中国で2万5000台走る「無人配送車」、日本で実証実験開始【駐在員が見た中国】

「ハイテク中国」にあるのは大きな市場や技術だけではない。

本連載では、日中経済協会北京事務所副所長の宮奥俊介氏が日々中国の現場を歩き回る中で体験した熱気、興奮、期待そして期待外れや裏切りも含め、リアルな姿を伝える。今回は、日本でもレベル4(L4)の自動運転技術を搭載した無人配送車(ロボバン)の実証実験を日本でも始めた「新石器無人車(Neolix)」を訪問した。

元々は大手物流会社の倉庫だった打ちっぱなしのコンクリート空間に、タイヤがついた“四角い箱”がずらりと並んでいる。ここは新石器のショールームだ。車両には運転席もハンドルもなく、荷物を積むためのスペースと、周囲の状況を把握するセンサーを備えている。

新石器は、2018年に北京で設立。21年に中国で初めてロボバンの公道走行許可を取得した。同年には、中金資本(CICC Capital)とソフトバンク・ベンチャーズ・アジアから資金調達した。

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拠点間輸送から店舗の商品補充まで

中国国内でのロボバン稼働台数は約2万5000台。主力モデルはX3、X6T、H12の3シリーズで、荷室の容積はそれぞれ3立方メートル、6立方メートル、12立方メートル。用途や輸送量に応じて車両を使い分ける。最高速度はそれぞれ時速50キロ、80キロ、65キロだが、中国の公道では上限40キロに制限され、敷地内や特定の走行ルートでのみ自由走行が認められているという。

すでに物流大手の順豊集団(SFグループ)やスウェーデン家具大手のIKEA、ティードリンク大手の蜜雪冰城(MIXUE)と提携し、物流業務を支援している。主に生鮮食品や日用品、宅配荷物などを運び、物流拠点間の輸送や店舗への商品補充に使われている。冷蔵配送に対応した仕様への変更も可能だという。

中国の物流大手の順豊集団(SFグループ)と提携

イケアで店舗への商品補充や注文商品の搬送を担う無人配送車(新石器公式サイトより)

主力事業は法人向けだが、ネット配車最大手の滴滴出行(DiDi)と連携し、個人向けの配送サービスも手掛けている。利用者はスマホのアプリから車両を呼びだし、生鮮食品や日用品などを届けてもらう。さらに夜間の緊急配送にも利用できる。

無人走行を支えるのが遠隔監視だ。同社によると、走行中に問題が生じた場合は担当者に通知され、遠隔から状況を確認して対応する仕組みを設けている。

訪問時には、凹凸のある路面や入り組んだ道路を走行する映像も紹介された。同社は、都市部だけでなく、インフラが未整備の農村部での配送にも対応していると説明する。

人手不足の日本市場に照準

新石器は既に15カ国以上で無人配送車を展開しており、人手不足が深刻な日本の開拓にも力を入れている。

グローバル事業部日本事業代表の張弛氏は「他国に比べ、日本の物流ニーズは非常に高いと認識している」と語る。

新石器は今年6月、自動車、物流、ICT各分野の企業が連携して自動運転の実用化を推進する平和島自動運転協議会に参画。日本の運用環境に向けた自律配送技術の現地化に向け、9月11日には都内平和島の東京流通センター(TRC)で、閉鎖コースでのレベル4実証試験を開始した。

同社によると、段階的に10台の車両を投入し、建物内の階をまたぐルート、倉庫内の通路、スロープや傾斜路を含む運用などの実証試験を実施する。「日本法人の設立も予定し、経済産業省や国土交通省の他、日本の大手物流会社との協議も重ねている」という。

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(注)本稿の内容は執筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を代表するものではありません。

文:宮奥 俊介 

日中経済協会北京事務所副所長。民間企業での勤務経験を経て2020年8月、一般財団法人日中経済協会に入職。調査部で中国経済情報の収集・発信、セミナー運営、ジャーナル企画編集などを担当。25年1月からは北京に駐在、日々最新の中国を追いかける。立命館大学大学院国際関係研究科修了。36Kr連載:駐在員が見た中国

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