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2月18日、「美団(Meituan)」は北京市順義区、海淀区などで無人配送車の運用を開始することを発表した。新型肺炎対策で自由に外出できない住宅地の住民に、自社の生鮮食品EC「美団買菜」から商品を配達する。
新型コロナウイルス感染の拡大で美団買菜の注文は急増している。今回の無人配送は美団の「無人配送による感染症対策支援計画」の一環であり、同社の無人配送車が初めて公道で実用化されることになる。
配送の流れはこうだ。配送エリア内の住民が美団買菜でものを買うと、美団のスマート配達先指定システムが注文情報を無人配送車に送信する。無人配送車は美団買菜の営業所で品物を載せ、時速20kmの速さで配達先まで自動運転で移動する。受取人は配達先で配送車の蓋を開け、品物を取り出せば配達完了だ。このプロセスにおいて、人間同士が接触することはない。
配送を担当する無人車両は美団が独自開発した「魔袋(MAD)」と呼ばれるもので、高さ156cm、重さ500kgである。人間の配達員と同様、MADも公道走行の免許を取得済みである。
美団の無人配送車は社内での独自開発と外部との提携の両方で進められている。社内では2016年10月に特定のシーンにおける無人配送車を開発するプロジェクトチームが立ち上げられ、2017年に事業部に格上げされた。現在、美団のチーフサイエンティスト・夏華夏氏が事業部長を務めている。
外部提携に関しては、2018年7月25日、美団は無人配送オープンプラットフォームを発表した。プラットフォームにはスマート配達先指定システム、美団クラウド、ビッグデータ、データ・セキュリティシステムが集約されており、美団はこれら無人配送に関する技術をサプライチェーンの各段階の企業に開放し、運営、販売の支援も行っている。なかでも、もっとも緊密な協力関係を結んでいるのが、電子部品や運転支援システムで強い実力を持つ自動車部品メーカーの「ヴァレオ(Valeo)」だ。
今年1月、ラスベガスで行われた2020年のCES(全米民生技術協会主催の電子機器見本市)において、ヴァレオと美団はフードデリバリーの無人配送車「ヴァレオeDeliver4U」を共同出展した。車両は長さ2.80m、幅1.20m、高さ1.70mで、一回で最大17食の配送が可能だ。
無人配送はもはや目新しいことではない。アリババ・グループ傘下の「菜鳥網絡(Cainiao)」やECの「京東(JD.com)」は美団の一歩先を行っており、物流大手の「順豊(SF Express)」はドローン配達で強みを持つ。「蘇寧(Suning)」は大型トラックの無人運転に注力している。そして、これらの開発はすべて今回の感染症流行によって加速度的に進むようになった。
ドローンにしても、無人配送車にしても、人間が搭乗しない自動運転のように見えるが、いわゆる自動運転とは本質的な違いがある。自動運転の中核は人間であり、すべてが人間中心で設計される。それに対し、無人配送はできるだけ人間を介在させないのが目的で、ロボットにより近い。
無人配送車にとって特に重要なのはセンサーシステムで、LiDAR、カメラ、魚眼カメラ、超音波センサーや、これらに関するAI技術が必要だ。そして、実用化するためには、各車両とクラウドの間で膨大なデータをリアルタイムでやり取りしなければならない。それを支えるのが5Gだ。今回の美団の試みは、「中国聯通(チャイナユニコム)」と連携し、配送エリアで5Gネットワークを稼働させたことで実現したものである。
無人配送の実現のための技術が揃い、具体的なビジネスシーンも見えてきた。難題はまだ残るが、それでも今後のフードデリバリーは少しずつ無人配送にシフトすると予想できる。2020年は、無人配送元年になるかもしれない。
(翻訳:小六)
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