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全固体電池は、優れた安全性と圧倒的なエネルギー密度を兼ね備えていることから、長らく次世代EVの「本命」と目されてきた。しかし業界の盛り上がりとは裏腹に、技術的な課題やコストがネックとなって実用化は進んでおらず、いまだに自動車への搭載は実現していない。
では、全固体電池の実用化はなぜこれほど困難なのか。主な要因として、いくつかの技術的な壁が存在すると考えられる。
1)固体同士の接合の難しさ
全固体電池の最大の課題は、固体電解質と固体活性物質の安定した接合を維持することだ。液体電解質であれば電極との十分な接触が保たれ、安定したイオンの伝導経路を形成できる。しかし固体電解質と電極との接合では硬い面同士の接触になるため、充放電の過程で活性物質の膨張・収縮が生じると、十分な接触が保てなくなる。その結果、界面(接触面)抵抗が増大し、サイクル寿命と性能に重大な影響を及ぼす。
現時点で採用されている電解質は主に3種類あり、それぞれ一長一短がある。
・ポリマー系:界面形成が容易だが、常温でのイオン伝導度が低く、60℃以上の作業環境が必要。
・酸化物系:安定性に優れるが、もろく加工が難しい。
・硫化物系:イオン伝導度が液体電解質に匹敵し、現在主流の電解質。一方で水分と酸素に極めて敏感で、水と反応すると有毒な硫化水素を発生する。また製造には密封性の高い自動化ラインが必要となり、歩留まり管理が難しい。
このほか、エネルギー密度を高めるため、全固体電池では一般的にシリコンカーボン負極が採用されるが、シリコンは充放電に伴い体積が大きく膨張するため、接触の維持が難しくなり、電池寿命の短縮を招く。
2)生産ラインの改造とコスト問題
全固体電池の製造技術は、既存のリチウムイオン電池とまったく異なるため、生産ラインを大幅に改造する必要がある。中国車載電池大手の国軒高科(Gotion High-Tech)によると、液体電池から半固体電池への切り替えに伴う生産ライン改修は3~5%程度だが、全固体電池になると6割以上の改造が必要という。特に、固体電解質の薄膜塗布、高温化成、セパレーターを使用しない電池構造の製造といった工程は、いずれも新たな設備を必要とする。
さらに重くのしかかるのがコストの問題だ。中国車載電池メーカー、蜂巣能源科技(SVOLT)の楊紅新会長は、全固体電池のコストは液体電池の5倍から10倍に達すると指摘する。液体電池ですら自動車製造コストの30%以上を占めており、メーカーが必死にコスト削減を進めているなか、これほどの大幅な価格上昇は市場で受け入れられるはずがない。
そのため、多くのメーカーは「半固体電池」で当座をしのぎ、既存生産ラインを流用して、徐々に改良する方法を選んでいる。
中国企業の現在地:成果はあるものの量産化は遠い
このところ中国電池メーカーや自動車メーカーが全固体電池の開発状況を相次いで発表したが、量産の時間軸は後退傾向にある。
・欣旺達電子(サンオーダ)子会社の欣旺達動力科技(Sunwoda EVB)は2025年10月、全固体電池「欣・碧霄」を発表した。エネルギー密度は一般的な三元電池が250~300Wh/kgなのに対し、400Wh/kgに達する。年内に0.2GWhのパイロット製造ラインを設ける計画だが、経営陣は「最短でも、小ロットの生産が可能になるのは2030年後半」と慎重な見方を示した。
・自動車大手の奇瑞汽車(Chery Automobile)は自社で開発した全固体電池モジュール「犀牛S」を発表した。電池セルのエネルギー密度は600Wh/kg、航続距離は1300kmとしている。しかし当初2026年に予定していた車両への搭載は延期され、27年に実装検証することになった。
業界大手の見方はもっとシビアだ。車載電池世界最大手の寧徳時代(CATL)は、2027年に実現できるのは小規模量産にとどまり、本格的な量産は2030年以降になると繰り返し強調してきた。曾毓群会長は過去にも、全固体電池の開発進行度を技術成熟度レベル(TRL)で示すなら、9段階中の4段階にしか至っていないと語っている。欣旺達電子も、2027年に実用化という見通しはあまりに楽観的であり、小規模生産が可能になるのは2030年以降と見ている。
期待が先行する「先物技術」
全固体電池の量産はまだ先のこととはいえ、改めて注目度が高まったのには理由がある。
下克上のチャンス:準大手の電池メーカーが、新たな技術アプローチを足掛かりに逆転を狙っている。全固体電池はまったく新しい技術体系のため、産業構造を再編し、CATLを中心とする業界の構図を変えることが期待できる。
自動車メーカーの自立: 電池内製化を加速させ、サプライヤーへの過度な依存を脱却する狙いがある。
ユーザーの期待:相次ぐ電気自動車(EV)の発火事故を背景に、安全性に対する消費者の懸念が大きくなっており、より安全な電池を望む声が高まっている。
総じて言えば、材料工学や製造プロセスの課題、そしてコスト構造を冷静に分析する限り、全固体電池はいまだ「未来」の技術である。現在の熱狂は、産業界のパワーバランスを再構築したい関係者の思惑による部分が大きく、市場のニーズを即座に満たす段階には至っていない。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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