米国は“セクシーな彼女”、中国は”癒やしの彼氏”。AIパートナー、米中で二極化の深層

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オックスフォード大学中国政策研究室(Oxford China Policy Lab)の研究員、Zilan Qian氏が2025年10月、AIに関する興味深い論考を発表した。そのタイトルは「Why America Builds AI Girlfriends and China Makes AI Boyfriends(なぜ米国はAI彼女を作り、中国はAI彼氏を生み出すのか)」。

110に上る世界のAIキャラクターサービスを調査した結果、AI技術そのものは収束しつつあるものの、「文化の差」と「規制の違い」によりキャラクターの進化の方向性が大きく異なっていることが分かった。

急拡大するAIキャラクター市場

2025年4月時点で、AIキャラクターを提供する世界110プラットフォームの月間アクティブユーザー数(MAU)は約2900万人に達し、月間アクセス数は8800万回に上る。

サービスの形態は、大きく2つのタイプに分けられる:

1)ユーザー主導型:ユーザー自身がプロンプトを通じて自分の理想とするキャラクターを生成する。プラットフォームの競争的な仕組みにより、魅力的なキャラクターが生まれやすい。

2)プロダクト志向型:長期にわたる感情的な結びつきに重きが置かれる。代表格の「Replika」のように、AIとの関係を「結婚」と捉える熱狂的なファンを生む一方、システム更新による性格の変化がユーザーに深い心理的ダメージを与えるリスクも孕んでいる。

形態はさまざまだが、どのサービスでも「性的魅力」や「感情的な支え」がユーザーの定着を促す大きな要素になっている。

恋愛離れの若者、「AI恋人」に依存 爆速で増える「感情認識AI」の実態

米国:「対人不安」の男性に刺さる理想の女性

世界に110あるAIキャラクターサービスのうち、52%が米国に本社を構える。これらのサービスには明らかなジェンダー傾向が見られ、約17%がアプリ名に「ガールフレンド」を含む一方、「ボーイフレンド」はわずか4%にとどまっている。

米国で「AI彼女」が広がっている背景には、若年男性の深刻な「恋愛離れ」と「対人不安」があるとみられる。

市場調査会社SimilarWebによると、サービス利用者の男女比はおよそ7対3で、18~24歳に限っては8対2となっている。ロイターの調査では、若い男性の50%が拒絶されることへの恐怖から人よりAIを選び、18~30歳男性の31%がすでにAIと「交際」しているという。

この傾向は、ネット上の男性至上主義的な文化「マノスフィア」の拡大と関わりがある。この種のオンラインコミュニティーでは、女性が移り気で相手を振り回す存在として描かれており、若い男性の多くが現実の恋愛に疲弊している。AI彼女なら、決して裏切らず、自分を評価(ジャッジ)することもない、「どこまでも従順で都合の良い理想像」として、「理想の女性像」を求める男性のニーズに刺さったというわけだ。

中国:癒しを求める独身女性の「心の支え」

米国とは対照的に、中国では男性のAIキャラクターが主流となっている。AIと会話できる中国の人気アプリ「星野(XingyeAI)」「筑夢島(Zhumengdao)」「独響(Duxiang)」などはいずれも、繊細かつ情緒豊かな男性キャラクターを前面に打ち出している。

星野(XingyeAI)

主な利用層は都市部に住む25~40歳の女性だ。高学歴で経済的にも自立しているが、婚姻率の低下や「売れ残り」という社会的偏見に晒されている。米国のAIキャラクターが性的魅力を打ち出すのに対し、中国ではストーリー性や感情的な共感に重きが置かれている。

AI彼氏は自分を理解し、寄り添い、感情面で支えてくれる「疑似恋愛」として機能しており、女性主人公が男性キャラクターとの恋愛を楽しむ「乙女ゲーム」文化の延長線上にあるとも言える。

規制の違いが形作るキャラクター設定

なぜこれほどまで傾向が異なるのか。その要因の一つは、両国の規制環境にもある。

中国では、性的表現への規制が極めて厳格だ。2025年6月、「筑夢島」が性的な含みのある対話を理由に行政指導を受け、これをきっかけに業界全体で実名登録と青少年モードの導入が義務づけられた。当局は、自律的な規制がなければ、AIキャラクター産業そのものが存続の危機に陥るとの立場を示している。このため、企業は「エロ」に頼れなくなり、感情的なつながりや共感力に軸足を移した結果、現在の「癒やし系AI彼氏」の形が定着した。

一方の米国では、連邦取引委員会(FTC)がAIへの「依存性」をめぐり調査を開始したものの、成人向けコンテンツに対する法規制は比較的緩やかなため、「セクシーなAI彼女」はスタートアップが効率的にトラフィックを獲得する方法となってきた。

興味深いことに、2025年9月には、米中両国の当局がほぼ同時にAIチャットボット使用に対する警鐘を鳴らしている。米FTCはOpenAIやMetaなど7社を対象に調査を開始し、青少年が不健全な感情依存に陥ることに懸念を表明した。そのわずか4日後、中国政府は「人工知能安全ガバナンスフレームワーク2.0」を発表し、擬人化したAIへの過度の依存を最高レベルの倫理リスクと位置づけた。

(翻訳・畠中裕子)

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