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貿易摩擦と脱炭素政策のはざまで、中国のエネルギー貯蔵企業が海外生産へと大きく舵を切っている。
中国企業はこのところ相次いで海外で製造拠点づくりを進めている。新型エネルギー貯蔵に注力する楚能新能源(Cornex)はエジプトのエネルギー企業Kemet Energyと、約2億ドル(約310億円)を投じて年間生産能力5GWhの蓄電池工場をエジプトに建設する協定を締結した。Cornexはこれに先立ち、Kemetおよび同国のエネルギー企業WeaCanと戦略提携を結んでおり、合計6GWh分の高性能エネルギー貯蔵システムなどを段階的に供給する方針を明らかにしている。
太陽光蓄電システム大手の陽光電源(Sungrow Power Supply)は、エジプト政府と総額18億ドル(約2800億円)の提携プロジェクトに合意、年間生産能力10GWhのエネルギー貯蔵産業拠点の建設を計画している。地域の中核拠点となることを目指し、2027年の生産開始を目指す。
車載バッテリー大手の中創新航科技(CALB)はポルトガル政府と投資協定を締結し、車載用および蓄電用のリチウムイオンバッテリー製造プロジェクトを推進している。また、太陽光パネル世界大手の隆基緑能科技(LONGi Green Energy Technology、ロンジ)は、精控能源(Potisedge)および米国NeoVoltaと合弁会社NeoVolta Powerを設立し、米ジョージア州にエネルギー貯蔵システムの製造拠点を建設する予定だ。
業界では、こうした海外での工場建設が、単なる生産能力の海外移転ではなく、外部からの圧力と企業自身の必要性から生まれた戦略の転換との見方が広がっている。
貿易保護主義や地域ごとのコンプライアンスなどのハードルは上がり続け、単純な輸出モデルは通用しなくなりつつある。例えば、米国は2025年以降、中国の蓄電池に対する輸入関税を段階的に引き上げており、26年には車載用以外の蓄電池に対する総合税率が48.4%に達する見通しだ。EUでは、バッテリー規則によりカーボンフットプリント、トレーサビリティ、リサイクルに関する要求が厳格化され、「加点要素」とされていた現地生産は、市場参入やコスト競争力を維持するための「必須条件」に変わった。また中国国内でバッテリー製品の輸出税還付が段階的に縮小され、撤廃される可能性もあるため、これまでの貿易スタイルが強みとしていた価格面での優位性はさらに弱くなった。
一方で、中国国内の価格戦争に加え、エネルギー貯蔵に対する海外の需要は本格的な拡大期に入っている。公開データによると、中国企業が2025年に海外で新たに獲得したエネルギー貯蔵分野の受注と提携プロジェクトは、前年比で90%以上増加し、350GWhを超えたという。用途も、新エネルギーの調整弁という目的から、データセンターやAIコンピューティング用インフラなど新たな分野へ広がった。海外の顧客はサプライチェーンの安定感、納品の速さ、現地でのサービス展開を重視する姿勢を強め、企業は市場に近い場所で研究開発から製造、運用管理まで完結する体制の構築を迫られている。
こうした背景から、中国のエネルギー貯蔵関連企業の海外工場建設は、もはや関税回避やコスト最適化のための受動的な選択ではない。各国のエネルギー転換戦略に組み込まれ、現地の産業政策と共存しながら市場を獲得するための“構造的投資”へと性質を変えつつある。
*1ドル=約153円で計算しています
(編集・翻訳 36Kr Japan編集部)
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