また、最近開催されたAI関連の学術会議の開幕式では、Galbotの人型ロボットがメインフォーラムの舞台に登場。ロボットは音声指示に従い、自律的かつ正確に移動して棚から飲料を取り出したというデモンストレーションを披露した。棚から商品を取り出して渡すという一連の複雑な動きすべてを自律的に完了し、リモートコントロールや事前のデータセット準備は一切不要だった。
王CTOは、うしたシンプルな動作を自律的にこなせるようになったこと自体が、AIロボットにとって歴史的なマイルストーンだと見ている。今後、技術が成熟すれば数千億元(数兆円)規模の市場が開拓されると見込まれ、小売りや配送拠点、自動車組立工場など多くのシーンで人間の重労働をサポートするようになるという。
*1元=約20円で計算しています
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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