中国CATL、“高ニッケル電池”復活か PHEVやREEVにも「80kWh」の衝撃

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プラグハイブリッド車(PHEV)やレンジエクステンダー式電気自動車(REEV)に搭載される電池の容量拡大が求められる中、中国電池大手の「寧徳時代(CATL)」がニッケルの比率が高いリチウムイオン電池の開発に再び力を入れている。

複数の業界関係者によると、同社は2026年に新たな「8系高ニッケル電池」をリリースし、零跑汽車(Leapmotor)や小米汽車(Xiaomi Auto)といった主要な電気自動車(EV)メーカーのREEVに80kWhの大容量電池を搭載する見通しだ。

「8系高ニッケル電池」は三元系リチウムイオン電池の一種で、正極材に使われるニッケル、コバルト、マンガンが8:1:1の比率になることから「NMC811」とも略される。

PHEVとREEVはメインのエンジンをモーターが補う方式が主流だったが、ここ数年はモーター走行時の航続距離を延ばす需要が高まり、2025年には複数車種に容量60kWhを超える電池が搭載された。例えばEVメーカー・智己汽車(IM Motors)のSUV「LS6」レンジエクステンダー版は、66kWhのCATL製電池を搭載し、航続距離が試験ベースで450km以上と、一部の純電動自動車(BEV)を上回っている。また、ファーウェイ(華為)と江淮汽車(JAC)が共同開発した「尊界(Maestro)S800」も65kWhのCATL製電池を搭載し、モーター走行の航続距離が400kmに達する。

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2026年はこの流れが加速し、大容量電池を搭載したPHEVやREEVが複数発売される見通しとなっている。中でも注目の零跑汽車(Leapmotor)は、フラッグシップモデルの「D」シリーズに航続距離を延ばすため80kWhの電池を搭載する計画だ。現在判明しているのは「D19」と呼ばれるSUV(多目的スポーツ車)とMPV(多目的車)で、モーター走行時の航続距離が500kmに達する可能性がある。また、小米汽車(Xiaomi Motor)のREEVや、長城汽車(GWM)の新型PHEVなど複数の車種にも80kWhに迫る大容量電池の搭載が予定されている。

リン酸鉄リチウムイオン電池で500km前後のモーター走行を実現するには搭載する電池パックを増やすしかないが、必然的に重量が増え、車両の操縦性や俊敏性に影響を及ぼすうえ、衝突時の安全性を損なう恐れもある。今後発売が予定されているPHEVやREEVの中には、車両重量が3トンを超える車種もあるという。これを踏まえて一部の自動車メーカーは、車両重量を抑え、安全性も確保しながら十分な航続距離を実現するためにNMC811の採用を検討し始めた。

高ニッケル電池・NMC811の課題

ニッケル比率が高いNMC811は決して新しい電池ではない。数年前にも蔚来汽車(NIO)や小鵬汽車(XPeng Motors)、埃安(AION)などが採用していたが、熱管理技術が十分に確立されていなかったために熱暴走が頻発し、市場で敬遠されるようになった。それでもCATLは、高級車市場に進出するためには避けて通れない道だとして開発を諦めなかった。

NMC811は、ニッケルの割合が5割のNMC532や6割のNMC622などに比べエネルギー密度が高く、同じ容量でも電池パックを軽量化できるほか、航続距離や駆動力に優れている。

しかし、NMC811にも熱安定性の低さやサイクル寿命の短さといった欠点がある。また、コバルトの含有量が低く原材料コストを抑えられるとはいえ、開発・製造コストが高止まりしているため、車両に占める電池コストが大きく下がることはない。

自動車メーカーは、競争の激しいPHEV・REEV市場でセールスポイントの差別化を迫られており、NMC811を採用すれば性能の向上だけでなく、消費者への技術的なアピールが期待できる。一方、三元系リチウムイオン電池のシェアがリン酸鉄リチウムイオン電池に奪われ続けているCATLとしては、NMC811を投入することで市場の主導権を再び握りたい思惑がある。

業界では、新たなNMC811が熱管理やサイクル寿命の技術改良を伴ってリリースされると見られている。しかし、再び車載電池の主流として返り咲けるかは、自動車メーカーや市場が判断することになるだろう。

(翻訳・大谷晶洋)

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