今、法人向けのビジネスチャットツール市場では、「アリババ(Alibaba)」傘下の「釘釘(dingtalk)」、「騰訊(テンセント、Tencent)」傘下の「企業版微信(WeChat Work)」、「バイトダンス(ByteDance、字節跳動)」傘下の「飛書(Feishu)、海外版「Lark」という」が混戦状態だ。
テンセントが昨年サービスを企業向け(to B)に拡大すると宣言したのに続き、バイトダンスもto B事業に重点を移しつつある。後者は海外版「Lark」のビジネス化を加速させている。
「新BAT」(BはByteDance、AはAlibaba、TはTencent。Baiduに替わりByteDanceがBとなっている)が皆ビジネスツール市場に進出し始めた。それぞれの方針と今後の展開を見てみよう。
運良く成功した釘釘
2013年に、アリババはWeChatに対抗するためのSNSサービスに注力したが、失敗に終わった。同チームは企業向けオフィスツールに方針転換を決めた。
当時のチーム担当者で、現在の釘釘CEOの陳航氏によると、最初は誰も釘釘が成功するとは思っていなかった。しかし、2015年1月にローンチすると意外にもヒットした。オフィシャルデータによると、現在1000万社の企業が釘釘のユーザーになっているが、2016年当初は100万社しかなかった。
陳氏は、釘釘が成功した理由は、中国の従来の中小企業が紙ベースの事務処理から、クラウドとモバイル時代にシフトする分岐点のチャンスを捉えたことだと語った。
現在、釘釘はアリババのto B事業における重要なサービスとなっている。
後発のWeChat Work
テンセントも釘釘の勢いを座視してはいられないと、釘釘ローンチ1年3カ月後の2016年に、釘釘に対抗するためのWeChat Workを発表した。
WeChat Workアプリ1.0には、オフィス電話、メール、告知、タイムカード、休暇申請、清算、および企業メールアラート、重要なチャット記録のメール送付などの機能がある。
テンセントはWeChatで提供できない機能をWeChat Workで提供する方針を採り、2018年5月にWeChat Workと通常のWeChatの間でメッセージのやり取りを可能にする「WeChatコネクト」機能をWeChat Workに追加した。メッセージ機能のほか、ミニプログラム、企業決済、管理者の許可があれば異なる企業間でダウンロードなしでも連絡が取り合える「微工作台」など4つの機能が搭載されている。
WeChat WorkはWeChatと同様に、個人の使いやすさとコネクティビティ両方を重視し、企業内外のコミュニケーションの質を向上させている。釘釘とはデザインコンセプトから異なっているのだ。
釘釘は社内管理とコミュニケーションを、WeChat Workは社内と社外のコミュニケーションと宣伝を重視している。また、釘釘は企業バックオフィスの需要を、Wechat Workはフロントオフィスの需要を重視している。
バイトダンスも企業向けサービスのビジネスチャンスに気づき、飛書をリリースし、前述の2社との差別化を図り、競争に参入した。
独自の道を歩む飛書
設立わずか7年のバイトダンスには、20年以上の歴史を持つアリババやテンセントと大きな違いがある。
バイトダンスの基本方針は情報を効率的に伝達することによるチームメンバーの連携強化であり、飛書は、この方針のもとで急速に発展している。
釘釘とWechat Workが汎用OA共同オフィスプラットフォームであるのと異なり、タイムカード等管理機能が搭載されていない飛書はチームの連携に特化し、特定業界向けにカスタマイズしている。インスタントメッセージ、スマートカレンダー、オンラインファイル機能などから、バイトダンスの方針が窺える。
公式サイトによると、飛書の主たるターゲット業界は、IT、メディア、法律、リテール、および教育である。これらはチームワークを重んじる典型的な分野で、バイトダンスの事業と重なる部分もある。
飛書は、釘釘やWeChat Workのようにすべての業界に対応しているわけではないものの、企業向け市場を開拓することはバイトダンスにとって大きな意味がある。「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」に続くヒット商品がないことによる圧力の下、バイトダンスは新たなビジネスチャンスを掴むことに腐心している。
大手がオフィスツール事業で混戦状態なのは偶然ではない。個人向けインターネットサービスのプレミアムがなくなった現在、企業向けサービスの将来性が注目されているからだ。
各社は激しい競争の中から頭角を現わそうと、オフィスツールをより深堀りしていくだろう。また、プロモーション戦略も業界のシェアに影響する可能性がある。現時点で最も若い飛書がすでに海外市場に注力しているが、強敵が林立する海外で、バイトダンスがどれぐらいのシェアが獲得できるかは未知数である。
作者:「深响」(Wechat ID:deep-echo) 趙宇
原文: https://mp.weixin.qq.com/s/9PEgpqiu7yMiYeq87dT2vQ
(翻訳:小六)
原文はこちら
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