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2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行から17年が過ぎた。2003 年には、外出を自粛する人たちがオンラインで買い物をしたため、アリババグループのEC「淘宝(タオバオ)」が爆発的に成長した。オンライン旅行代理店の「携程(Trip.com)」は利用者の激減で破産寸前となったが、なんとかSARS終息まで持ちこたえたことで、ニーズの急回復というチャンスを捉えることに成功し、その後の急成長につなげた。このように、2003 年を振り返ることで、未来についてより正確に予測できるかもしれない。
個人消費と旅行は激減も、感染終息後に回復
SARSは2002年末に広東省で最初に発生したが、情報が隠蔽されたため、全国的に対策が始まったのは2003年4月になってからとなった。それまではほとんどの人が普段と変わらずに勤務し、学校もいつもどおり運営されていたため、春節期間中の経済活動への影響は小さかった。
2003年の春節後にSARSに対する恐怖が広がり、個人消費が真っ先に影響を受けた。外出を自粛していたため、必要でないものを買わなくなったのである。
一方、日用品と薬品は大人気となった。いつ流行が終息するか見通しが立たなかったため、多くの人が日用品と薬品の買いだめをしたのだ。
サービス業は軒並み大打撃を被り、特に観光、交通、宿泊、外食、娯楽施設への影響は大きく、これらの産業に関わる企業はどこも業績が落ち込んだ。
感染終息後はほとんどの業界が平時に戻ったが、すべての業界がV字回復できたわけではない。専門家によれば、ある業界や特定の企業がすぐに回復できるかどうかは、やはり当該業界や企業自身の動向にかかっているという。
また、業界ごとの特徴による違いもある。外食はダメージが大きいが、回復するのも速い。それに比べると観光は回復するのがやや遅くなる、人の多い場所に出かけることへの恐怖感が続くためだ。そのためSARSによる観光業への影響は1年近く続いたのである。
また、産業分類で見ると、一般的に言って第一次、第二次、第三次ともに影響を受けるが、回復が最も遅いのはサービス業を代表とする第三次産業だ。SARSの場合、第一次、第二次産業は2003年の第3四半期にすでに急回復したが、第三次産業の低迷は第4四半期まで続いた。
製薬銘柄の急騰は一時的
2003年、製薬関連銘柄は感染が拡大するなかで急騰したが、意外にもすぐに下落に転じた。
東呉証券の分析によると、当時は感情的、投機的な買い入れが製薬関連銘柄に殺到したが、それでも関連銘柄全体の株価の値上がり率は10%に満たなかった。
2002年12月〜2003年12月の一年間で見ると、中国の製薬業界の成長は前年同期比で25%であり、例年通りの水準となり、SARSによる急成長は見られなかった。しかも、2003年上半期の一時的な成長により、2004年の製薬業界の成長率は終始低かった。
こうしたことを一度経験しているため、今回の感染症に関してアナリストはそれほど重要視していない。例えば「中泰証券(ZHONGTAI SECURTIES)」は、新型肺炎による影響はあくまで一時的なもので、製薬業界の趨勢を変えるものではないとしている。
インターネット企業の春
2003 年には、SARS流行により店舗も消費者もオンラインで取引を行うようになり、アリババが急成長した。
成長したのはアリババだけではない。外出できないため、インターネットを利用したソーシャルサービスも急速に普及し、「新浪(SINA)」のチャットルームは2003年5月上旬に史上最多の同時接続ユーザー数を記録した。
オフラインで行われるはずだったイベントのオンライン化もそのときに始まった。北京の大学がオンライン講義を開始し、中国最大級の規模を誇る「広州交易会(広州で毎年春と秋の2回開催される貿易展示会)」も2003年に初めてオンラインで商談を行うことが可能になった。
こうしたオフラインからオンラインへの転換は、一時的に利益を犠牲にするため難航するものだが、感染症の流行で進行が大きく速まったのは間違いない。今回の新型コロナウィルス問題が終息するときには、世界はまた大きく変わっているだろう。
(翻訳:小六)
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