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昨年、Uberの株価下落、WeWorkの上場撤回、Slackの損失拡大など、続けざまに打撃を受けたソフトバンクグループは、大株主からの批判や資金調達に関するプレッシャーに耐えている。
ソフトバンクの社長兼CEOの孫正義氏も、同社の業績不振を認めている。2019年第2四半期、同社は創業以来最大の営業赤字に陥った。孫氏はこの状況を「大嵐」と表現している。
とはいえ、ソフトバンクには拠り所があるのが救いだ。日本経済新聞は11月下旬、アリババの3割近い株式を保有するソフトバンクが、アリババの今後のさらなる成長を確信し、今後も長期的に株式を保有していく方針であることを報じた。これはつまり、アリババの香港上場後の3カ月にわたる一時的売却禁止期間(ロックアップ期間)後も、ソフトバンクはアリババの株式を売却しないということだ。
5年前、アリババはニューヨークで上場し、世界最大のIPO記録を樹立した。これによりソフトバンクと孫氏に対する評価と業績は共に高まり、「全盛時代」が到来。さらに昨年11月下旬、アリババは香港での上場を果たす。初日の株価は8%近く値上がりしたほか、株価は189.5香港ドル(約2640円)、時価総額は4兆香港ドル(約56兆円)に達した。同社はテンセントに代わって香港株式市場の新たな覇者となり、業績回復に焦るソフトバンクにとっての朗報となった。その後もアリババの株価は好調に値上がりしており、1月中旬には一時223.6香港ドル(約3130円)をつけている。
こうしたアリババ株の価格上昇により、孫氏が株主から受けるプレッシャーは大幅に弱まった。孫氏本人によれば、WeWorkへの投資で損失を被ったものの、アリババの香港市場での好調な滑り出しを受け、ソフトバンクの昨年7~9月の第2四半期の株主価値は、事実上1兆4000億円上昇し、22兆4000億円に達したとのこと。
「恐らく多くの人は(こうした業績を)信じたくない。私がいくら説明しても、それは違うだろうと心情的には思う数字。しかしこれは事実だ」と孫氏は決算発表会の場で述べている。
ここ何期かの決算発表会で、孫氏はソフトバンクグループの売上高や利益の数字に大きな意味はないと述べ、株主価値、つまり保有株式価値から負債を差し引いた金額こそ重要だとしている。
同社の保有するアリババ株は現時点で約13兆円に上る。この金額はソフトバンク自身の時価総額さえ上回るほどだ。同社は2016年にアリババ株の一部を売却し、これにより少なくとも1兆円を調達している。
ソフトバンクは今年8月、孫氏および他の幹部に最大200億ドル(約2兆2000億円)を貸し出し、ビジョンファンドに再投資してもらうことで停滞した資金調達に弾みをつけた。だがこうした大胆なやり方も大株主の批判を招いた。
WeWorkの失敗により、孫氏は自身の投資戦略の見直しを始めている。同氏は昨年11月下旬にカリフォルニア州で行われたイベント用の動画の中で、総商品価値、売上高、ユーザー数の増加ではなく、フリーキャッシュフローこそ企業の業績を評価する基準だと述べ、自身の考えの変化について明らかにしている。
しかし、いままでの混乱を極めるファンドの運営手法に幻滅した投資家は、新たな出資を拒否しているため、ソフトバンクグループが設立する第2弾ファンドの資金は予想を大きく下回りそうだと、2月8日に米ウォールストリートジャーナル誌が報じた。
孫氏は昨年2月の決算発表会で、69歳での退任の可能性について語った。だが現状からすると、順調な引退はかなわないだろう。
※アイキャッチ画像はvisualhuntより
(翻訳・神部明果)
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