ゴミ由来の航空燃料を年内量産 中国クリーンテック「生産効率、他社の2倍」

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都市ごみなどの廃棄物を原料に、航空燃料を製造する中国のクリーンテック企業「緑碳合成能源(Green Synenergy)」がこのほど、プレシリーズAで約1億元(約20億円)規模の資金調達を実施した。熔拓資本(Roton Capital)が出資を主導し、徳聯資本(Delian Capital)と既存株主の線性資本(Linear Capital)も参加した。資金は自社工場の建設や運転資金の補填などに活用される予定だ。

緑碳合成能源は2023年7月設立。独自開発のフィッシャー・トロプシュ(FT)合成技術を活用し、農林業系廃棄物や都市ごみなどを原料とする「持続可能な航空燃料(SAF)」をはじめ、環境に配慮した燃料や産業用原料の製造に注力している。

技術検証を完了、工場建設中

創業者で最高経営責任者(CEO)の肖立峰博士は、世界有数のナノ触媒研究所に勤務した経歴を持つ。同社は新しいFT法によるSAF製造プロセスの技術検証を終え、初の自社工場の建設を進めているところだ。

緑碳合成能源の製品(FTワックス、軽油)
緑碳合成能源の製品(FTワックス)

2020年前後から、欧州連合(EU)や米国は航空業界の二酸化炭素排出削減を国家戦略に位置づけ、2030年および50年までに達成すべきSAF利用率や生産目標を設定し、補助金や税金控除などの政策を通じてSAF産業の発展を後押ししてきた。航空大手各社はSAFの大量調達を開始し、30年までにSAF使用率を10~30%に引き上げる計画を掲げている。これに伴い、フィンランドのNesteなどSAFを手がける海外企業が生産能力の拡大に乗り出している。

肖博士は、中国のSAF市場が近いうちに必ず急成長すると見込み、技術基盤や市場がまだ整っていなかった中国に戻って、起業することを決めたという。

製造プロセスを独自開発

創業当初、同社はFT法をはじめ、脂肪酸エステルを水素化処理するHEFA法、アルコールを原料としたATJ法など主な技術を比較したうえで、独自開発のFT法によるSAF製造プロセスを確立した。

当時、FT法はまだ実証段階にあったが、原料となる農業廃棄物の供給が十分見込めるうえにコストも低いことから、最も将来性が高いと肖博士は判断した。FT法は技術面で大きな課題があるものの、同技術を手がける企業は世界的にも少なく、各社ほぼ横一線の状態だった。

しかしそれから2年もたたないうちに、緑碳合成能源はFT法によるSAF製造プロセスの独自開発に成功。従来のFT法をベースに触媒やプロセスを改良することで、100%国産化したコア技術を確立した。肖博士は「技術力でいえば、当社の触媒性能やプロセスは世界トップクラスであり、中温中圧条件での収率は他社の1.5~2倍に達する。中国のサプライチェーンを活用できるため、コスト面でも大きな強みを持つ」と胸を張る。

国内線でSAFを1%混合

中国では2024年9月にSAFの試験導入が始まり、政策面での支援が加速した。25年3月からは第2段階として、北京大興国際空港、成都双流国際空港、鄭州新鄭国際空港、寧波櫟社国際空港の4空港で、国内線に対し1%のSAFを混合する給油体制が採用された。世界的な流れと同様、中国市場でもSAFの需要が急速に高まっているが、供給が追いつかない状況にある。

生産能力を拡大するため、緑碳合成能源は内モンゴル自治区で自社工場の建設を進めている。原料となる農林業系廃棄物が豊富な地域のため、SAF製造コストのさらなる削減も期待できる。工場は年内に稼働し、年間数千トンのSAFを生産できるようになる。その後は、新たな資金調達を実施して、年産数万トン規模の新工場の建設に取りかかる計画だ。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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