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2月25日、東京都内で開催された発表会に、AIスマートグラス「Rokid AI Glasses」が姿を現した。重さわずか49グラムの軽量ボディにカメラ、ディスプレイ、AIアシスタント、リアルタイム翻訳と機能を詰め込み「スマートフォンの次」を見据える。
開発したのは中国・杭州発のスタートアップ「Rokid(ロキッド;霊伴科技)」。日本では独占輸入代理店のフューチャーモデルと組み、販売を進める。クラウドファンディングサイト「マクアケ」では2月26日に支援募集を開始。公開直後から支援が殺到し、調達額は早くも1億6000万円をを突破。ヒット作になりそうだ。

11世代・100カ国で積み上げた実績

2018年設立のRokidは、音声認識、OS、光学ディスプレイに至る研究開発型企業だ。従業員は500人超、うち60%以上をエンジニアが占める。これまでに11世代以上のARグラスを量産し、100カ国以上で展開してきた実績を持つ。特に米国市場での認知度が高く、2026年のCESでも複数の賞を受賞するなど、大きな注目を浴びた。
日本では、マクアケで販売する。同サイトでは、科大訊飛(アイフライテック)やTCLなど、中国大手企業の人工知能(AI)搭載端末も相次いで売り出している。
「開放型AIエコシステム」が最大の差別化点
Rokidのエンジニアは、競合との差を「開放型AIエコシステム」という言葉で端的に表現した。米Metaのスマートグラスが自社AIのみに対応するのに対し、RokidはChatGPT(OpenAI)やQwen(アリババ)など多様なAIサービスと連携可能で、地域ごとに最適なAIを組み合わせられる柔軟性を強みに持つ。
開発者エコシステムも充実しており、世界で約3万人の開発者コミュニティを抱える。東京大学を含む50以上の大学の研究機関と共同研究を行っており、最終目標として100万台の普及と数十万本のアプリケーション展開を掲げる。
「マルチモーダル時代」を体験
Rokidがスマートグラスに注力する背景には、AIマルチモーダル化という大きなパラダイムシフトの読みがある。スマートフォンの画面に縛られてきた人間の知覚を、現実空間に拡張するデバイスとして位置づけている。
インタラクション面では、ヘッドコントロール、音声コントロール、タッチコントロール、キーコントロールの4種類を備える。ハードウエアスペックは1200万画素のソニーセンサー搭載カメラで4K撮影に対応、最大輝度1500ニトのリアルディスプレイ、デュアルチップアーキテクチャによる効率的な電力管理を実現。
バッテリーはスタンバイ24時間、通常使用8時間、リアルタイム翻訳連続2時間、撮影3時間、通話4時間、音楽再生6時間に対応。専用ケースには充電ユニットが2基内蔵されており、装着しながらの継続充電も可能だ。20分で80%まで急速充電できる。
日本ユーザー1万人を対象にした独自アンケートでは、「最も使いたい機能」として挙げられたのはAI翻訳機能(1位)と議事録・AI録音機能(2位)だった。AI翻訳は89言語に対応し、オフラインでも6言語をカバー。スマートフォンとの連携による相互翻訳(10言語対応)も可能で、インバウンド需要が旺盛な日本の商業環境に刺さる機能と言えそうだ。
そのほか、ARナビゲーション、AIメモ、AIテレプロンプター(スピーチ原稿をレンズ越しに表示)などを搭載する。

介護・農業──日本固有の課題に
イベントで最も熱を帯びたプレゼンテーションの一つが、農業・介護向けソリューションを手がけるパートナー企業「BS Code」による導入事例の紹介だ。
発表では、厚生労働省のデータに基づき、2026年に25万人、2040年には57万人の介護職員不足が見込まれる深刻な状況が示された。現場が抱える三つの壁(1)食事・入浴介助中は両手が塞がり記録が後回しになる、(2)外国人スタッフが日本語での記録に苦労する、(3)記録の作成者やタイミングによって内容にばらつきが出ることを挙げた。スマートグラスと業務システムの組み合わせで「ハンズフリー・ランゲージフリー・ギャップフリー」を実現すると訴えた。
音声入力で体温・血圧・食事記録が記録でき、外国人スタッフが母国語で話した内容は自動的に日本語に変換し保存される。さらに、カメラで撮影した映像をAIが分析し、標準化された記録を自動生成する仕組みも備える。
農業分野でも構造的な問題は共通している。日本の農業従事者は2000年の約240万人から2023年には116万人へと半減し、平均年齢は68.7歳に達した。一方で農産物の輸出額は2025年に約1兆7000億円と過去最高を更新している。
ブドウ農家を例にしたデモでは、収穫可否の判断や作業記録をスマートグラスへの音声入力だけで完結させるシナリオが紹介された。ベテランの暗黙知をデータとして蓄積し、経験の浅い作業者や次世代への技術継承につなげる狙いがある。

日本市場攻略の要は「安心感」
日本で独占輸入代理を担うフューチャーモデルは、単なる販売代理にとどまらず「日本のユーザーが安心して使える環境をつくる」ことを最優先事項に据えた。具体的には、カスタマーサポートと修理・保証を完全に国内で完結させること、全情報の日本語ローカライズ、そして2026年度中にユーザーデータを日本国内サーバーで管理する体制の整備を計画している。
日本市場向けの独自アプリケーション開発も進めている。議事録作成機能で自社開発の要約システムを活用し、安価かつプライベートな形で提供する計画だ。さらに介護記録アプリ「ナスレコ」や農業管理アプリ「ベジタニアワークス」との連携ソリューションも展開中だ。中国では写真からのECサイト横断で最安値検索ができる機能が人気を博しており、日本での開発も検討している。
競合環境についてはXR(拡張現実)エンタメ路線の拡張現実(AR)グラスのXREALとは市場が異なり、主な競合はMetaのスマートグラスだと説明している。
アプリが普及の鍵を握る
「iPhoneも発売当初、アプリがほとんどなくて売りにくかった。3GSのころにアプリが増えて一気に普及した。Rokidも全く同じ道を歩むはず」フューチャーモデルの曲亮社長はこう語った。
ターゲットユーザー層は35〜70歳を主軸に据える。仕事での生産性向上(議事録作成、翻訳、記録業務効率化)を軸に、日常利用(AIとの会話、天気・スケジュール確認、ハンズフリー撮影)にも使える。エンタメ視聴用とは異なり「毎日つけていられる生産性向上のためのツール」という軸で差別化を図る戦略だ。
プレゼンテーションの締めくくりにRokidグローバル・ゼネラル・マネージャーのZoro Shao氏が見せた「演壇に立ちながら、グラスの中に映るスクリプトを読んでいた」というサプライズには会場が沸いた。実用性の高さを実証した形だ。
日本市場では、データセキュリティへの厳しい視線、少子高齢化に伴う労働力不足、多言語対応の必要性といった固有の課題がある。Rokidはこれらを商機と捉える。もっとも、普及の鍵を握るのは価格帯の受容性と、アプリエコシステムの拡充スピードだ。日本のビジネス現場で「使える」という実感を得られるかどうかが、試金石となりそうだ。
(36Kr Japan編集部)
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