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EMS世界最大手でアップルにとって重要な製造委託先であるフォックスコン(富士康)は1月末、中国で発生した新型コロナウイルスが同社の生産に影響しないと表明したばかりだが、ことは思い通りには運んでいないようだ。ロイター社は2月3日、内情に詳しい関係者の話として、新型肺炎による工場の生産停止が2週間以上続けばフォックスコンにとって「甚大な」打撃となる可能性があり、アップル向けの製品も納期通りの出荷ができない恐れがあると伝えた。
全世界で報告されている新型肺炎の患者数は1月28日時点で4500人に上っている。フォックスコンは当初、今回の感染拡大のために生産計画を調整することはせず、工場の閉鎖もしないとの楽観的な見解を述べていた。だが、中国の患者は本記事執筆時点で2万471人に達しており、フォックスコンも2月10日前後までの生産停止を言い渡されている。
ロイター社が入手したフォックスコンの内部メモによれば、同社は感染が最も深刻な湖北省の従業員と顧客に対し、無断で工場に戻らないよう伝えているほか、各自の健康状態について責任者に毎日報告するようにと指示しているという。また「規則を順守する従業員には通常通り給与が支給されるが、報告義務を怠った従業員は厳しく罰せられる」とのこと。
同社は2月1日、報告義務に従わない従業員を内部通報するためのにホットラインを設置し、通報者には200元(約3200円)の報酬を支払うと約束した。
湖北省に加え、iPhoneの一大生産拠点である広東省および河南省の工場も今月10日まで生産停止となっている。さらにフォックスコン蘇州は2月9日までの、フォックスコン上海は2月9日までの工場閉鎖を言い渡された。同社の出荷計画への影響は必至だ。
関係筋によれば、同社は中国における「ほぼ全ての」工場の生産業務をすでに停止しており、ベトナム、インドおよびメキシコなどの工場により生産を補填している状況。ただしこうした工場の限られた生産能力や不十分なサプライチェーンを考慮すると、短期間で中国大陸の工場に取って代わることはほぼ不可能といえる。
フォックスコンおよびアップルはこれらの情報に関していずれもコメントを出していない。
生産の一極集中の危険性はすでに露呈している。今後、感染症の拡大は間違いなく封じ込められるだろうが、今回の事件はフォックスコンの海外進出の決意をさらに強めるものとなるに違いない。
ロイター社が昨年8月に行った調査によると、アップルの組み立て工場とその関連工場は依然として中国大陸に特に集中している。フォックスコンは過去数年間に海外工場建設の動きを頻繁に見せてきたとはいえ、アップルの中国に対する依存度は減るどころかむしろ増えているのが事実だ。
<関連記事:iPhone製造最大手のフォックスコン、「脱中国」の達成は困難>
「もっとやっかいなのは、我々が(2月10日に)生産開始できるかどうかだ。これも中央政府と省政府の指示次第」と関係筋は話している。
アップルのティム・クックCEOは先日、2020会計年度第1四半期のカンファレンスコールで、新型肺炎が与え得る脅威について言及した。クックCEOによれば、同社は新型肺炎の最も深刻な武漢のサプライヤーについても代替案を提示できるとのことだが、アップルの中国工場の再稼働も1月末から2月10日に延期されている。また、同社は今月に入り、中国大陸の全ての直営店を2月9日まで営業停止にすることを決めている。
※写真提供:visualhunt
(翻訳・神部明果)
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