中国、AI医師を「仮想病院」で育成 医療AIの「データ不足」解消へ

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医療用の人工知能(AI)を開発する中国のスタートアップ「紫荆智康(Tairex)」がこのほど、エンジェルラウンドで1億元(約20億円)近くを調達した。出資は星連資本が主導し、英諾天使(InnoAngel)と尚勢資本(Shangshi Fund)も参加。資金は主に、バーチャル病院「Agent Hospital」の開発や改良に充てられる。

紫荆智康は2024年9月に、清華大学智能産業研究院(AIR)のインキュベーションによって設立された。大規模言語モデル(LLM)ベースのAIエージェント技術を使ってバーチャル病院を構築し、医療分野でのAI活用を進めている。

仮想患者50万人でAIを自己進化

同社が構築したバーチャル病院には、人間のように多様な属性を持つ仮想患者が存在する。AIドクター(AI医師)は仮想患者の診察を通じてトレーニングされ、経験に基づき自己進化が可能になる。

従来、医療AIの精度向上には、質の高い臨床データが必須だったが、医療現場でのデータの孤立化が長らく課題となっており、ましてやスタートアップ企業がトレーニング用のサンプルを入手するのは極めて困難だった。

紫荊智康は、この課題を克服するため、LLMと医学知識ベース、少数の実際の症例から仮想患者をトレーニングするという革新的なアプローチを採用した。医学知識ベースに基づき症例に対応する年齢や性別などの基本属性を決め、既往歴、症状、検査結果などを生成した後、LLMや専門家による正確性の検証を経て、仮想患者の症例データが自動的に合成される。AIドクターは仮想患者を診察することでフィードバックを得られる。

同社のバーチャル病院には現在、50万を超えるさまざまな仮想患者が存在し、実データ不足を補っている。また、AIドクターごとに記憶・再認識メカニズムを設計することで、経験をデータライブラリとして蓄積。実験では、仮想患者の多様性が高いほど、診察件数の増加に伴いAIドクターの精度が向上することが確認されている。

その結果、すでに42種類のAIドクターをトレーニングし、国際的な医療データセットMedQAに対する正答率は96%を超え、医師の平均レベルを上回る性能を達成している。

診察の前後を含むす全プロセスに対応

紫荊智康のAIシステムには「患者」「医師」「病院」という3つのインターフェースがあり、診察の前後を含むすべてのプロセスに対応している。

診察前(患者向けアプリ):患者はオンラインで診察を申し込み、チャットボットによる事前問診などが受けられる。

診察中(医師向けワークステーション):医師はワークステーション上で病歴を閲覧でき、問診やカルテ作成の手間を省ける。また、AIドクターが検査や診断などを提案してくれるため、医師は重要な意思決定に集中できる。

診察後(院内システム):医療データは院内システムに保存される。患者は健康診断や検査リポート解説などのサービスを利用できるほか、自身の健康状態が時系列で管理され、アドバイスをもらうこともできる。

「Agent Hospital」は2025年6月30日に正式リリースされ、8月から清華大学医院の外来診療でテスト運用が開始された。年内には他の地域にもテストの範囲を広げ、規模の異なる病院やさまざまな臨床シーンへの対応が進む見通しだ。

同社は今後、難易度の高い症例では実際の臨床に基づくフィードバックを取り入れつつ、仮想トレーニングと臨床現場での検証を両輪駆動で行い、AIエージェントを信頼度の高い医療パートナーにすることを目指す。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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