“宇宙スパコン”でデータ処理。次世代の計算インフラに挑む「中科天算」、30年にGPU1万枚規模へ

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宇宙コンピューティングの基盤技術を開発する中国スタートアップ「中科天算」がこのほど、エンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達した。格物致知私募基金と上海未来産業基金が出資を主導し、梅花創投(Plum Ventures)や奇績創壇(MiraclePlus)も加わった。資金は宇宙コンピューティングの中核技術開発などに充てられる。

これまで人工衛星が収集したデータは、地上のデータセンターに送られ、そこで処理する方式が主流だった。宇宙コンピューティングは、計算リソースを宇宙空間にある人工衛星などに配備し、軌道上でデータを即時処理する新しい仕組みだ。データ伝送の遅延を解消し、災害救助やリモートセンシング、スマートシティなどの分野でリアルタイムの対応を可能にするため、次世代の宇宙インフラとして注目を集めている。

中科天算は2024年6月の設立以来、宇宙空間でのスーパーコンピューティング構築や宇宙向けAIといったコア技術の開発に注力しており、宇宙コンピューティング用のハード・ソフト統合システムや実験・実習用システムの開発、産業エコシステムサービスを展開している。

同社の製品ラインアップは、衛星搭載型AIコンピューター「極光」シリーズと、それに対応するモジュールカード、専用OS、高速計算ライブラリで構成される。

「極光1000」シリーズはすでに複数の衛星に搭載され、軌道上で1000日を超える実証実験に成功している。過酷な環境でも高速通信が可能なVPX規格を採用した「極光2000」シリーズは、すでに開発が完了し、宇宙空間での検証待ちの段階にある。「極光5000」シリーズは、米NVIDIAの高性能チップ「H100」の性能に匹敵する国産GPUを搭載し、2026年にも軌道上検証を実施するという。

中科天算の宇宙コンピューティングプロジェクト「天算計画」

業界の2年先を行く技術力

2025年11月初め、NVIDIAのH100を搭載した衛星「Starcloud-1」が、米宇宙開発企業スペースXによって打ち上げられた。これは宇宙空間にAIデータセンターを設置する人類初の試みだ。検証に成功すれば、AIコンピューティングのリソースが地上だけでなく宇宙からも供給されるようになり、計算能力をめぐる各国間の競争のフィールドが宇宙へと広がることになる。

中国では、早い段階から宇宙コンピューティングへの取り組みが始まっていた。中科天算の創業チームは2019年、宇宙でのAIチップ活用を模索するプロジェクトを立ち上げ、22年には国産の高性能AIチップを搭載した極光1000の打ち上げに成功。軌道上で1000日以上にわたって安定稼働しており、宇宙空間内でも高性能AIコンピューティングシステムを運用できる可能性が実証された。

2023年には「極光1000-3」を開発し、3基の衛星を軌道上で連携させた協調実験を実施、複数の衛星を組み合わせた分散型宇宙コンピューティングの可能性を探った。さらに24年には「極光1000-慧眼」を追加投入し、宇宙空間でAIモデルの推論処理を実行することにも成功した。

現在は、次世代の宇宙コンピューティング基盤である極光5000の開発が進んでいる。フルサイズGPUを搭載し、高い冗長性と信頼性、優れた計算性能を備えるほか、衛星搭載機器には液冷方式を採用、10枚以上のAIアクセラレータカードによる並列計算と安定可動が可能になっている。創業者によると、同社の技術は「業界水準より2年以上先を行っている」という。

大規模プロジェクト「天算計画」

当面は、ハードウエアとソフトウエアの両面で商用化を進めていく方針だ。

ハードウエアの分野では、衛星搭載型AIコンピューターやモジュールカードの販売を主軸とし、大手の衛星コンステレーション運営企業、衛星メーカー、ロケット関連企業などに製品を提供する。納期は数週間から1年と、業界平均を上回るスピードを実現している。

ソフトウエアの分野では、まず専用OSと高速計算ライブラリの利用料を通じて収益化を進めるという。将来的にはオープンソースの開発者を呼び込み、衛星メーカーとアプリを共同開発して、エコシステム型の収益モデルを構築する考えだ。

2030年に向けた大規模プロジェクト「天算計画」も始動させた。宇宙空間に1万枚規模のGPUを備えたスーパーコンピューターとデータセンターを構築する構想だ。1平方キロメートルに及ぶ太陽電池パネルで電力を賄い、レーザー通信を束ねた毎秒10テラビット(Tbps)の超高速通信を実現することで、地上のデータセンターが抱える電力消費や設置スペースの制約を打破することを目指す。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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