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「美団(Meituan)」がこの3月で創業10周年を迎えた。同社は10年前に「団購(共同購入型クーポン)」サイトとして設立し、現在では中国最大のO2Oプラットフォーム企業となっている。創業者の王興CEOはこの10年間どのようにして数々の危機を乗り越えてきたのだろうか。
<前編:クーポンサイトで数千社との死闘を勝ち抜く、フードデリバリー戦争でネット大手をライバルに>
挽回をかけた大衆点評との合併:味方だったアリババが敵に
2015年、インターネット企業では合併が盛んに行われていた。配車サービスの「滴滴(DiDi)」と「快的(KuaiDi)」、求人などの情報サイト「赶集网(ganji)」と「58同城(58.com)」の合併が有名なケースだ。同年10月、美団と以前からのライバルであった大衆点評が合併して「美団点評(Meituan Dianping)」となり、新会社はCo-CEO(共同経営責任者)制を取るとした。
2015年、美団はフードデリバリー事業を加速させる。しかしこの戦略は美団に多額の損害をもたらした。同時期に大衆点評も泥沼にはまっており、多額の資金投入と一向に見えてこない黒字化、資金調達も思わしくない状況だった。この2社に投資をしていたセコイア・キャピタルはより良い選択として合併を考えたのだった。
アリババは初め美団の支配株主となり、これにより自社の地域密着型サービス分野を固めたいとしていた。しかしテンセントがすでに美団点評への出資を確約していた。王氏は配車サービスの滴滴と快的が合併した当時のように、テンセントとアリババ双方から支援を受けたいとしていたが、アリババ側は「滴滴と快的のケースは失敗だと考えているため、同じ過ちは繰り返さない」とそれを拒否した。
その後、テンセントがリード・インベスターとして美団に10億ドル(約1050億円)の出資をすることに同意。これにより、アリババは美団にとって最大の敵となった。アリババは美団のライバルである餓了麼に出資を続け、のちに95億ドル(約1兆円)で買収、傘下の口コミサービス「口碑(koubei)」と統合して自社の地域密着型サービス事業グループとした。アリババはどんな大きな代償を払っても、同分野で美団点評と争う構えだ。
香港上場:目標達成に犠牲いとわず
2018年、インターネット企業大手は資本市場の風向きが変わっていることに突然気づいた。上場するなら2018年が最後のチャンスとなるだろう。
美団がより高い上場時時価総額を達成するために、王氏が練った策略は独特だ。
王氏と滴滴の程維CEOは長年の親友同士だ。美団が突然配車サービス事業に参入し、滴滴のライバルとなることは程氏にとって寝耳に水だった。王氏と昼食を共にしたその日の晩に美団の配車サービス参入を知ったというのは有名な話だ。
「美団打車(Meituan Dache)」は上海や南京で割引戦争を仕掛けた。モビリティ分野を充実させるため、30億ドル(約3150億円)でシェア自転車大手「モバイク(摩拜単車)」をも買収している。当時王氏は「(美団が手掛けている)飲食や娯楽とモビリティは組み合わせることで強みになる」と語っていた。
そのほか、生鮮EC分野ではアリババ系の「盒馬鮮生(HemaFresh)」をベンチマークとした「小象生鮮(ella supermarket)」を赤字を出しながら多数出店。美団がモビリティサービスと生鮮小売りにチャンスを見出し新事業を構築しようとしているという見方もあったが、上場後に同社がこれら2事業への出資を停止したことから、全ては時価総額を高めるためだったということがわかった。
美団がこの2分野に参入したことは赤字を続ける同社にとって負担となったことは確かだが、BATのように現金が潤沢にある企業とは違い、美団は上場のためになりふり構っていられなかったのだ。
手数料騒動:収益モデルの呪縛
2019年第2四半期、美団は会社全体で初の黒字となったと発表。決算報告では総収入は227億元(3400億円)、そのうちフードデリバリー事業の収入が128億4500万元(約1900億円)と前年同期比44.2%増で全体の56.6%を占めた。
美団が黒字化したのはデリバリー事業の売り上げと売上総利益率の向上にある。具体的には、事業者から徴収する手数料を値上げし続けたことだ。業界の関連データでは、美団は大型チェーン飲食店に対し18%の手数料を取っている。小規模な飲食店からは23%前後、最高で26%の手数料を取っており、多くの飲食企業が高すぎると感じている。
今年の春節頃から始まった新型肺炎の流行で、全国の飲食・娯楽関連業界が大きな打撃を受けている。特に飲食業は多くがデリバリーに頼り何とか最低限の運営をしている状況だ。
2月18日、「重慶市工商聯餐飲商会」に加盟する1987企業が合同で美団点評や餓了麼などのフードデリバリープラットフォームに対し、手数料減額を呼びかける文書を発表した。その2日後には、「四川南充火鍋協会」が公の文書で美団を名指しで非難。新型肺炎流行期間に手数料を引き上げたことに対し、同協会の何偉会長は「美団は新型肺炎流行に乗じてあぶく銭を稼いでいる」と語った。
上場後、美団は事業の全プロセスで利益を上げるという運営方針に変更。主力業務であるフードデリバリーはその方針の根幹をなす。そのため同社は2億元(約30億円)を寄付しても、感染流行地域での手数料を1カ月免除しても、手数料の引き下げはしなかったのだ。
王氏はすでにこのような危機に慣れているのかもしれない。
十年ひと昔
思い起こせば10年前、中国随一の名門大学・清華大学近くのマンションで15人の若者が起業したクーポンサイト美団網。8年後の2018年、美団点評は上場時時価総額483億ドル(約5兆700億円)、今日では時価総額774億ドル(約8兆1300億円)と中国インターネット企業で時価総額3位にまで成長した。
「十年ひと昔」と言うが、王氏自身は美団のこれまでの10年をどのように振り返るのだろうか。
(翻訳・山口幸子)
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