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オフィスソフトと関連サービスを手がける「金山弁公軟件(Kingsoft Office Software)」が18日、上海の新興ハイテク企業向け市場「科創板(スター・マーケット)」に上場した。公募価格は45.86元(約710円)で、初値は140元(約2160円)をつけ、取引初日の終値は126.35元(約1950円)、時価総額は612億9000万元(約9500億円)となった。同社は香港市場に上場している親会社のキングソフト(金山軟件)、スマートフォン大手のシャオミ(小米科技)に続き、雷軍氏が実質的支配者となる上場企業3社の一角に加わった。雷軍氏はキングソフトの董事長であり、自ら創業したシャオミの董事長兼CEOを務める人物だ。
金山弁公軟件は今回の上場によって44億5900万元(約700億円)を調達し、これを主力製品である総合オフィスソフト「WPS Office」のアップグレードや、オフィス用AIの基礎研究・開発センターの建設、オフィス用製品のクラウドサービス、オフィスソフトのグローバル化に充てる。
同社は主にWPS Officeの開発、関連サービスおよびマーケティングを手がけている。他に電子辞書「金山詞覇(PowerWord)」なども開発しており、いずれもWindows、Linux、MacOS、Android、iOSに対応する。サービスに関しては、自社製品関連サービス、ドキュメント関連の付加価値サービス、広告配信サービスを主に提供している。
IPO目論見書によると、主力製品の月間アクティブユーザー(MAU)は今年3月時点で3億2800万を突破。WPS Officeデスクトップ版のMAUが1億3200万、同モバイル版のMAUは1億8700万、金山詞覇など他製品のMAUが約1000万となっている。WPS Officeモバイル版は220の国・地域に提供されている。
同社は企業・政府機関などにも幅広く顧客を有する。法人顧客の業種は金融、エネルギー、航空、医療、教育などに及び、個別にカスタマイズした製品およびサービスを提供する。自治体関連では30の省・市・自治区、400以上の市・県にサービスを提供している。世界企業番付「フォーチュン・グローバル500」にランクインする中国企業の57.5%、中央企業(政府が管理する国有企業)の91.7%、国内大手銀行などが同社の製品を導入している。
WPS officeは海外でもMAUが8000万に達しており、GooglePlayなどのアプリストアではダウンロード数上位を占める存在だ。
同社の売上高は2016年が5億4300万元(約80億円)、2017年が7億5300万元(約120億円)、2018年が11億3000万元(約170億円)、2019年第1四半期が2億8400万元(約44億円)で、親会社の所有者に帰属する純利益は2016年が1億3000万元(約20億円)、2017年が2億1400万元(約33億円)、2018年が3億1200万元(約48億円)、2019年第1四半期が4800万元(約7億4000万円)だ。
「技術“立社”」――これは上場前説明会で最も多く飛び交った同社の理念だ。親会社キングソフトを率いる雷軍氏は、「キングソフトはプログラマー文化が根付き、テクノロジーが成長をけん引する企業だ」と述べている。
目論見書によると、金山弁公軟件は過去3年、売上高の35%以上を研究開発費に充てている。同社董事長兼CEOの葛珂氏は「クラウドとAIが成長の需要ポイントになる」と述べ、「モバイルインターネット時代にはクラウドが必携になる。クラウドは多数の端末、多数のデバイスをつなぎ、人と人との協業も推し進める。一方でAIは人とデータの連携を担う。金山弁公軟件のAIは翻訳も含めた自然言語処理に特化していく」としている。
金山弁公軟件の主な収益源は、オフィスソフトの使用ライセンス料、オフィス関連サービスの定額利用料およびインターネット広告配信サービスの三つだ。葛珂氏によると、今後は将来的に大きな成長が見込める定額サービス(個人・法人向け)を最重要視していく方針だという。
オフィスソフト業界では今後、モバイルオフィス、クロスプラットフォーム、シェアクラウド、共同編集といった分野が焦点になってくる。テンセント、アリババ、バイトダンスなどのテックジャイアントも同分野に参画している状況について、葛珂氏は「競争でも協業でもあるが、競合する部分は少なく、大部分は協業になるだろう」としている。
金山弁公軟件の上場当日、雷軍氏は同じくキングソフト傘下の「金山雲(Kingsoft Cloud)」をスピンオフして上場させる計画があることを明らかにした。
(翻訳・愛玉)
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