luckin coffee、ドリップバッグ・コーヒーを発売へ 赤字脱却なるか

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急拡大を続ける中国の大手コーヒーチェーン「luckin coffee(瑞幸咖啡、ラッキンコーヒー)」。コーヒーから始まった同社が再び本業のコーヒーに回帰した。

luckin coffeeは昨年12月25日、微信(WeChat)の公式アカウント上で高級志向のドリップバッグ・コーヒーを発売すると発表した。販売は、自社のアプリやミニプログラム、京東(JD.com)や天猫(Tmall)に出店する旗艦店などオンラインで行う。豆の産地別に、エチオピアのイルガチェフェ、グアテマラのニューオリエント、雲南のプーアル、エチオピアのシダモ、パプアニューギニアのシグリなどの6種類の味を取り揃え、価格は19.9元~29.9元(約320円~480円)としている。

インスタントコーヒーのように即席で手軽に飲めるが、無添加であることを謳っており、高めの価格設定で、ギフト用という位置づけにしている。同社はこれに先立つ昨年11月にも、菓子類を発売するなど商品のラインナップを拡充した。消費シーンを増やす意向とみられ、関連商品も併せて販売していくクロスセリングで売上の拡大を図るとみられる。

ドリップバッグ1袋あたりの価格は、店内でカフェラテを1杯注文した場合(クーポン配布による常態的な割引価格)に比べると3分の1ほどだ。また、ドリップバッグは即席で飲め、いつも同じ味であることが求められるが、今回販売に踏み切った背景には、サプライチェーンが成熟してきていることもある。

昨年7月には、同社が福建省屏南市に建設した焙煎工場の定礎式が行われた。この焙煎工場は、luckin coffeeと、アジア最大のコーヒー豆のサプライヤーである三井物産と、アジア最大規模のコーヒー豆焙煎工場を持つ台湾の源友(YEUAN YEOU)との合弁で建設したものだ。生産開始後の年産能力を3万トン、生産額を15億元(約240億円)と見込んでいる。

luckin coffeeの創業者兼CEOの銭治亜氏によると、昨年第1四半期(1~3月)時点でコーヒー1杯当たりのコストを13元(約200円)まで引き下げることができたという。「企業規模が拡大し、サプライチェーンやビジネスモデルが成熟した結果だ」としている。なお、コーヒー1杯の販売価格は24元(約380円)だ。

コスト削減に成功したとはいえ、他社ブランドの同類商品と比べると、ドリップバッグの価格に絶対的な優位性があるわけではない。市場では代替可能な商品も多く、コーヒー・紅茶の販売を手がける香港の食品卸大手、「捷栄国際控股(Tsit Wing International)」の同類商品に比べるとほぼ倍額だ。

コーヒー市場は、レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー、コーヒー飲料に大別される。「2017~2021年中国コーヒー業界における投資分析と今後の見通しに関する報告書」によると、コーヒー飲料の過去10年間の平均成長率は15%に上った。2021年には、国内コーヒー飲料の市場規模は149億元(約2400億円)に達するとの見通しだ。コーヒー飲料がコーヒー市場全体に占める割合は10.1%と、今後の伸びしろは大きい。

国内の他のコーヒーブランドと比べ、luckin coffeeは出店ペースの速さや有名人を起用したマーケティング戦略などで一定の知名度を得たほか、スマホで注文から決済まで行える「モバイルオーダー」サービスの先行導入でイニシアチブを握ってきた。このため、同社が商品カテゴリにおいて新たな試みを行ったとしても不思議ではない。

2019年第3四半期(7~9月)の決算報告書によると、同期の新規出店数は717店舗、総店舗数は3680店舗、新規ユーザー数は790万人だった。ここで注目したいのは、店舗レベルで初めて損益分岐点を超えて利益を出し(マーケティング費用は計上せず)、企業全体の赤字も徐々に抑えられるようになってきたという点だ。同社の主な顧客層はホワイトカラーであり、ドリップバッグはちょうどこの層のニーズにマッチしており、価格面で一定の優位性がある。また、携帯にも便利でインスタント感覚で飲めることから、家庭や旅行先での消費シーンも考えられる。

luckin coffeeのCFO兼首席戦略官のReinout Schakel氏は昨年第2四半期(4~6月)の決算報告に関する電話会議の席で、年内にコーヒーと他の商品の売上構成比をほぼ5対5にする方針を示していた。同社は商品カテゴリの細分化とラインナップの拡充で「コーヒー+茶飲料+グッズ+菓子」という事業構造の構築に力を入れており、この目標に向けて着実に歩みを進めているといったところだ。

(翻訳・北村光)

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