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中国テクノロジー大手のアリババグループは、9月24~26日に年次テックイベント「雲栖大会(Apsara Conference)2025」を浙江省杭州市で開催した。呉泳銘(エディ・ウー)CEOは開幕式に登壇し、「人工超知能(ASI)への道」というテーマで講演した。
昨年の雲栖大会で呉CEOは「生成AIの最大の可能性は、スマホのスーパーアプリを作ることではなく、デジタル世界を支配し、物理世界を変えることだ」と語った。1年が経過し、その構想はより明確なロードマップとなり、具体的なアクションとして動き出している。
今大会では、アリババクラウドから新たなAIモデルが複数発表された。なかでも、大規模言語モデル(LLM)「通義千問(Qwen)」シリーズのフラッグシップモデル「Qwen3-Max」は、シリーズ最高の性能を誇り、GPT-5やClaude Opus 4といった最新AIモデルを上回るパフォーマンスを実現。AIモデル評価サイトのLMArenaでは世界トップ3入りを果たした。
フラッグシップLLMのほかに発表されたAIモデルは、次世代基盤モデルアーキテクチャ「Qwen3-Next」とその関連モデル、コーディングモデル「Qwen3-Coder」、視覚言語モデル「Qwen3-VL」、マルチモーダルモデル「Qwen3-Omni」、視覚基盤モデル「Wan2.5-preview」、音声認識・合成モデル「Fun」シリーズの6つ。
さらに注目すべきは、呉CEOが新たに打ち出した2つの大胆な見解だ。
1つ目は「LLMこそが次世代のOSである」というもの。LLMは従来のソフトウエアを取り込み、誰もが自然言語で無限にアプリを生み出せるようになる。将来的に、デジタル世界と関わるほとんどのソフトウエアは、LLMが生成するエージェントに切り替わると予測する。
その考えを踏まえた2つ目の見解が「ASIクラウドが次世代のコンピューターになる」というものだ。AI時代には自然言語がプログラミング言語となり、エージェントがソフトウエアに取って代わり、コンテキスト(文脈情報)がメモリーの役割を担うようになる。呉CEOはLLMがユーザー・ソフト・AI演算リソースのやり取りを仲介する中間層となり、AI時代のOSとして機能すると見込む。
アリババが目指すのは、世界中に演算リソースのネットワークを提供する「ASIクラウド」の構築だ。今年2月には、AIインフラ建設のため今後3年間で3800億元(約7兆9000億円)を投じる計画を明らかにしたが、今回はさらに新たな計画が発表された。ASI時代の到来に備え、2032年までにアリババクラウドのデータセンターの消費電力を2022年の10倍に引き上げるというものだ。
また今回、アリババクラウドのAI発展戦略と目標が初めて明確に打ち出された。ASIを実現するためのロードマップとして、呉CEOは以下の3つのステップを挙げる。
1)「知能の創発」:AIが人類の知識を学習することで汎化能力を獲得し、徐々に推論能力を高めていく。
2)「自律的行動」:AIがツールの活用やプログラミング能力を習得し、人の業務をサポートできるようになる。業界は今この段階にある。
3)「自己進化」:AIが物理世界の膨大な生データをもとに自律学習を行い、最終的に「人類を越える知能」を実現する。
市場ではアリババクラウドの新戦略が好意的に受け止められた。9月24日の香港株式市場でアリババ株は一時9%余り値を上げ、2021年10月以来の高値を記録した。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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