3D-LiDAR開発の「数字緑土」、海外売上高6倍増 自動運転分野にも参入へ

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3D-LiDAR開発の「数字緑土」、海外売上高6倍増 自動運転分野にも参入へ

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2012年9月に設立された「数字緑土(GreenValley Technology)」はレーザー光で障害物を検知する3D-LiDAR(ライダー)のソフトウエアとハードウエアを一体化したソリューションプロバイダーだ。企業向けに3Dデータの収集・分析サービスを行っており、送電線の点検や林業に関する調査、地形測量、災害調査と応急措置、自動運転用高精度地図などの分野でソリューションを提供している。

ハードウエアのコスト低下、データ処理がコアコンピタンスに

LiDARの登場当初は利用場面が限られ、使用される光学部品やチップなども高価だったため、業界ではコスト高が常に悩みの種だった。数字緑土創業者でCEOの郭慶華氏によると、近年は自動運転分野における起業ブームの高まりを受けて、LiDARに対する需要が刺激され、一定のスケールメリットが発生。加えてLiDAR技術が発展し、従来の機械的回転方式からソリッドステート方式が主流となったことで、構造が簡素化、サイズが小さくなり、製品寿命も延びて、LiDARのハードウエア面でコスト低下が進んだという。

出典:Technavio、方正証券研究所

イギリスの市場調査会社「TechNavio(テックナビオ)」がまとめたリポートによると、LiDAR価格には急速な下落傾向がみられる。2007年以降、価格は8万ドル(約880万円)から8000ドル(約90万円)、375ドル(約4万1000円)、175ドル(約1万9000円)へと一気に下がった。

数字緑土はハードウエアのコストが下がり続ける中、データ処理の価値が鮮明になっていくと指摘。中国の大企業や政府機関がデータ処理に求めるのは速さと正確性だが、これまでは十分な対応ができていなかったと説明している。

同社は膨大な点群(ポイントクラウド)データを生産能力、つまり企業の意思決定に役立つ情報に変えていきたい考えだ。例えば送電線点検の場合、アプリケーションモジュールが提供する点群データを機械学習を用いて分類することで、地表や送電塔、送電線、家屋、植皮などを自動識別し、樹木の生長や倒木などの顧客が定義する危険性をパラメーターを設定して検知する。そうしたデータも自動生成される観測リポートに盛り込むことで、顧客がシミュレーション実施時に森林限界の位置を速やかに把握し、危険な状況を見つけ出せるようにする。

同社はすでに地形測量、林業関連調査、送電線点検などに対応するアプリケーションモジュールを商品化している。今後も研究開発に取り組み、点群データの自動分類に関するアルゴリズムをビッグデータレベルにまで進歩させ、新たな活用場面を掘り起こしていく方針だ。

LiDAR市場全体の規模は極めて大きい。フランスの調査会社「Yole Developpement」によると、全体的な市場規模は2024年に42億ドル(約4600億円)に達する可能性がある。

数字緑土はさらに、ハードウエアのコスト低下を受けて、昨年4月にドローン搭載型LiDARスキャンシステムのエントリーモデルを発表。軽量、低価格を前面に打ち出した。

海外売上高は6倍、国内売上高も2倍近くに増加

数字緑土は12年の設立当初から海外でのブランド展開を意識してきた。郭氏は技術で世界と肩を並べ、技術とイノベーションによって海外市場での成功をつかみたいとしている。

海外では中・高価格帯路線を打ち出し、現時点で米国やカナダ、オーストラリア、フランス、イタリア、日本、ブラジル、ポーランド、シンガポールなど40以上の国・地域で自社製品を販売している。昨年の海外売上高は前年の6倍に増えた。

数字緑土のグローバル展開

海外と国内では販路が異なる。海外は代理店のみだが、国内では代理店に加えて直接販売も行い、大口顧客と直接協力関係を結び、サービスを提供している。ヘリコプターによる電力工事などを手掛ける「国網通航(State Grid General Aviation)」、電力網の整備・運営・管理を行う「中国南方電網(China Southern Power Grid)」、国家林業草原局など30近くの企業・機関と提携、昨年の国内売上高は前年の2倍に増えている。

データ収集車2台をすでに納車、高精度地図も視野に

郭氏は、技術で成功しようとする企業はオープンな姿勢を崩さないことが必要との認識を示している。同社の本社がある中関村ソフトウエアパーク(北京市)などが主催する起業・イノベーションイベントなどを通じ、積極的に出資を受け入れてきた。

直近では2017年12月にシリーズB(金額非公開)で「国科投資(CAS INVESTMENT)」から資金を調達。16年にはシリーズA+(金額非公開)、15年にはシリーズA(数億円)、14年にはシードラウンド(数千万円)での資金調達を行っている。

17年の資金調達後、同社は人工知能(AI)と自動運転分野に取り組む方針を発表。現在、すでに中国の物流大手「順豊控股(S.F.Holding)」に高精度地図用データ収集車2台とソフトウエアを納入している。

郭氏は、高精度地図は自動運転に欠かせないものだが、業界全体が軌道に乗るにはまだ一定の時間が必要との見方を示す。ただし、特定の場面における巡回検査ロボットや自動運転に使用される高精度地図の将来性には期待できるとした。

数字緑土の社員数は100人弱。郭氏は米国カリフォルニア大学マーセド校教授を務めた経験を持つ。同社は広東省深圳市、湖北省武漢市、江蘇省蘇州市に支社を構えている。

画像提供:数字緑土

(翻訳・池田晃子)

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