AIとEVの時代、中国はなぜ“世界一の電気大国”になれたのか

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2026年は電気大国としての中国に注目だ。昨今のテックトレンドといえば、人工知能(AI)・電気自動車(EV)・自動運転・ロボット・スマート製造など、電気なしでは動かないものばかり。特にAIデータセンターは大量の電気を必要とする。電力は現代の様々なテクノロジーを動かす重要な動力源であるのはもちろん、世界では電力を環境に優しい太陽光・風力・水力などの再生可能エネルギーでまかなう流れが着実に広がっている。

家庭の屋根にソーラーパネルを設置して太陽光発電を行うことができるのはすでに周知されていることだろう。昼も発電した電力は利用できるが、家に人がいなければ消費はわずかで、電力は「消費する」「貯める」「売電する」のいずれかになる。夜は家に人が戻るので、貯めておいた電力を活用する。EVや電動二輪車があれば充電にも回せる。商業施設やオフィスビル、工場でも同じで、広い面積で得た太陽光由来の電力を貯蔵し、必要に応じて活用するという考え方だ。

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再エネ拡大が進むほど「貯める力」が効いてくる

この規模が近年、特に中国でものすごく大きくなっている。2024年の中国の再生可能エネルギー発電量は2020年比で4倍に増加している。その中にはメガソーラーや大規模建築物へのパネル設置し、EVステーションでの充電に活用するところなどが多数ある。最近では電気食いとして知られるAIデータセンターが続々と建設されているが、そこでも導入が進む。

風力・太陽光といった再生可能エネルギーの規模が拡大すれば、昼夜や天候で発電量が変わるのは避けられない。そこで重要になるのが、電力を貯めるESS(エネルギー貯蔵システム)である。ESSは、大量のバッテリーセルなどで構成され、発電と需要のギャップを吸収する。断続的な発電が可能となり、ムラの大きな発電や不整合な発電の問題を緩和する役割を担う。加えて、再エネ導入が進むほど、系統側の調整力としての価値も増していく。

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ESS市場の急拡大と中国勢の支配力

このESS市場も急拡大している。中国メーカーはESS分野で強い存在感を示しており、英ファイナンシャルタイムズは、中国勢が世界のESS供給能力で「約90%」を握ると報じている。

需要の構造変化も背景にある。かつてESSのニーズは「コンパクトで高性能」な家庭用に寄り、韓国のサムスンSDIとLG化学に優位性があった。だが、需要の主戦場が低価格・長寿命を重視する産業用・大規模向けに移るにつれ、低コストでスケールしやすいリン酸鉄リチウム(LFP)を軸に量産してきた寧徳時代(CATL)など中国メーカーがシェアを奪う構図が強まった――というのが業界の大きな見取り図である。

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2025年上半期の時点で、世界のバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)市場では、出荷量ベースの上位10社がすべて中国企業となり、市場シェアは合計で91.2%に達するまでになった。

政策・新規参入・価格競争で「導入障壁」が下がる

中国の需要の背景には、エネルギー貯蔵を後押しする五カ年計画といった政策に加え、EVやAIの盛り上がりがある。その下で太陽光・風力発電を効率よく運用し売電するにはESS導入が有利だとして、事業者が導入を進めた。

また、メーカー側も政策と市場の双方に応え、生産を増やしてきた。さらに、バッテリー専業企業だけでなく、EVメーカーなども「第二の成長」を求めてESS向けバッテリーに参入したことも相まって価格競争が進んだ。実際ESSの価格は急落していることは複数の調査・報道でも指摘されており、近年のコスト低下が導入を後押ししている。

AIブームが押し上げる「データセンター電力」

そして何より昨今のAIブームである。中国は米国にコントロールされまいと自国のAI産業圏を作り、多数の生成AIサービスが開発され、中国のネットユーザーが自国の生成AIサービスを活用している。今年の春節前の国民的番組「春晩」では、生成AIを利用したらお年玉がもらえる仕掛けが用意され、生成AIの利用者増加を狙う。

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AIコンピューティングの処理は、需要により大きな変動があり、それは消費電力へも直結する。データセンターの電力需要が今後大きく増える見通しは国際機関も示しており、2030年にはAIデータセンター向けESSの出荷量が現在の10~20倍になるという予測もある。

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中国国外に目を向ければ、中国企業による海外での発電プロジェクトは先進国・新興国を問わず多数ある。それは中国国内向けと同様に、導入することで現地での電気代を抑え、供給を安定化させることを目的とするケースもあれば、電力も通信も不安定なところで基地局と太陽光発電所とESSをセットで建設してインフラをつくることを目的とするケースもある。中国企業のパーツやシステムが世界で重視されるようになっているわけだ。

中国のESSは大きく成長し、電力産業の中のパイロットプロジェクト的な存在から、中国で欠かせないインフラへと変貌した。さらに、世界のハードウエア供給を一手に担うまでになった。

一方で、「中国が世界の電力をコントロールするか」といえば、そう単純ではない。

たとえば様々なESSを制御できる電力のOS「HybridOS」を米国FlexGenはリリースしている。例えるならスマートフォンやパソコンのパーツは中国製だが、AndroidやWindowsは米国製という関係の“電力版”で、どこのメーカーのESSだろうとシステムで制御できるようにするというものだ。ハードウェアには強いがソフトウェアは強くない。中国のモノづくりの特長は電力にもでている。

文:山谷剛史

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