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2026年春節(旧正月)の大みそかに当たる2月17日夜、中国中央広播電視総台(CCTV)の年越し番組「春節聯歓晩会」(以下、春晩)で披露された人型ロボット(ヒューマノイド)と人の華やかな共演が、日本のSNSでも大きな話題となった。
中国ロボット大手「宇樹科技(Unitree Robotics)」の人型ロボット「G1」24体が演目「武BOT」に登場し、武術学校の子どもたちと息の合ったパフォーマンスを披露。その滑らかで力強い動きは、もはや「機械」の域を超えたと評され、視聴者に強烈な衝撃を与えた。
中国の年越し番組「#春晩」がライブ配信中。
今年は人型ロボット(数社も登場予定だが、動画にはUnitree)がさらに進化し、人間と本格共演!技術とエンタメの融合が加速しています。 pic.twitter.com/OWKh8AGyzH
— 36Kr Japan@中国テック・スタートアップ専門メディア (@36krJ) February 16, 2026
番組終了後、北京市内のロボット訓練拠点に戻ったUnitree創業者の王興興氏に話を聞いたところ、今回の出演は単なるエンターテインメントではなく、人型ロボットの運動能力や集団制御能力(群制御)を総合的に検証する「技術テスト」としての意味合いが大きかったという。
“前年超え”という重圧
Unitreeは2025年の春晩で演目「秧BOT」を披露し、安定感のあるダンスパフォーマンスで人々を驚かせた。王氏は、「昨年を超えるステージを作り上げること」が最大のプレッシャーだったと振り返る。今年の演目に「武術」を選んだのは、より負荷の高い運動性能に挑み、人との本格的な共演を通じてロボットの表現力を一段と高める狙いがあったからだ。
Unitreeは演出チームとたくさんの武術の動きを洗い出し、そのなかから数十種類の代表的な動作をロボットで再現した。音楽のリズムや構成に合わせて細かな調整を重ね、準備期間は数カ月に及んだ。
・秒速4メートルの衝撃——運動性能の進化
昨年の演目に比べて、今年はロボットの動作とそのつなぎ方が大きく進化した。昨年はゆっくりと歩いて次の動作に移っていたが、「武BOT」では最高秒速4メートルという素早い動きで動作をつなぎ、全体のテンポ感や滑らかさが大幅に向上した。
舞台では、ロボットとは思えないような高難度の動きも次々と披露した。片足での連続宙返り、壁を蹴って後方宙返り、7回転半のブレイクダンス技、さらには「酔拳」の再現まで実現した。これは、事前にプログラムされた動きを単に再生したものではなく、リアルタイムの運動制御技術と動的バランスアルゴリズムによって実現されたものだ。王氏によれば、その多くは人型ロボットとしては前例のない試みだという。
・24体が乱れない理由——群制御技術の核心
今年は出演するロボットが24台に増え、フォーメーションや協調動作の難易度が一段と高まった。激しい動作によって生じる位置のズレに対応するため、Unitreeでは集団制御および位置補正技術を新たに開発した。
各ロボットは本体に搭載されたセンサーで周囲環境をリアルタイムに認識し、動作中に所定の位置からずれても、自動的に補正を行い、元の場所へと戻る。これにより、全体として高い一体感と完成度を維持できる。
王氏は「人の操作を必要としない、ロボットによる真の自律的協調を実現した」と胸を張る。一見、派手な技術デモンストレーションに映るこれらの成果は、実際には産業応用に直結する基盤技術でもある。将来、生産ラインなどでの大規模に活用される見込みがあるのだという。
【こぼれ話】春晩で「Unitree(宇樹機器人)」がヒューマノイド「G1」を多数動作させて衝撃的なパフォーマンス見せました。こちらは本番とリハーサル時の様子です。去年も同社製ロボットが登場しましたが、1年で大きく進化しました… pic.twitter.com/qJlQY5V9kC
— 36Kr Japan@中国テック・スタートアップ専門メディア (@36krJ) February 17, 2026
ショーから産業へ——収益モデルの拡張

Unitreeの製品は現在、消費者向け、研究用、教育用、商業パフォーマンス用の4カテゴリで展開している。人型ロボット「R1」は京東(JDドットコム)や淘宝(タオバオ)などのECサイトで2万9900元(約67万円)から販売されており、ロボット犬の生産能力は年間数万台に達している。
春晩への出演が大きな注目を集めたことで、「商業パフォーマンス」という新たな収益モデルの可能性が示された。しかし、Unitreeはさらなる高みを目指している。2026年は既存分野を足がかりに、産業用途や商業サービスへと事業をさらに拡大する方針だ。
同社はこれまで、人型ロボットを自動車工場での組立や運搬作業に導入する試みを進めてきたが、現時点では作業効率が人には及ばず、産業現場での大規模な活用にはまだ時間がかかるという。
それでも王氏は、2026年に同社の人型ロボット出荷台数を1~2万台と見込んでおり、世界全体でも数万台規模に達するとの見方を示した。
真の勝負は“脳”にある
業界の見通しについて王氏は、人型ロボットが技術面でまだ草創期にあるとの認識を示す。最大のボトルネックは、ロボットの頭脳であるAIの汎用性がまだ十分ではないことだとし、「現時点では本当に汎用性のあるエンボディドAIは世界にまだ存在していない」と指摘する。
Unitreeは目下、VLA(Vision-Language-Action)モデルや世界モデルなど、複数の技術アプローチを模索し、外部パートナーとも提携するなど、汎用的な“ロボット頭脳”の実現に力を注いでいる。一方で当面は、ロボット本体の運動能力強化をすることを優先する方針だ。「強靱な体がなければ、いくら賢い頭脳があっても意味がない」と王氏は語る。
また、業界への資金流入や参入企業の増加について、現在の市場過熱はまだ“制御可能”な状態にあるとしつつも、画一的な開発競争や不毛な価格競争は避けるべきだと強調。今後は、アフターサービスや使い勝手の改善が競争の軸になると見ている。
「実際に量産・納品し、ビジネスとして成立させてこそ、業界は健全に成長する」。王氏の言葉は、華やかな舞台の裏側にある現実的な視点を物語っている。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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