空撮は“操縦”から“体験”へ。Insta360のパノラマドローンが発売、DJI一強に挑む

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アクションカメラ世界大手の「Insta360」が手がけるドローンブランド「Antigravity(影翎)」は12月4日、初の製品となる360度パノラマドローン「A1」を発売した。中国本土での販売価格は6999元(約15万5000円)から。それ以外の地域では2026年1月に同時発売の予定で、価格などは後日発表されるという。

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A1はドローン本体、Visionゴーグル、グリップコントローラーがセットになっている。

Visionゴーグルには軽量の薄型レンズを採用し、本体重量は340グラム、最長150分の連続使用が可能。内側に1インチのマイクロOLEDディスプレーをデュアル搭載しており、独自の映像伝送技術「OmniLink 360」と組み合わせることで、ドローンが撮影した360度のリアルタイム映像がそのまま目の前に広がる。映像の伝送距離は最大10キロメートルに達する。

直感的に操作できるグリップコントローラーは、親指でボタンを押して進行方向を指示し、人差し指でトリガーを引くだけでドローンを飛ばせるよう設計されている。格段に操作しやすくなったため、ユーザーは飛行体験そのものに集中できる。また、上級ユーザー向けに一人称視点のFPVモードを備え、必要に応じてその他の飛行モードに切り替えることも可能だ。

そして本体には、1/1.28インチセンサーを採用したデュアルレンズの全方位映像システムを搭載。360度のパノラマ映像を最高8K/30fpsで撮影でき、5.2K/60fpsや4K/100fpsといった高フレームレート撮影にも対応できる。手ブレ補正技術「FlowState」により安定した映像を実現し、1回の飛行で周囲360度の風景を死角ゼロで撮影できるため、ドローンを飛ばしながら構図や画角を気にする必要もない。

付属ソフトウエアには高度なトラッキング機能が備わっており、画面内の被写体を自動で認識・ロックオンして撮影時のズレを補正する。さらに、さまざまなアクロバティック飛行による複雑なカメラワークをワンタップで実行できる。

A1は日常でよく使われるシーンを想定して最適化されている。機体重量はわずか249グラム、世界の多くの地域で機体登録が不要、あるいは簡易的な手続きのみで運用が可能。交換式のレンズを採用したほか、飛行時間は標準バッテリーで約24分間、長時間用バッテリーを使用すれば最大39分となる。スマート障害物回避システムを搭載し、安全性も十分だ。

A1のリリースにより、Insta360は世界最大手のDJIが君臨するドローン市場への本格参入を果たした。消費者向けドローン市場で圧倒的な存在感を誇るDJIは、高い性能と信頼性、完成度の高いソフト・ハード一体型のエコシステムを武器に、長期にわたって主導的な立場を維持してきた。

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A1は、DJIが最も得意とする従来の空撮市場で正面対決することを避け、「360度パノラマ撮影」という異なるアプローチで、新たな利用シーンを切り開いた。一般ユーザーでも迫力ある空からの映像が手軽に楽しめるため、Vlogや旅行、アウトドアスポーツでの空撮に最適なツールとなっている。

プロ向け空撮市場では、今後もDJIが主導権を握り続けるとみられる。しかしA1の登場で、ドローンの価値が「技術」から「体験」へと切り替わる動きが進みそうだ。DJIの牙城を崩す存在とは言えないまでも、業界に新たな可能性をもたらしたことは間違いないだろう。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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