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長きにわたり目立った動きのなかった米アップルの自動車製造という大事業にようやく進展がみられた。ニュースチャンネルの米「Fox Business」によると、米国の特許商標庁(USPTO)は先ごろ、アップルの自動車設計に関する特許2件を承認した。
1件目の特許は、ウインドウガラスのコントロールシステムだ。ウインドウガラスに光変調器を備えたレイヤーを設け、ガラスの透過光を制御することによって、車内から外は見えるが外から車内は見えない状態をつくり搭乗者のプライバシーを保護する。搭乗者の視野を確保するために「交流変調波形」によって、車内と車外の両光源により車内の照明を何度も高速制御するが、搭乗者には照明の変化が感知できないようになっている。
2件目は、サイドミラー機能の改善システムだ。自動車の死角となる場所の映像をウインドウガラスやフロントガラスに投影することで運転手の視野を広げる。顔認証の技術を用いて、フロントガラスにカメラを設置し、運転手の顔やその特徴をモニタリングする。
アップルの自動車製造事業計画「プロジェクト・タイタン(Project Titan)」は遅々として進まなかったが、中止されることもなかった。同計画は2015年に着手され、ピーク時には研究開発者5000名を募ったことで、アップルの自動車製造事業に対する世間の注目度が高まると同時に、多数のデザイン図も流出した。しかし、自動車製造の経験に乏しく、ここ数年満足な成果を出せなかったアップルは、完成車の製造から自動運転技術の研究開発へと移行する方針を明らかにしていた。
研究開発の重心が移ったため、プロジェクト・タイタンに関する人事でも動きがあった。今年1月に米CNBCが関係筋の話として、アップルがプロジェクト・タイタンの関係者200人余りを削減したと伝えたことで、アップルの自動車製造事業は行き詰ったとみられていた。だが同社は人員を削減する一方でヘッドハンティングも進め、これまでにテスラやゼネラルモーターズ(GM)、フォード、グーグル傘下の「Waymo(ウェイモ)」といった自動車メーカーから人材を引き抜いている。テスラCEOのイーロン・マスク氏が、アップルを「テスラの人材回収ステーション」と呼んだこともある。
アップルにとっては、自動運転技術の開発は完成車の製造に比べて容易にみえるのかもしれない。
アップルは今も事業提携のチャンスを探り、技術研究開発の資源統合を進めている。今年6月には、バイドゥ(百度)チーフサイエンティストだった呉恩達氏のグループが設立した自動運転技術の「Drive.ai」を買収したほか、最近も車両センサー技術の研究開発を手掛ける企業と交渉中であると報じられた。
海外メディアによると、アップルは技術テストに関し、米カリフォルニア州車両管理局(DMV)から自動運転テストライセンスを取得した。アリゾナ州でも自動運転車のテストを実施したほか、提携相手のフォルクスワーゲン(VW)製のバンでも自動運転技術の開発を進めているという。
アップルは、車載システム「CarPlay」をきっかけに自動車エコシステムに参入し、事業提携という資源を手に入れた。自動運転技術の開発では、自動車メーカーやサプライヤー、自動運転技術企業のモデルチェンジが加速しているため、アップルが試行錯誤できる時間も少なくなっている。
(翻訳・神戸三四郎)
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