米メタ社員“孤立”嘆く「会議でも中国語が飛び交う」、シリコンバレーの裏で進む言語と技術の逆転 

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米シリコンバレーのAI業界ではいま、中国語が席巻し、公用語とも言える状態にまで浸透しているようだ。

最近、「priiir」というユーザー名を名乗る米メタ(Meta)の男性社員が、職場向け交流アプリ「Blind」に投稿した「孤立」の訴えが波紋を拡げた。投稿者によると、自分のチーム(マネジメント層を含む)のほとんどが中国人で、日常のコミュニケーションだけでなく正式な会議でも中国語が頻繁に使われているという。

そのため中国語を話せないpriiirは、業務上の議論や意思決定の場面で「疎外されている」と感じている。さらに、チームメンバーはしばしば中国のチャットアプリ「微信(WeChat)」のプライベートなグループを通じて交流しており、それがいっそう「孤立している」という印象を深めている。

priiirの投稿内容

この投稿は瞬く間に注目を集めた。確かに、メタのチーム構成はここ2年間で大きく変化しており、AI部門の中核チームでは中国人(あるいは華人)の比率が増え続けているためだ。特に今年6月末に「スーパーインテリジェンス研究所(Meta Superintelligence Labs、略称:MSL)」を設立して以降、中国出身のトップAI人材を大量に採用している。

その中には、AIデータサービスを提供する米スケールAIの創業者アレクサンダー・ワン(Alexandr Wang)氏や、ChatGPT開発に関わったOpenAIの元研究員で、大規模言語モデル(LLM)の専門家である趙昇佳(Zhao Shengjia)氏といったテック業界のスターも含まれる。

こうした傾向はメタに限らない。OpenAI、グーグル、、エヌビディア、アンソロピック(Anthropic)といったトップクラスのAIチームにも、中国人研究者の割合が非常に高い。

また、かつてグーグル・クラウドでAI/ML(機械学習)の主任サイエンティストを務め、コンピューターサイエンスが専門のフェイフェイ・リー(李飛飛)スタンフォード大教授のほか、同じスタンフォード大のAIラボでを務める呉恩達(Andrew Ng)准教授など、世界的に著名な中華系の学者たちも業界の最前線で活躍している。

中国のロボット企業「オリオンスター(OrionStar Robotics)」の傅盛会長も最近、シリコンバレーで奇妙な光景を目にしたという。「信じ難い話だが、今メタでAIをやるには、中国語を話せないと中心チームに入れない。会議のときは英語で話すが、終わった途端にみんな中国語でおしゃべりを始める。だから今度は英語を話す『外国人』がポカンとしているんだ」とSNSに動画投稿した。

この発言には多少誇張があるものの、AI分野での中国人コミュニティの技術力と密度が、すでに新たな「中華系AIネットワーク」を形成していることを反映している。

傅盛会長のSNS投稿

「AIが中国語で考える」時代

中華系人材はシリコンバレー、ひいては世界のAIテック業界において無視できない重要な勢力となっている。

さらに皮肉なことに、中国語を話すのは人間だけではない。最近では、米国の人気AIエンジニア向けツールである「カーソル(Cursor)」と「ウィンドサーフ(Windsurf)」が、自社開発を名乗るAIモデルで、中国製LLMに高度に依拠していたことが発覚した。

カーソルは最近、バージョン2.0を発表し、初の自社開発モデル「コンポーザー(Composer)」をリリースした。しかしすぐにユーザーたちは、その「<think></think>」タグ内の思考過程で、中国語で「思考」していることに気づいた。

また、ウィンドサーフのエンジニアはソースコード共有プラットフォームGitHub(ギットハブ)などで、自社モデルが中国名門の清華大学系のAIスタートアップ「智譜AI(Zhipu AI)」のGLM-4.6モデルをベースに微調整や強化学習を行っていることを認めた。
わずか2年前まで、中国のAIモデルは米国を模倣するケースが多かったが、いまや状況は逆転しつつあるようだ。

なぜ、米国のAI開発ツールで「中国のAIモデル」を使い始めたのか?答えはきわめて現実的で、明確だ。「安価で、使い勝手が良く、高性能」だからだという。たとえば、シリコンバレーのベンチャーキャピタル「ソーシャル キャピタル(Social Capital)」の創業者チャマス・パリハピティヤ(Chamath Palihapitiya)氏は「自分のチームは多くのAIによる業務処理を中国AIスタートアップ「月之暗面(Moonshot AI)」の「Kimi K2」に変更した。性能がはるかに優れていて、OpenAIやAnthropicよりもずっと安いからだ」 と述べている。

中国語と数学、AI時代の「生存スキル」?

インターネット上では、こんな冗談めいた声も飛び交う。「これからのシリコンバレーのエンジニアが生き残るには、2つのスキルが必要になる。数学と中国語だ」

世界のAI開発競争の構図は急速に変わりつつある。シリコンバレーのAI業界で中国語話者の浸透が進んでいることの背景には、中国発のAIモデルの影響力が着々と拡大しているという現実を浮き彫りにしている。

文:AI専門プラットフォーム「新智元(Aiera)」

編集・翻訳:36Kr Japan編集部

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