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中国の生成AI(人工知能)ユニコーン企業「MiniMax(稀宇科技)」が12月21日、香港証券取引所の上場審査を通過した。2026年1月の上場を見込む。成功すれば、設立からわずか4年でのIPOとなり、AI企業として世界最速の上場事例となる見通しだ。
その2日前には、同じく有力候補の「智譜華章科技(Zhipu AI)」も審査を通過しており、中国AI勢による上場ラッシュが幕を開ける。
両社は、2023年に中国で過熱した大規模言語モデル(LLM)開発競争、いわゆる「百模大戦」で頭角を現した企業群の中核を担う。智譜、MiniMaxに加え、月之暗面(Moonshot AI)、零一万物(01.AI)、百川智能(Baichuan Intelligent)、階躍星辰(StepFun)の有望スタートアップ6社は、業界内で「AI六小虎」と称されている。
異なる成り立ち、分かれる収益モデル
Zhipuは2019年、清華大学の研究チームから誕生。一方、MiniMaxは21年、画像認識大手の商湯科技(センスタイム)で副社長を務めた閆俊傑氏が創業した。
中国の生成AI乱立時代を勝ち抜いた2社だが、事業戦略と収益構造は対照的だ。
Zhipuは、大手企業や政府機関向けのB2Bモデルを採用し、オンプレミス(自社運用)型 とクラウド型の二本柱で事業を展開している。売上高の8割超をオンプレミス型が占め、顧客単価と継続性は高い。一方で、導入支援やカスタマイズに時間を要するため、事業の大規模展開が進みにくい。
一方、MiniMaxは法人向けと個人向けの両輪展開を進める。企業向けにはLLMのAPIや開発基盤を提供しつつ、個人向けには「MiniMax Agent」「海螺AI」「MiniMax Audio」などのサービスを投入。海外で利用が広がる対話型アプリ「Talkie(中国版:星野)」も成長を牽引しており、現在は売上高の7割以上を個人向け事業が占めるという。
売上急拡大も赤字継続
両社の売上高は急拡大しているものの、継続的な赤字という新興ハイテク企業特有の課題も抱えている。
Zhipuの売上高は2022年に5700万元(約12億5000万円)、23年に1億2500万元(約27億5000万円)、24年には3億1200万元(約68億6000万円)へと拡大した。2025年1〜6月は1億9100万元(約42億円)と、前年同期から約325%の増加となった。
MiniMaxは2023年から本格的な収益化を開始し、23年は346万ドル(約5億4000万円)、24年は3052万ドル(約47億6000万円)と急伸。25年1~9月には5344万ドル(約83億4000万円)に達し、前年同期比で約2.8倍となっている。
しかし、膨大な研究開発費が利益を圧迫している。2022年以降の調整後純損失は累計で、Zhipuが約50億元(約1100億円)、MiniMaxが5億ドル(約780億円)を超える。激しい競争環境に加え、収益化できる実用場面がまだ限定的であることも背景にある。
「生き残り」をかけた上場
目論見書によると、直近の評価額は、Zhipuが約244億元(約5400億円)、MiniMaxが42億4000万ドル(約6600億円)とされている。
生成AIを巡る競争は現在、モデル性能そのものを競う段階から、計算資源(コンピューティングパワー)や潤沢な資金、そして開発パートナーを含む「エコシステム」の構築を競う長期的な消耗戦のフェーズに入っている。
赤字が続く両社にとって、上場を通じた「弾薬(資金)」の補給は、生き残りをかけた現実的な選択肢だ。
いち早く資本市場を味方につけ、安定した資金基盤を確保できるかどうかが、次の局面を左右する重要な要素となりそうだ。
※1元=22円、1ドル=156円で換算しています。
(編集・36Kr Japan編集部)
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