中国の都市型農業を支える日本の知見 上海・崇明島で広がる“日中稲作の懸け橋”

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中国の都市型農業を支える日本の知見 上海・崇明島で広がる“日中稲作の懸け橋”

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中国上海市の長江河口に位置する崇明島は最近、稲の収穫が最盛期を迎えた。地元の東禾九谷開心農場で顧問を務める日本人農業専門家の石附健一さん(67)も1年で最も忙しい日々を過ごしている。

水稲栽培の顧問を務めて今年で5年目となる石附さんは新潟県出身。代々農業に携わる家庭に育った。父親が1980年代に日本政府による水稲栽培専門家派遣事業の第1陣として中国に赴き、稲作技術を支援したことがきっかけで、石附さん自身も中国各地の主要な稲作地をくまなく訪れるようになった。中国の農業の急速な発展を見届けるとともに、日本の先進的な栽培理念や設備技術を現地の農家に伝えてきた。

石附さんは2019年、初めて東禾九谷開心農場を訪れた。有機稲作と米の精密加工を主軸に据える農場の方針が自身の理念と一致した。21年には正式に顧問として招へいされ、工場での育苗から田植えや乾燥、貯蔵、加工、販売に至るまで、稲作の全産業チェーン構築を支援している。

稲の生育状況を調べる石附健一さん

23年末には、浙江省杭州市で開催された第4回国際米・食味分析鑑定コンクール国際大会の中国地区決勝戦で、同農場が生産した「越光米(コシヒカリ)」が初出場でクラウン総合部門の金賞を受賞した。翌年末に行われた第5回大会の決勝戦は、同農場が会場となった。

石附さんの橋渡しにより、多くの日本の最新技術や設備が農場にいち早く導入されている。

崇明島のある崇明区は上海市郊外の主要な稲作地域の一つで、作付面積約27万ムー(1万8000ヘクタール)、栽培農家は約1万戸に上る。石附さんは、同市の都市型現代農業モデルは小規模であることや精密化、ブランド化を重んじる点で日本とよく似ていると指摘。農村人口の減少や深刻な高齢化という共通した課題はあるものの、都市型現代農業の優位性も際立っており、大市場に非常に近く、消費者のグリーン(環境配慮型)で良質な農産物需要の高まりが、農業の質的向上をけん引していると語った。

東禾九谷開心農場は同市で早い時期に設立された体験型農場の一つで、水稲栽培・加工と農村観光・レジャーを有機的に融合させている。休日には市中心部に住む多くの親子連れが農場を訪れ、農業体験や稲作文化園の見学、民泊施設やホテルでの宿泊を楽しんでいる。こうした6次産業化の新たな発展モデルは、農産物の販売経路を広げるだけでなく、農場のブランド認知度と影響力も高めている。

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石附さんは、中国の多くの新しい農業技術や経営モデルは日本にとっても参考になると述べ、両国間の懸け橋を築き、農業交流と協力を続け、相互補完的な発展を進めていくことを望んでいると語った。【新華社上海】

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