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日本の人工知能(AI)を搭載した電子ノート市場という、予想以上の“金脈”を狙う動きが相次いでいる。
中国AI大手のアイフライテック(科大訊飛)が展開する「AINOTE 2」が、クラウドファンディングサイト「マクアケ」で支援総額4億6875万円を記録し、目標を大幅に上回る結果となった。2025年11月23日に終了したこのプロジェクトは、日本市場でのAIノートへの潜在的な需要の大きさを示した。
この「成功体験」を目の当たりにし、参入を決めたのがテレビメーカーとして知られるグローバル家電大手のTCLだ。2026年2月、同社は新製品「Note A1」を発表し、9万9800円というAINOTE 2を上回る価格で市場参入を果たした。テレビ事業で培ったディスプレイ技術を武器に、市場拡大の第二波を目指す。
切り札は「ディスプレイ技術」
TCLは1981年創業、2015年に日本市場へ進出し、テレビ分野でトップクラスの順位にまで成長した。同社によると、フィリピン、オーストラリア、パキスタンでテレビマーケットシェア1位、中国、アメリカ、ブラジル、フランスなどの主要市場で2位という実績がある。世界24箇所にR&D(研究開発)センターを構え、2026年5月時点で特許出願件数は3万2780件以上、7つの共同ラボがあるという。
TCLが「二匹目のどじょう」を狙う上での最大の切り札は、ディスプレイ技術だ。8Kパネル、eスポーツ向けパネル、LTPSタブレット向けパネルで世界シェア首位を誇り、世界最先端のG11 LCDパネル生産ラインを持つ技術力が、Note A1の開発を支えているという。
Note A1の核となるのは、「NXTPAPER Pure」と名付けた独自のディスプレイ技術だ。TCLは数年にわたってNXTPAPERという紙のような表示技術を進化させてきたが、今回はA、120Hzの高リフレッシュレートと1670万色による忠実な色再現を実現しながら、反射防止、写り込み防止、指紋防止という3つの保護機能を採用している。

社内ラボ試験では、反射を76%低減、グレア(眩しさ)を55%低減し、ブルーライト比率は2.44%という極めて低い数値を達成した。さらに、TÜV認証を取得し、視覚的な快適さが第三者機関によって正式に認められている。
TCLが照準を定めるのは、AINOTE 2を購入したようなビジネス層だ。ただ、両社の強みは異なる。アイフライテックがAIと音声認識技術に強みを持つのに対し、TCLは「集中を邪魔しない画面」で差別化を図る。ちらつきや遅延、色ムラ、反射や映り込みも抑えた表示品質で勝負する戦略だ。
AI戦略の違いーー「第二の脳」という発想

ディスプレイ技術だけではない。TCLはAI機能でも、アイフライテックとは異なる戦略を取る。
Note A1の中核機能が「インスピレーションスペース」だ。PDFやウェブを閲覧しているとき、会議中など、ペンで囲んでタップするだけで重要な段落や図表、考えを即座に保存できる。保存した情報はワンクリックで元の情報源に飛ぶことができる。断片的な情報を行動につながるセットへと変換する、AIによって支えられた「第二の脳」としての役割を担う。
ビジネスパーソン向けに、AIツールによる文章の推敲・書き直し、リアルタイムの文字起こし・翻訳機能を提供する。研究者・学生向けには、数式計算や手書き認識精度を高めた知識エンジンを搭載。クリエイティブ層向けには、ワンストローク図形生成と多彩なブラシによる表現力を提供する。
付属のスタイラス「T-Pen Pro」も、戦略的な差別化要素だ。万年筆型のクラシックデザイン、消しゴムキャップ、デュアルチップで万年筆・鉛筆の書き味を切替可能、実際の摩擦感を模した触覚フィードバックなど、「紙のような書き心地」を徹底追求している。
「二匹目のどじょう」はいるか
TCLの参入には、いくつかの課題も存在する。
まず、アイフライテックには先行者利益がある。TCLはディスプレイ技術の優位性を、価格に見合う価値として消費者に納得させる必要がある。
次に、市場での認知度の問題も大きい。TCLは日本でテレビブランドとして知られているが、AIノート分野では後発となる。
そして、機能面での差別化が十分に伝わるかという認知不足もある。AINOTE 2の「音声文字起こし+手書きメモ」という分かりやすい価値提案に比べると、訴求力で劣る可能性がある。
ただし、TCLには長期的な展望がある。同社は115インチTVの日本導入を近い将来に計画しており、Note A1は日本市場への本格参入の足がかりとなる製品だ。短期的な販売数だけでなく、重層的なブランド認知と顧客接点の拡大という戦略的意味を持つ。
また、両社の競争は、日本市場にとってプラスに働く可能性が高い。アイフライテックは音声AI技術を、TCLはディスプレイ技術を武器に、それぞれ異なる強みで市場開拓を進める。この競争が製品の質を高め、価格競争を促し、結果として消費者の選択肢を広げる。
アイフライテックの大成功後もそこにはまだ多くの「どじょう」が潜んでいるかどうかは、今後数カ月で明らかになりそうだ。
(36Kr Japan編集部)
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